未來への焦り、そして   作:萩村レイン

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未来へつなぐ暗号、迫りくる時への焦り

 

 

「えっと、地図だとこの辺りだよな」

 

 就職活動が難航したまま大学四年の前期が終わってしまった俺は、今までにないような焦りを覚えたまま夏休みをどうするか悩んでいた。

 それはなぜか——簡単にいうと、内定がまだ取れていない。この時期にこれは、流石に周りに何といえばいいのか、頭を抱えるばかりだった……はずだった。

 

 そんな中、夏休み突入してすぐの七月下旬にとある探偵事務所だというところから一通のオファーの手紙を受け取った。なんでもその手紙には、暗号を解くなどのいわゆる小説でよく見る様な探偵を何人か抱えるところであると書かれていた。

 その手紙には事務所に採用するかの試験をするという旨の内容と、試験場所と集合時間、それに合格した場合の契約内容の目安が書かれていた。

それを調べてみると、試験場所は都会からは割と離れた、広い公園だった。その公園にはそこそこの人が訪れているものの、指定された場所は人気が少ないであろう場所だった。俺はそこに向かうべく、朝早くから電車などを乗り継ぎ目的場所へと向かったのであった。

 

 

 —―しかし、何故俺にオファーが来たのかが分からない。趣味として時々雑誌のクロスワードを解いてはいたが……さすがにそれではないと信じたい。

 その様なことを考えているうちに、公園内の指定された場所に着いた。公園は自然が多く木もそれなりに立っているため、軽く歩きながら辺りを見回してみたところだった。

 

「あれは……?」

 

 道の先にある、軽自動車が一台入りそうな大きさの倉庫のような建物の扉に、一枚の張り紙があるのを発見した。それに書いてある文字を読むためにも、辺りを警戒しながら近付いてみると、次のように書いてあった。

 

【① 中に入り、そこにある謎を解け

②中は監視してる、不正は許されない

③型に縛られるな、それぞれ柔軟に解け】

 

  *  *  *

 

 ドアを開け恐る恐る中に入ると、中には大きめの机や椅子が置いてあった。

机の上には鉛筆、シャーペン、ボールペンがそれぞれ数本ずつに消しゴム数個、0・5ミリごとに測れる定規とハサミが一つずつに、文字が書かれた三種類の紙と、真っ白の数枚の紙。それに加え、連動したタブレットとノートパソコンが置いてあり、タブレットの画面にはデジタルのタイマーが0・01秒単位で表示されている。残りは三十分少々、身に付けた腕時計を確認するとこのテストの時刻は午前十一時半までであった。

 パソコンの画面には〈問一の答えを下の欄に記入しろ〉と書かれており、記入欄は一つのみ、短めの文を書けるくらいの大きさだった。その欄のすぐ下には、送信ボタンがある。

 文字が書かれた紙をよく見ると、次の三種類だった。

① 〈問一〉から続く問題文が書かれた、B4のもの

② 縦13cm×横3.5mmの細い縦長の紙に文字が書かれたもの数枚

③ ②の紙に書かれている文字を拡大したものに加え〈問二〉から続く問題文が書かれたB4のもの数枚

 

【問一 2し 6あ 8に 11か 14こ 18と 21ぶ 24が 28ろ 31や 34め

39さ 40り 44よ 47い 50や 52き 56な 58す 63け 66は 70な

72ち 75ん

 ヒント・独身の西井さんが持つものは下にあり ※解答権は一度のみ、お気をつけて】

 

【問二 次の問題を解き、ノートパソコンの欄にそれぞれ十三文字以内で二つ答えよ。

 ちついにならよとちめにわうじゆえ、かだよういきるいうのがみよひえあはなね】

 

 これらを確認し、縦長の紙の長さを測り終えてからタイマーを確認すると、既に三分が経過していた。少々ゆっくりしすぎたかと思いつつ、椅子に腰かけながら問題を改めて読み始めていく。

 

  *  *  *

 

 椅子に座りながら、一つ目の問題を数分かけじっくりと熟読した。予想通り、すぐには解けないような問題になっている。事務所としても、この程度の問題は解けなければ採用することはないのだろう。

 

 問一はヒントの“下にあり”という言葉の通り下の文字を読むのだろう。他にヒントになりそうなものは、独身くらいしかないのだろうが……注意書きの“解答権は一度のみ”という言葉のせいでついつい慎重になってしまう。

