実況パワフル東方甲子園   作:向風歩夢

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初めてのキャッチボール

「じゃあ、君の名前は霧雨魔理沙さんっていうんだね」

「ああ、よろしくなんだぜ!」

 

 パワプロは白黒の魔法少女、霧雨魔理沙と簡単な挨拶をかわした。

 

「それで霊夢、異変解決の糸口は何か見つけてるのか?」

 

 魔理沙は霊夢から事のあらましをざっくりと聞く。

 

「なるほど。じゃあ、とりあえず全部で9人集めなきゃいけないってわけなんだぜ?」

「そういうわけなの。ということで、あんたも協力してもらえるかしら?」

「面白そうだしな。私もその異変解決に一口乗らせてもらうぜ」

「ありがとう、魔理沙さん」とパワプロが礼を述べる。

「なぁに。私にとっちゃ異変解決なんて趣味みたいなもんだからな。よし、それじゃあ仲間になってくれそうな奴に早速声をかけてくるかな」

「あんた、声かけるあてがあるの?」と霊夢が魔理沙に問う。

「当たり前だろ? 私は友達の少ない霊夢さんとは違うんだぜ?」

「あんたケンカ売ってんの?」

「おお、こわいこわい。博麗の巫女は恐ろしいぜ。ま、霊夢たちは先にその甲子園とかいうところに行って練習でもしててくれ」

 

 魔理沙はそう言い残すと、博麗神社を飛び立っていった。

 

「さて、パワプロ、それに矢部! 甲子園に向かうわよ。闘う前にルールを教えてちょうだい!」

「わかったよ。霊夢さん!」

「任せるでやんす! オイラが手取り足取り霊夢さんに一から教え込んであげるでやんす!」

「……やっぱり、教えてくれるのはパワプロだけでいいわ……」

「な、なんででやんすか!?」

「なんか、矢部の言い方いやらしい感じがするから……」

「ガーン! でやんす! オイラ下心なんて無いでやんす! ラッキースケベがあったらいいなとも思ってないでやんす!」

「矢部くん……。下心が隠しきれてないよ……」

 

 博麗神社を出発し、甲子園に辿りついたパワプロたちは練習を始める。約束通り、八雲紫が道具を用意していた。

 

「ったく、一体どこからこんなもん集めたのよ?」

「色々とあてはあるのよ」

 

 霊夢からの質問を紫は軽く受け流す。

 

「それにしても、私のスキマ能力も使えないなんて……。この甲子園の敷地内にはかなり強力な結界が貼られているようね。おかげで甲子園の外から道具を手で持って運ばなきゃいけない。面倒だったわ」

「道具を運んだのはオイラなんでやんすけど……。自分が運んだみたいに言わないでほしいでやんす……」

 

 矢部が小さな声で反論するが、霊夢も紫も反応しない。パワプロだけは不憫な矢部に同情する表情を見せる。

 

「私の陰陽玉やお札も相変わらず使えないし、空も飛べない……。窮屈なことこの上無いわね。この甲子園球場ってところは……。それで、この丸いのやら、棒やらはどうやって使うのかしら?」

「この丸いのがボールで、そしてこの棒はバットっていうんだ」

「ふーん、じゃあこの革でできたのがグローブ?」

「うん、そうだよ」とパワプロは答えながらグローブを手にはめる。

「うん、見た目でもそうだと思ってたけど、このグローブある程度使いこまれて手入れも丁寧にされてる。良い感じだ!」

「使いこまれてるって、中古ってこと? 私は新しいヤツが欲しいんだけど! なんで紫はこんなお古を用意したのよ!?」

「イヤ、これで正解だよ。新品のグローブは固くて操作性が悪いから使いにくいんだ。これから試合をするなら新品よりもこれくらいの中古の方がやりやすいよ!」

「……そういうものなの?」

「うん! ……ファーストミットやキャッチャーミットもある。プロテクター一式もヘルメット類も……。これだけあれば試合には十分耐えられるよ。ありがとう。紫さん!」

「お役に立てたようでなによりですわ」

 

 紫は日傘を差し、扇子で口元を隠して微笑む。

 

「……で、話を戻すけどどうやってこの道具を使うのかしら?」

「ああ、順番にオレと矢部くんでどうやって使うのか説明するよ!」

 

 パワプロと矢部は道具を使って野球の基本動作を説明する。キャッチボールやフリーバッティングを行い実演してみせたのだ。

 

「取りあえず、使い方は今見せたような感じだよ。ルールは人数が集まってから教えた方が効率が良いから……取りあえずキャッチボールから始めよう!」

 

 パワプロは霊夢にグローブとボールを渡す。

 

「ボールを投げて受け取るを繰り返せばいいのよね? ちょっと紫、付き合いなさいよ!」

「嫌よ。私まで二頭身になりたくないもの」

「ボールとグローブを使ったくらいで二頭身になんてならないわよ!」

「そんなのわからないじゃない。だから、この甲子園の中に道具を入れる時、私は道具に触らなかったのよ?」

「ったく、わかったわよ。もう頼まないから。じゃあパワプロがキャッチボールしてくれる?」

「もちろん!」

 

 パワプロもグローブをはめ、キャッチボールの準備をする。

 

「さぁこい!」

 

 パワプロはグローブと手でポンポンと音を立てて構える。霊夢とパワプロの距離は塁間(ベースとベースの間)の半分程度、10mくらいだ。

 

「それじゃ、投げるわよ!」

 

 霊夢はぎこちない様子でボールを放り投げる。

 

「良い感じだよ。霊夢さん! 初めてで、しかも女の子でこんなボール投げられるなんて……!」

「それはどうも」

 

 霊夢はパワプロの言葉をあまり嬉しそうな様子も見せずに軽く受け流す。パワプロは本心から言った言葉だったのだが、霊夢には下手なお世辞に感じられたらしい。その後もキャッチボールを続け、パワプロが少しずつ距離を広げていく。そして、塁間くらいの距離が開いてキャッチボールを始めた時だった。

 

「ああもう!」

「どうしたの!? 霊夢さん!」

 

 突然癇癪を起こす霊夢にパワプロは驚く。

 

「なんでこんなに投げにくいのよ!」

 

 霊夢は左手にはめていたグローブと取り叩きつける。

 

「はは、始めたばかりだから仕方ないよ。練習すればもっと上手く……」

「こっちで投げた方が絶対上手く投げれるのに!」

 

 霊夢は左手でボールを掴むと、強く腕を振る。ボールはパワプロの頭部を掠めて糸を引くような軌道で飛んでいき60~70m程度先の位置で着地した。

 

「ええ……」

 

 女子が投げたとは思えないボールの軌跡を目の当たりにしたパワプロと矢部は声を合わせて茫然とする。

 

「オイラより肩強いでやんす……」

 

 矢部は小さな声を出しながら、転がるボールの行く先を見届けるのだった。

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