《6回表 スカーレット・デビルスの攻撃は2番早川あおい。背番号10》
「さ、ぱぱっと片づけるわよ!」
「く!?」
《ストラィィク! バッターアウ!》
霊夢は自慢の快速球で早川を呆気なく三振に取る。どうやら早川に与えられた特別な力は投球でしか生かされないようだ。
《3番センター フランドール・スカーレット 背番号13》
「……そんなにすごい球なの? 私が打ってあげる!」
フランはバットを頭の上で振り回しながらバッターボックスに入る。
「そおれぇえ!」
フランは元気な掛け声とともにフルスイングする。
《ストラィィク!》
「すごぉい! 全然見えなかった!」
フランは霊夢の剛速球を前にしても笑顔を崩さない。
(と、とんでもないスイングだ。根元に当たってもスタンドに入るんじゃないか!?)とパワプロは心の内で思う。しかし、逃げる球を使うつもりはなかった。霊夢の余裕の笑みが「自分のストレートを試させろ」と要求していたからだ。
《ストラィィク!! バッターアウ! チェンジ!》
「……やるわね、博麗霊夢。どれほどの球か、私が判定してあげるわ」
《4番 レフト レミリア・スカーレット 背番号1》
レミリアはゆっくりと右バッターボックスに入りこんだ。
(……レミリアちゃんはフランちゃんのように振り回してくるタイプじゃないけど……、パワーがあるのは間違いない。気を付けなくちゃ……)とパワプロは思考しながら、サインを出す。もちろんストレートだ。『掴んだ』霊夢のストレートがレミリアに打たれなければこの試合チーム博麗が主導権を握れるようになる。
《ストラィィク!》
初球、二球目を見逃しツーストライクに追い込まれるレミリア。
「ふふ。今の二球で見切ったわ。次は捉える!」
「大きくでたわね。がきんちょ吸血鬼。でも無理だと思うわよ?」
「そちらこそ大きく出るじゃない。何か根拠でもあるのかしら?」
「ええ。ちょっとだけ本気だしてあげる」
「……今までの球は本気じゃなかったとでも?」
霊夢はかすかに口角を上げると振りかぶる。霊夢の放ったボールは真ん中高めのホームランボールだ。
「甘い! もらったわよ、紅白巫女! ……え!?」
(う、うそだろ!? さ、さらに伸び上がって!?)
霊夢のボールはこれまで以上のノビを見せ、パワプロのミットの遥か上空を飛んで行った。当然ホームランボールだと思ってレミリアのスイングは空振りに終わる。
「パワプロくん! 振り逃げでやんす! 早くボールを取りに行くでやんす!」
矢部に言われるまでもなくパワプロは逸らしたボールを取りに行く。しかし、ファーストの矢部に送球する必要はなかった。三振に倒れたレミリアは一塁に走ることなくその場で棒立ちしていたからである。
「く……!? 霊力を使ってない人間がこれほどの球を……!?」
驚愕するレミリアにパワプロはタッチする。
《スリーアウト! チェンジ!!》
結果として、ストレートで押すパワプロの判断は間違いではなかった。桁外れのノビを持つ霊夢の速球にレミリアは対応できないまま、三球三振を喫したのである。チーム博麗ナインは『ナイスピッチ』と声をかけながらベンチに引き揚げる。
「……大丈夫だよ、レミリアちゃん。僕が打たれなければ彼らに勝ちはないんだから」
立ち尽くすレミリアを励ますように声をかけたあおいは6回裏のマウンドに向かうのだった。