実況パワフル東方甲子園   作:向風歩夢

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待球作戦

 ――4回表―― スカーレットデビルスの攻撃

 この回は5番キャッチャー紅美鈴からの攻撃である。

 

「くっ!?」

 

 美鈴は霊夢のノビのあるボールに振り遅れ、どん詰まりのファーストフライに倒れてベンチに戻る。

 

「どうしたの美鈴。あなたがあそこまで詰まらされるなんて……」

「申し訳ありません、お穣様。ただ、あの博麗の巫女、明らかに回を追うごとに球質が良くなっています。下位打線では厳しいかもしれません」

「……さすがは幻想郷の調停者なだけはあるわね。……まあいいわ。私が一点も与えずに抑えればいいだけのことだもの」

 

《ストライク! バッターアウト!! チェンジ!》

 

 霊夢は続く6番チルノ、7番ルーミアを連続三振に斬って取る。

 

「ナイスピッチ! 霊夢さん!」

「ナイスピッチでやんす!」

 

 チーム博麗ナインは各々霊夢のピッチングを称えて盛り上げる。霊夢は当然よ、とでも言わんばかりに涼しい顔でベンチに戻る。

 

「みんな、聞いてくれ」

 

 円陣の中央に陣取ったパワプロは小さな声でナインに喋りかける。相手チームに聞こえないようにしろという意識がチーム全体に広がる。

 

「レミリアちゃんの弱点を……見つけたかもしれない」

「弱点?」と霊夢が聞きかえす。

「それは前の回のオイラの打席の後にパワプロくんが言った『二つの可能性』の二つ目でやんすか!?」

「ああ、そうだよ矢部くん」

「二つの可能性って何なんだぜ? 私は一つも聞いてないぜ?」

「……これから説明するよ。実はさっきの打席、矢部くんはスカーレットデビルスの野球チームとしての熟練度を確かめてくれたんだ」

「……バントの構えをとったことをいってるのか?」

 

 魔理沙の確認にパワプロは頷く。

 

「あのバントで守備の動きを見てたんだけど、スカーレットデビルスもチームの完成度としてはウチと変わらないと確信したよ。個々の能力が高いから誤魔化せているけど……野球というスポーツが上手いわけじゃない。塁に出れば勝機はある! これが一つ目の可能性だよ」

「だがな。その『塁に出れば』が全然できてないからこっちは点が取れてないんだぜ?」

「……そこで、二つ目の可能性に意味が出てくる」

「もったいぶるわねぇ。さっさとその二つ目を喋りなさいよ!」と霊夢が急かす。

「……二つ目は……、おそらくレミリアちゃんがスタミナ配分をしていないということだよ」

「……どういうことよ?」

「レミリアちゃんは多分プライドが高いタイプだと思う。さっき、矢部くんが三振に倒れた時、レミリアちゃんの額から汗が流れていた。全力投球していたんだ。普通、あんなスピードボールを投げれるんだったら、ある程度スピードを抑え気味にして完投を狙うはず……。言い方は悪いけど、矢部くんのような格下の相手に全力を出す必要はない。なのに、全力でグングニルを投げてきた」

「……打たれるのが嫌だから、必要以上に力を入れて投げているってことか」と魔理沙がパワプロの説明を一言にまとめる。

「で、それのどこに可能性があるのよ?」

「鈍いんだぜ、霊夢。レミリアは誰が相手でも全力で投球してくる。そして、グングニルを投げた時、レミリアは汗をかいていた。つまり、さすがの吸血鬼でもあの超スピードボールを投げるのはしんどいってことだ。そうなれば、やることはひとつなんだぜ?」

「わっからないわねえ。一体何をやるのよ?」

「待球作戦だよ」とパワプロは霊夢の質問に答える。

「タイキュウ?」

「うん。球を待つと書いて待球。レミリアちゃんに一球でも多く球を投げさせてスタミナ切れを狙うんだ!」

「こっすい作戦ねぇ。性には合わないわ」

「私は好きな作戦だぜ? 弱者が強者に一矢報いるために策を弄するっていうのは。……で、具体的にどうすんだぜ? 今のところ、待球もクソもほとんど三振に倒れてるんだぜ?」

「レミリアちゃんのグングニルはご丁寧にも手を赤く光らせて投げてきてくれる。それを思い切ってツーストライクに追い込まれるまで全部捨てる」

「……本当に思いきるんだな」

「ああ。オレと矢部くんと小鈴ちゃんと阿求ちゃんはボールを見ることができていないけど、後の5人はボールは見えてるけど、バットに当てられないという状態なんだ。だから、ツーストライクまで待つことでボール球の分、レミリアちゃんに余分になげさせることができるという効果がある。そしてツーストライクからはバットを短く持って粘るんだ」

「ちょっと、パワプロ! 私はそんなせっこい作戦に従うつもりはないからね」

「うん。霊夢さんは普通どおりに打ってくれればいいよ。全員が待球していたらすぐに気付かれてしまうからね。作戦をカモフラージュするためにも、一番ヒットが打てる可能性のある霊夢さんは通常通りに打ってもらいたい」

「さて、それじゃ早速やってみるんだぜ」

 

 魔理沙はヘルメットをかぶると、右バッターボックスに向かって行った。魔理沙の動きに合わせるようにウグイス嬢のコールが始まる。

 

《4回裏、チーム博麗の攻撃 2番センター 霧雨魔理沙 背番号2》

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