実況パワフル東方甲子園   作:向風歩夢

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限界

(……もう一度だ。もう一度試す。それで全てわかるはずだ)

 

 パワプロはバットを目一杯短く持ち、グングニルに備える。

 

「言ってるでしょう!? ただの人間が小細工したくらいで私のグングニルは打てないわ!」

 

(やっぱり、レミリアちゃんに余裕がないように見える。もしかしたらもう……。いや、早合点したらいけない。確かめるんだ!)

 

 レミリアの手が紅く光る。パワプロはグングニルであることを確信し、早いタイミングでバットを始動させる。

 キンという金属バット特有の高い音を残し、打球は一塁側ベンチの方向に飛んでいく。

 

「あ、当たったでやんす!? タイミングが合って来てるでやんす! パワプロくん、いけ! でやんす!」

 

(いたたたた! なんて球威だ。手が痺れたよ。でも、間違いない。もうレミリアちゃんは……。次で仕留める!)

 

 パワプロに対してレミリアは5球目を投じる。再びグングニルだ。パワプロは確信を持ってバットを振り抜く……!

 

 カキーンという気持ち良い音とともに放たれた打球は左中間方向に飛んでいく。良いスタートを切っていた霊夢はセンターのフランがボールを取る頃には3塁を回っていた。

 

「させないんだから!」

 

 フランはバックホームを試みる。

 

「いけません妹様!」

 

 美鈴の制止を聞かずにフランはバックホームをする。矢のような返球が美鈴のミットに届けられるが、もう既に遅かった。霊夢は滑り込んでホームインする。パワプロはボールがバックホームされていることを確認すると、送球の間にセカンドベースを狙う。

 

「させない!」

 

 美鈴がセカンドベースの咲夜に向かって送球するが……、《セーフ》という声が球場にこだました。湧きあがる一塁側のチーム博麗ベンチ。パワプロは右手を大きく突き上げた。

 

「くそっ!」

 

 レミリアはマウンドにグローブを叩きつける。

 

「冷静になってください。お穣様」

 

 レミリアに声をかけたのは美鈴だった。

 

「まだリードは一点あります。……ここからは変化球中心でいきましょう。グングニルはもう使えません。私のミスです。もうど真ん中にしか投げれない状態だったのですが、人間相手なら力で押し切れると判断した私のせいです。申し訳ありません」

「……私に原因があるのに従者に頭を下げさせるなんて……私は投手、いえ当主失格ね」

「お穣様。冷静になる必要はありますが闘志まで失ってはいけません。チーム博麗の五番以降は妖精と特別な力の無い人間だけ……。ここで確実に打ち取りましょう」

「ええ」

 

《5番 サード サニーミルク 背番号05》

 

「さあ、来なさい。グングニルとやらを私も打ってあげるから!」

「妖精ごときが調子に乗ってくれるわね」

「お穣様、落ち着いてください」

「わかっているわよ。美鈴」

 

 レミリアはサニーに対して初球スライダーから入った。

 

《ストラィィク!》

 

(……攻め方が変わった? ……やっぱりレミリアちゃんはグングニルを投げるスタミナがもうなかったんだ。オレの予想通り、ど真ん中にしかもう投げられない状態だったらしい……。一か八かの読みだったが、賭けに勝っていたみたいだ)

 

 パワプロは自身が感じていた違和感が正しかったことを確認しながらセカンドランナーとしてリードを取る。

 

「舐めてるわね。妖精相手にはグングニルが必要ないってことなの?」

「その通りよ」

「ムッカー! ぶっ飛ばしてやるわ!」

「ダメだよ。サニーちゃん! 挑発に乗ったら……」

 

 パワプロが諌める声を出したのも虚しく、レミリアのサニーに対する2球目、パームボールにタイミングを崩されたサニーはセカンドゴロを打ってしまう。セカンドのルーミアとファーストのパチュリーは拙い守備ながらなんとかアウトを取る。

 

「なにやってんのよ、3バカ1号!」と霊夢が叫ぶ。

「いや、霊夢さん。あれでいいんでやんすよ」

「あん、どういうことよ。矢部」

「今のセカンドゴロでパワプロくんはサードまで行けているのでやんす。進塁打ってやつでやんす。いわゆる最低限というやつでやんす」

「サードまで行けたからなんだっていうのよ? 得点にはならないじゃない!?」

「ランナーセカンドとランナーサードでは雲泥の差があるのでやんすよ? ワイルドピッチはもちろん、守備側もワンエラーで得点が入ってしまうでやんすからね。相手に与えるプレッシャーはまるで違うものになるのでやんす」

「そういうもんかしらねぇ?」

「霊夢さんは心臓に毛が生えているみたいでやんすから、どこにランナーが出ていてもあまり意味はないかもしれないでやんすけど……」

「矢部、どうやら天国に行きたいらしいわね?」と霊夢は凄む。

「ご、ごめんなさいでやんすぅうう!?」

「まあ、いいわ。そんなことよりわかってるんでしょうね。3バカ2号! 絶対打つのよ!」

「誰が3バカよ!」

 

《6番 セカンド ルナチャイルド 背番号04》

 

 ルナは、レミリアにボールからストライクゾーンに入るスライダーとシュートに手が出ず、ツーストライクに追い込まれてしまう。

 

「これで終わりよ!」

 

 レミリアはストライクからボールになるパームボールを投げる。ルナは思わず手を出してしまった。

 体勢を崩されながらも何とか当てたルナの打球は三遊間の深いところに転がっていく……。

 

「チルノ! 私が取るわ!」

 

 咲夜が凄みのある剣幕でチルノを制止させ、逆シングルでキャッチすると、少し慌てた様子で一塁に送球した。送球はパチュリーの足元でワンバウンドしてしまう……。

 

「ああ!?」

 

 咲夜とパチュリーは二人とも自らの失態に対する声を上げる。咲夜の悪送球をパチュリーも抑えることができなかったのだ。エラーの間にパワプロが同点のホームを踏む。湧きあがる博麗ベンチ。

 

「も、申し訳ありません。お穣様……」

 

 顔面蒼白の咲夜にレミリアは視線を向ける。

 

「気に病む必要はないわ、咲夜。私ももう限界だったようね。……少し出番を早めなくちゃならなくなってすまないわね。……あおい! ピッチャー交代よ!」

「うん!」と答えた早川あおいがレフトからマウンドへと小走りで向かっていた。

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