「ここまでの道中である程度この幻想郷のことをわかってくれたかしら?」
「うん。実際に見るまでは信じられなかったけど、本当に魔法や術がある世界なんだね。甲子園を出て霊夢さんが空を飛んだ時は驚いたよ」
霊夢とパワプロは博麗神社の縁側で話している。その横で矢部がプルプルと身体を震わせている。
「どうしたの? 矢部くん! どこか体の調子が悪いのか!?」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおでやんすぅううううう!」
「急にど、どうしたんだい? 矢部くん……」
「パワプロくん! この状況が理解できないでやんすか!?」
「え? オレ達が幻想郷という不思議な世界に突然やってきたのが夢でもなんでもなく現実だってことだろ?」
「違うでやんすぅうううう!」
「え? 違うの?」
「全然違うでやんす! パワプロくんいいでやんすか? これは巷で流行りの異世界転移ってやつでやんす!」
「異世界転移?」
「そうでやんす! これからオイラたちは誰か凄い人からチートな能力をもらってこの世界で暴れまわるのでやんす! そして悪い奴を倒してこの世界を救って……。そしてそしてたくさんのかわい子ちゃんに囲まれてハーレムを築きあげるのでやんすぅう」
矢部明雄はそう言って鼻の下を思い切り伸ばし、だらしのない表情を浮かべる。パワプロはそんな矢部を白い目で見ながら質問する。
「矢部くん……。チートって何?」
「反則級の強い力のことでやんす。その力を持てば最後、どんな相手も敵わないのでヤンす!」
「オレ達にそんな力があるとは思えないけど……。もしそうだったら……ハーレムか悪くないなあ」
パワプロも矢部の毒に侵され、鼻の下を伸ばす。
「あほなこと言ってんじゃないわよ!」
ガツン! ガツン!
「いったー!?」
パワプロと矢部の二人は霊夢の大幣で殴られ、声を合わせて悶絶する。
「そんな便利な能力があったらとっくに私たちが使ってるわよ! あと、私が見る限りアンタ達に力なんて欠片も感じられないわ。ただの一般人よ、アンタらは!」
「……霊夢さんがそう言うならそうなんだろうなぁ。残念だなぁ。オレも空飛んでみたかったよ」
「夢も希望もないでやんす……」
「馬鹿なことはここまでにして異変解決の方法を考えるわよ! アンタ達も早く戻らないといけないんでしょ?」
「そうだった! オレ達は一刻も早く元の世界に戻らないといけないんだ! 矢部くん、チートだのハーレムだのくだらないことは忘れよう! オレ達には最後の夏の大会が待ってるんだ!」
「オイラはもし、チートとハーレムが手に入るなら、夏の大会なんてどうでも……」
「矢部ぇええええええ!」
「ひい!? パワプロくんが怒ったでやんすぅ。ごめんなさいでやんすぅ」
パワプロの矢部くんへの評価が下がった。