 とりあえず、独身という言葉の意味を探ろうと目を瞑り考え始める。この問題の意図に合うような捉え方をするべく、熟考する。

 そうして一つ当たっているであろう候補を頭に浮かべると、シャーペンを持ち真っ白な紙の上に思い浮かべたものを文字にしていき、その条件に当てはまる文字を書いていく。そして、文字を全部書き終え、間違いがないか一つ一つ確認していくと――ふとした違和感を持つ。

問題は何故このように書いたのか、もしかして。ヒントをもう一度確認して、ふと浮かんだ条件に当てはまる文字を書いていく。しかし、抜き出した文字は並びを変えずにそのまま読むなら――あ。そういう事だったのか。全く、分かりにくいことをしてくれる。

立ち上がりパソコンの前に移動すれば、自分で気付いた通りに答えを打ち込み、送信ボタンをクリックする。

 

そして――――パソコンの画面には大きめに“正解”と表示された。そしてすぐさま二問目の問題文と記入欄が二つ、それに送信ボタンに切り替わった。

ほっとしつつタイマーを見ると、残りは十分を切るところだった

その時間を確認すると、急ぐように二問目の問題に取り掛かった。

 

  *  *  *

 

 文字が大きく書かれた紙を持ちながら、これはどう解けばいい、と内心で戸惑いつつ読んでいく。先ほどのように法則があるわけでもなく、ヒントらしいヒントもない。一応縦長の紙は一辺の長さを測ったものの、それは本当に気まぐれから来るものであった。

 

 これはどうすれば解けるのか――その諦めとも取れるような考えに支配されてしまいつつ、目を瞑り考えを巡らせる。

 文字列に意味を成すような要素を見つけられないと、解けないようにはなっているのは分かる。がしかし、そもそもなぜ小さい紙を用意する必要があったのか。問題を見るだけならB4の紙だけで済んだはずだ。そうなると、それにも要素があると考える他ないだろう。けれど、どうやって答えを出すか、まるで理解が出来ない。

 ほぼ諦めつつ目を開けると、テーブルの上を見回す、見回す――そうして目に飛び込んできたものを見た瞬間だった。

 まさかと思い縦長の紙を持ってみると――あぁ、そうだ。確かにこれならできるかもしれない。それに気付いてタイマーに目をやると制限時間まではもうすぐ二分前になるというところだった、早くしないといけない。

 そう思うとハサミとB四の用紙一枚を手に取り、一見ただの文字の羅列を分かりやすくなるようにハサミで切っていく。きっちりする性分というせいか、周りもある程度綺麗になるよう気を付けているため、案外時間がかかってしまう。

 一文字ずつ切り分ける必要がないだけまだましだろうか。

 

―――一分半

 

 切り終えた紙を、文が出来るように並び変えていき、それに軽く目を通す。よし、これなら意味が通じる。そして、その文字を白紙にシャーペンで意味が伝わるように場所によって小文字や漢字に変換していく。

この作業には多少の時間がかかってしまうが、誤字なんてしてられない。落ち着いて、焦らず文を完成させていく。

 

―――三十秒

 

 清書をし終え出来た一文を眺め、一瞬やや苦笑いを浮かべてしまう。確かに、この分を読めば俺ならすぐに答えが分かるだろう。

 立ち上がりすぐにパソコンに向かうと、立ったまま答えを打ち込んでいく。

 落ち着け、変換を間違えるな。急ぎつつ焦る気持ちを落ち着かせるよう心の中でそう言い聞かせる。

 一つ目の欄に慣れたようにほとんどの文字をブラインドで打ち込んでいき、変換をしていく。それを終えるとすぐに次の欄へと移り、同じように打ち込んでいき、送信ボタンをクリックする。

 そして、永遠とも思える一瞬が過ぎ――画面には“正解”の文字が表示される。

 

 残り時間は……3・57秒。何とか大丈夫だったみたいだ。ほっと一安心し、近くの椅子へと座ると、背もたれにもたれかかる。このタイマーが爆弾と連動していたら、と思うとぞっとする。そう思いながらぎゅっと目を閉じ顔を上に向け、しばらく精神的な休憩を取ろうとした――その瞬間だった。

 いきなり“バンッ”と大きな音を立て、ドアが開いたのであった。突然の事に飛び上がるように体を起こし、ドアの方を見ると――

 

 

 






(三題噺・えんぴつ、紙、爆弾より)
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