《ストライクバッターアウト! チェンジ!》
「ちょっと、あんたら何やってんのよ!? 全然ボールに当たらないじゃない!」
「ご、ごめんなさいいい!」
眉を吊りあがらせた霊夢に睨まれ、小鈴が涙目で謝る。チーム博麗の5番から始まった攻撃だったのだが……、レミリアのS・T・グングニルの前に三者三振を喫してしまうのだった。
「切り替えて行こう。チャンスは必ず来るはずだ!」
パワプロは皆を鼓舞し守備位置に着く。
(とは言ったものの、この回は一番から始まるのか……。一筋縄にはいかないぞ)
《一番 ショート 十六夜 咲夜 背番号16》
(咲夜さんか……。さっきは初球のボール球に手を出してヒットにしてたな。流し打ちが上手そうなイメージだ。ここは外角を見せ球に内角で勝負だ!)
パワプロはボール5つ分外角に構え霊夢にストレートを放らせる。
(え? う、ウソだろ!?)
咲夜はボール5つ離れたクソボールにも関わらずバットを出してきた。普通ならば到底ヒットにできるような球ではない。しかし……咲夜の巧みなバットコントロールは困難を可能にした。
「小鈴ちゃん!!」
咲夜の打球は一打席目と同様、レフトを守る小鈴の前にワンバウンドする。
(あんなに外に外れたボールを拾えるのかよ。デタラメだ)
咲夜は一塁塁上に立つと、ベンチのレミリアの方に視線を送り、反応を窺う。
「よくやったわ。咲夜。さすがは紅魔館の完璧で瀟洒なメイドだわ」
「お、お穣様ありがとうございます!」
咲夜は鼻の下を伸ばし、だらしない笑顔を浮かべる。パワプロはその姿を見て白い目を咲夜に向ける。
「ちょっと、パワプロ! 変態メイドの表情にいちいち反応してんじゃないわよ! 次のバッターに集中しなさい!」
霊夢がパワプロに忠告する。
「ごめん、霊夢さん!」
(それにしても……さっきといい、今といい、咲夜さんは初球で勝負を仕掛けてきた。かなり攻撃的だ。いや、咲夜さんがというより、このチームが……スカーレット・デビルスがと言った方がいいかもしれない)
《2番 レフト 早川あおい 背番号10》
(ここもおそらく送りバントだ。簡単にはやらせないぞ!)
パワプロは霊夢にチェンジアップのサインを出す。霊夢が唯一使える変化球だ。ストレートと同じ腕の振りで放たれるチェンジアップはバントを試みる早川あおいのバットの下に当たってファールとなる。2球目も同じくチェンジアップを放り投げる。盗塁の危険性もあるが……、いかに身体能力の高いスカーレット・デビルスの面々とはいえ、実戦経験に乏しい彼女らが盗塁をするのはかなり勇気が必要だとパワプロは判断した。パワプロの判断通り、咲夜は盗塁を試みることはなく、あおいもバントを2球続けて失敗する。
(よし追い込んだぞ!最後は内角低めにストレートだ!)
外角低めに2球連続でチェンジアップを投じられていた早川は内角のストレートに手が出なかった。
「そんな、ストライク……?」
早川は信じられないと言った表情でベンチに帰って行った。
(よし、ランナーを送らせなかったのは大きいぞ!)
しかし、安堵することなどできなかった。
《3番 センター フランドール・スカーレット 背番号13》
「よーし! 今度こそ打っちゃうんだから!」
吸血鬼姉妹の妹フランドール・スカーレットはウチに秘めた凶悪なパワーを感じさせない純粋な笑顔でバッターボックスに入るのだった