「あぁもう! 腹立つわね!」
霊夢はベンチで地団太を踏んでいた。原因はもちろん、レミリアに特大のホームランをぶち込まれたからである。
レミリアの後も五番の美鈴に二塁打を放たれピンチを背負ったのだが、六番の氷の妖精チルノが「あたいったら最強ね」と言いながら三振してくれたため、なんとか初回を2点で切り上げることができていた。
「ごめん、霊夢さん。オレの配球ミスだよ。オレの逃げの意識がレミリアちゃんに見抜かれてしまったんだ」
「……ま、私はリードとか配球とかはよくわからないもの。逃げだったかどうかし知らないけど、私はアンタのサインを信じて投げるだけよ。次は絶対打たせないわ!」
「……うん、オレも次は打たせない……。打ちとれるようにリードするよ……!」
パワプロは闘志を宿した目で霊夢を見つめる。
「さ、切り替えが大事でやんすよ! さあ、さあ円陣を組むでやんす!」
「円陣ってなによ?」と霊夢が矢部に尋ねる。
「作戦や目標を立ててみんなで共有するのでやんす。要は気合入れでやんすよ! オイラが『逆転するでやんすよ!』と言ったら皆で『おー!』と叫んで欲しいでやんす!」
「なんだか恥ずかしいですね……」と小鈴は呟きながら、三妖精たちは「楽しそうじゃない!」と言いながら、他のメンバーもぞろぞろと移動し、円陣を組む。
「逆転するでやんすよぉお!!」
「おぉおおう!!!!」
チーム博麗の円陣をマウンド上から見て、目を輝かせている幼女がひとり……。レミリア・スカーレットである。
「見てみてパチェ! なんかあいつら良い感じのことしてるわ! 私たちも次の回やるわよ!」
「絶対いやよ。恥ずかしい」
「そんな、パチェ……」
レミリアはファーストを守る親友に円陣を拒絶されショックを受けるのだった。
――一回裏 チーム博麗の攻撃――
《一番 ファースト 矢部 明雄 背番号8》
「ふっふっふっふ……。オイラの華麗なバッティングを見せてあげるのでやんす! レミリアちゃんやフランちゃんがちっちゃいからってもう油断はしないのでやんす!」
魅惑(?)のメガネボーイ、矢部明雄が右バッターボックスに入り込む。マウンドでは余りに小柄な吸血鬼幼女レミリア・スカーレットが迎え撃つ。
「……オレも矢部くんもさすがにあんな低身長から投げ込んでくるピッチャーは見たことがない……。矢部くん! じっくりボールを見て行こう!」
「合点承知の助でやんす!」
矢部くんは眼鏡の位置を修正し、レミリアの投球フォームを注視する。レミリアはグローブを振りかぶると、一言口にした。
「じっくり見て行こう、ね。はたして見えるかしら?」
レミリアのボールを持つ手が紅く光る。
「な、なんだアレは!?」
パワプロが驚きの声を上げる中、レミリアは投球動作を続け……キャッチャーの美鈴に向かってボールを投げ込んだ。……一瞬の出来事だった。槍状に変化した紅い光を纏いボールがミットに突き刺さったのである。あまりのスピードに矢部はまったくバットを動かせない。
「な、なにいまの……」
パワプロはあまりに現実離れした光景に口を開けっぱなしにする。
「バ、バカな……。紅いなにかがパっと光ったようにしか……、でやんす……」
「や、矢部くん、漫画の台詞はもういいよ……。……なんなんだ。今の普通じゃない球は……」
「フフフフフ……。驚いているようね。私の『S・T・グングニル』に……」
「『S・T・グングニル』だって? なんて球なんだ……」
「さすがお嬢様です! 他の追随を許さない圧倒的実力……。これぞ紅魔館の当主!」
「うるっさいわねぇ。あのメイド!」
レミリアを手放しで褒める十六夜咲夜を霊夢はベンチから面白くなさそうに睨みつけるのだった。