――3回裏、チーム博麗の攻撃――
《8番 ライト 稗田 阿求 背番号9》
「ちゃちゃっと打っちゃうのよ。阿求!」
「私を貴方みたいな人外と一緒にしないでちょうだい」
霊夢に激を飛ばされる阿求だが、さらっと受け流してバッターボックスに向かう。
《ストライィィク! バッターアウ!》
「ちょっと、なんで一球も振らないのよ!?」
「あの吸血鬼の球が早過ぎて見えないのに振れるわけないでしょう!?」
「気合でなんとか見なさいよ!!」
「無茶言わないでよ!?」
《9番 ショート スターサファイア 背番号6》
「3バカの3号! なんとかしなさい!」
「3バカ!? 3号!? 私は馬鹿でも3号でもないんだから!」
「あはは! スターが3号だって!」
「なに笑ってるのよ!? サニー! アンタも3バカに入ってるんだからね!?」
《ストライィィィク!! バッターアウト!!》
「何三振してるのよ! 3号!」
「なんでルナものっかてるのよ!?」
(こ、これで四番のオレから数えて6者連続三振……!? ホントにまずいぞ……)
周囲が野球とは別のことで喧騒を起こしている中、パワプロは戦況を見つめていた。
「パワプロくん、ここはオイラに任せるでやんす!」
「や、矢部くん!? 何か策が!?」
「いや、策は何もないでやんす……が、策を立てるためのヒントは奪ってやるのでやんす!」
《1番 ファースト 矢部 明雄 背番号8》
「さあ、さあレミリアちゃん! オイラが大人の汚さを教えてあげるのでやんす!」
「……なんだか気持悪いわね。生理的嫌悪感を覚えるわ……」
「ひどいでやんす……」
「気晴らしに三振に取ってあげるわ。感謝しなさい!」
レミリアは振りかぶると右手から紅い光を発生させる。
「喰らえ! 我が槍の前に沈むがいい!」
レミリアが投球動作に入ったと同時に、矢部はセーフティバントの構えを取る。しかし、レミリアのS・Tグングニルを前にバットに当てることすら出来なかった。バントを空振りした矢部に対して霊夢から激が飛ぶ。
「ちょっと、矢部! せこい真似しないでかっ飛ばしなさいよ!」
「味方ベンチからのヤジが酷いでやんす……。でも……!」
(ありがとう矢部くん。これで確信が持てたよ。スカーレット・デビルスはオレたちと同じくらい野球素人だ……! 今、矢部くんが構えたバントで内野が前進する素振りを見せなかったのがその証拠。あおいちゃんとレミリアちゃんは友人だって言ってたけど、オレ達と霊夢さんが会った時期より少し早く会ってるかどうかってとこだろう。でなければ、もっと野球のことを知っているはず。野球をよく知らないなら付け入る隙はあるってことだ……!)
パワプロがスカーレット・デビルスの野球熟練度を見定めている時、矢部はレミリアから二球目を投じられようとしていた。
(……バットを目一杯短く持って1、2のタイミングで振るでやんす! 1、2の3じゃ遅すぎるでやんすからね。タイミングが会っていると思わせることさえできれば、警戒して変化球を投げるはず……でやんす。まだレミリアちゃんの持ち球を把握しきれていないでやんすから、この打席は変化球を出させることに目標を置くでやんす……!)
矢部は振り出しのタイミングを早め、バットをスイングする。すると……キンという短い金属音が響く。バットにボールが当たり、バックネット方向に飛んだのだ。
「あ、当たった!? 良いぞ矢部くん! タイミング合ってるよ!」
(まったくの偶然だったでやんすが……、バットに当てることができたでやんす……! 次は変化球で来るかも……でやんす! 次は123のタイミングで振るでやんす!)
矢部は振り出しのタイミングを遅くすることに決めたが……、それを見抜いていたかのようにレミリアは3球目もグングニルを繰り出してきた。それも全力で、である。
(う!? 変化球じゃないでやんす!?)
《ストライィィク! バッターアウ!!》
矢部は見逃し三振に倒れ、天を仰ぐ。
(たった3球しか投げさせることができなかったでやんす……)
矢部は肩を落としてベンチに帰ってくる。
「ありがとう矢部くん!」
「3球しか投げさせられなかったでやんす……」
「十分だよ。おかげでふたつも可能性を見つけることができたよ……!」
「ふ、ふたつ、でやんすか!? オイラはバント処理に難がありそうなことしかわからなかったでやんすけど……」
パワプロはマウンドから自軍のベンチに向かうレミリアの表情を見続けていた。