「ちょっと魔理沙! これはどういうことよ?」
霊夢は魔理沙に文句を言っている。理由は簡単だ。魔理沙の連れてきたメンバーが霊夢は気に入らなかったのだ。
「なんで、妖精なんか連れて来るのよ!!」
魔理沙が連れてきたメンバー、それは一見すると幼稚園児程にしか見えない3人だった。
「いやぁ、声かけはもっとたくさんしたんだけどさ。思ったよりも参加してくれるヤツがいなかったんだぜ。計算外だったな」と魔理沙はいたずらな笑みを浮かべる。
「ちょっと、私たちになにか文句があるの!?」
「大ありよ! アンタ達みたいなちんちくりんがいたって勝てるわけないじゃない!」
霊夢の視線の先には3人組の妖精が不満そうにしている。彼女らもまた二頭身になってしまっていた。彼女たちの名はサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイア。いつも霊夢にいたずらをしかける幼稚園児くらいのこどもの様な妖精である。実際精神構造も人間のこどもに近い。身体能力は人間の幼稚園児に比べれば幾分か高いようであるが、霊夢には遠く及ばず、パワプロや矢部よりも低いだろう。
「まあ、そういうなよ霊夢。こいつらが参加しないと9人にならないんだぜ?」
「……私はアンタが連れてきたもう二人については心配になるんだけど」
霊夢は甲子園の外野に目を向ける。そこでは、二人の少女がぎこちない様子でキャッチボールをしていた。
「行きますよ。阿求さん!」
一人の少女がボールを投げる。
「ちょっと! 全然届かないじゃない! なにやってるのよ小鈴!」
「そんなこと言っても……。大体、阿求さんだって届いてないじゃないですか!」
二人の十代半ばと思われる少女たちは年相応の身体能力かそれ以下のようだ。
「どう考えてもあの二人を人選するのは間違ってるわよ! あの二人ならあの3バカ妖精の方がましよ! というか稗田の娘は動いて大丈夫なの!? 体弱いんじゃなかったの!?」
「阿求は寿命が短いだけで、別に体が弱いわけじゃないみたいだぜ?」
魔理沙は親指で阿求を指さしする。
「はぁ……。はぁ……」
「大丈夫ですか!? 阿求さん! 息切れ起こしてるじゃないですか!?」
「大丈夫よ小鈴。ちょっと激しい運動をしたからよ」
「激しい運動って……。まだ十回も投げてませんよ?」
小鈴は苦笑いを浮かべながら阿求に指摘する。
「魔理沙……。どう見ても体弱いじゃない! こんなんでどうやって勝つのよ!?」
憤慨する霊夢の傍らで矢部とパワプロはだらしのない笑みを浮かべていた。
「パワプロくん、癒されるでやんすねえ」
「うん、やっぱりあれが女の子の投げる球だよな。霊夢さんが凄い球を投げるからこの世界の女の子はみんな霊夢さんみたいなバケモンなのかと思ってたけど安心したよ」
ポカッ! ポカッ! と霊夢が拳でパワプロと矢部の頭をド突く。
「いったぁー!? 霊夢さん何をするんだよ!?」
「人のことバケモンとか言っといて『何をするんだよ』はないでしょうが! そんなことよりもどうするのよ! 9人集まったっていってもこんなメンツでまともに戦えるわけないでしょう?」
「そんなこと言われてもオイラたちはこの世界に知り合いなんていないでやんすから……」
「集まらないなら仕方ないよ。いるメンバーでやるしかない! 個人で足りない部分を他のメンバーが補う……。それが野球の醍醐味さ!」
パワプロは得意気に霊夢に微笑む。どうやら、心の底からなんとかなると思っているらしい。そんなパワプロの顔を見て霊夢がつぶやく。
「あんた……、まさか脳筋?」
「脳筋じゃないよ!? 取りあえず、野球の基本を教えるから。みんな集まってくれ!」
こうして『チーム博麗』は結集された。パワプロと矢部は野球のルールを霊夢達に教えるとともに、各個人の能力を把握し、ポジションを決めていく。
「……こどもみたいな妖精たちだけど……身体能力は中学生くらいはあるみたいだ。内野を守ってもらおう。外野は……ライトに小鈴さん、レフトに阿求さん、そして……センターには魔理沙さんに入ってもらう!」
「え……? それじゃあ外野が全部埋まっちゃうでやんす! オイラはどこを守るんでやんすか!?」
「矢部くんにはファーストに入ってもらう。今のチーム状況でまともにボールを取れるのはオレと矢部くん、そしてセンス抜群の霊夢さんと魔理沙さんしかいないから。キャッチボールもまだまともにできない内野陣の球を取るファーストは重要だからね」
「……本職は外野でやんすが……、やむをえないでやんすね。オイラの華麗なファースト守備を見せてやるでやんす! ……それで霊夢さんとパワプロくんはどこを守るでやんすか?」
「オレも本職じゃないけど……キャッチャーをやる。ボールを取れなきゃ話にならないポジションだからね。そして……ピッチャーは……」
「……私ね」
「うん……。霊夢さんにやってもらう。オレや矢部くんがやるって方法もあるんだけど……守備のことを考えると霊夢さんにやってもらうしかない。素人には厳しいかもしれないけど……、霊夢さんのキャッチボールを見る限り、球速もコントロールも何とかなると思う」
守備位置を決めたパワプロたちが練習を始めようとしたときだった。
「やっと、守備位置を決めたようね。待ちくたびれたわ。紅魔館の主を待たせた罪は重いわよ?」
甲子園のベンチ前からパワプロたちに声をかける幼い少女……。少女はあじさいのような水色の髪に真紅の瞳を持ち、背中には蝙蝠のような黒い羽が生えている。
「うぉおおおお! 超絶美幼女でやんす! 10年後が楽しみな逸材でやんすねえ!」
「矢部くん……。気持ち悪いと思われるよ? ……たしかにかわいい子だけど……」
「何の用なの、レミリア? 私たち忙しいんだけど……」
「……相変わらずのご挨拶ね。博麗の巫女、博麗霊夢。何の用かですって? 決まってるじゃない! 勝負よ。我が紅魔館『スカーレット・デビルス』とね!」
レミリアが合図を出すとともに、ベンチの影から少女たちが現れる。その中には、パワプロたちの見知った人間が一人紛れ込んでいた。
「き、君は……恋恋高校の早川あおい!?」
パワプロが驚き混じりに緑色の髪の少女に問いかける。
「ボクのことを知ってるの?」
「知ってるに決まってるでやんす! 初めて高校野球の公式戦に出た女性選手として有名でやんす!」
「ボクのことを知っててくれるなんて光栄だよ。でも、勝負はボクが勝たせてもらうよ! ボクは最後の大会に間に合わないといけないんだ!」
「役者は揃ったようね……。それでは始めましょうか……」
妖艶で胡散臭そうな声が甲子園に響き渡る。パワプロたちが声の出所を探し、周囲をきょろきょろと見渡すと、ホームベース付近の空間に穴が開き、金髪の美女が傘をさして現れる。
「ただいまから、チーム博麗とスカーレット・デビルスの試合を始めるわ。整列してちょうだい」
パワプロたちは突然の試合開始宣言に驚きの表情を隠せなかった。