『レモンエナジー!』
空を飛んでいるインベスに黄色の矢が直撃し、大爆発したところで映像は切れた。
「なるほど……試作品でありながら予想外の性能だ。
ただ単に試作品と試作品がうまい具合に反応を起こしてここまでの性能が出たのか、
それとも彼の才能がそうさせたのか。
だが、一番気になるのは彼の戦い方が大きく変化したことだ。
今までのように相手を見下しながら戦っていない……いったい、
この短い間に何があったんだろうか」
「さあ……ただ、この人が復活し、力を手に入れた以上、この先どうなるか分かりませんよ」
「大丈夫さ。予想外と言っても許容の範疇だ。
君は確か、お兄様から任務を言い渡されているんだよね?」
「はい」
「なら気をつけたまえ。彼に感づかれないようにね」
「そんなこと……ありえませんよ」
「健太。これどうするの」
今、俺――――三直健太はチームの拠点にホワイトボードと水性のペンを用意し、
簡易的ではあるが授業を行っていた。
ラットは入院していたために勉強が遅れているのでその分を取り戻すために、
舞、チャッキー、リカ達は何らかの理由で勉強に手がついていないという理由だった。
まさか、家庭教師という形でチームガイムの中に入るとは思っていなかった。
「まずは余弦定理をこの図でたてて、その後に分かっている数値を代入する。
そうすると二つ式ができるから、あとは方程式で解けばいい。
あと、正負の判定には気をつけろよ」
「オッケー」
にしても……懐かしいな。この勉強を俺がしたのは4年も前なのか……ていうか、
俺、ろくに学校で勉強した記憶がないぞ。
大体は深夜までのバイトを毎日のように入れていたから学校は眠る場所ぐらいにしか、
考えていなかったし学校が終わってもすぐにバイトだったから……まあ、俺の欠点のせいで、
友達もいなかったしな。
「やっぱり、あんた変わったわね」
「そうか?」
「なんか高圧的な雰囲気がなくなった……気がする」
舞のその一言に他の連中も首を上下に振った。
その瞬間に今までの俺の言動が再生され、恥ずかしさが込み上げてきた。
……一種の発作のようなものだな。これは。
この前のユグドラシルからの脱出の際に戒斗が俺の顔をジッと見ていたのも、
舞達と同じような物を感じ取っていたからかもしれないな。
でも、姉貴からは変わった? なんてことは一度も言われていないが、
家の中と外では雰囲気も変わるからか。
教科書で熱くなっている顔をパタパタと仰いでいる時、
ポケットに入れていたスマホが震えだし、
取って画面を見てみると非通知設定で通知が来ていた。
『三直健太。お前の姉は預かった』
向こうから聞こえてきた声は変声機でも使っているのか、
野太い声で男か女の判別も付かなかった。
向こうの要件を要約すると要するに俺が持っているドライバーを持って、
奴らが指定する場所に時間内に来れば姉は無事に解放する……らしい。
「……ふざけるなよ」
「健太?」
「悪い。少し急用ができた」
「う、うん」
そう言い、戸惑い気味の舞達を置いて外へと出て、ロックビークルをバイクへと変形させ、
奴らに指定された場所へバイクを走らせると、
そこは巨大な駐車場の屋上でそこに縛られた姉貴と凰連がいた。
「時間ピッタリね。もしも遅れたらお姉さんに傷がついていたかもね」
「お前! さっさと姉貴を」
凰連に殴りかかろうとしたところで以前、光実に言われたことがふと脳裏をよぎった。
…………ふぅ……予想外のことが起きれば周りの影響を考えずに行動を起こしてしまう……。
俺は深呼吸を何度か行い、まだ少しばかり心臓がいつもよりも強く鼓動を打っているが、
ジーッと縛られている姉を見ながら今までの姉貴の行動を思い出し始めた。
そもそも姉貴は今の時間帯はユグドラシルで勤務時間帯中だ。昼飯だって今日も、
俺が作った奴を持っていっているはずだから外に出る意味はないし、
お茶だってマイボトル派だ。
仮に通勤中に連れ去られたとしても連絡が来るのが遅すぎる。
通勤中に連れ去られたのに電話をかけてきたのが、
お昼の二時を回った時間ってのはおかしい……まあ、
敵側の準備がなんらかのトラブルが発生して遅れたという可能性もないことはないが。
……そうだ。そんなことよりももっと簡単に判別できる方法があるじゃねえか。
「さあ、貴方のドライバーを寄越しなさい。貴方の大事なお姉さんが傷つく前にね」
……光実。ありがとうな……おかげで姉貴を傷なく救えそうだ。
「……そうだな。“お姉ちゃん”が傷つくのは俺としても嫌だからな」
そう言い、俺は手にドライバーを持ったままゆっくりと近づくと凰連に連れられて、
姉貴が近づいてきてあと少しで手が届くというところで姉貴が一気に近づいてきたが、
それと同時に俺は全力で姉貴の腹を蹴り飛ばして大きく吹き飛ばした。
「な! あ、貴方実の姉になんてことを!」
「……いい加減被りものとれよ。もう分かってるんだよ」
そう言うと姉貴の被り物をしていた奴が顔に手をやり、
仮面を剥ぎとるような形で腕を動かすと、
ベリベリッと破れるような音がしてマスクがとられるとそこには、
ユグドラシルの連中の一人らしい、スーツ姿の女が立っていた。
「どうして分かったの」
「姉貴いわく、お姉ちゃんと呼ばれるとゾクゾクして気持ち悪いらしいぜ」
「……そう。平和的にしたかったけど残念ね……凰連」
凰連がロックシードを取り出したので俺もオレンジのロックシードを取り出した瞬間、
手がガタガタと震えだし、解錠すらままならないほどにまで震えはじめた。
『ドリアンアームズ・Mr dagerous!』
「あらあら、どうしたの!? 変身しないと死んじゃうわよ!」
変身を終えた奴が振り下ろしてきた棘が大量に生えている刀をよけ、
さらに横に振るった刀をバック転で何とか避けるがまだ腕が震えている。
……あのトラウマのせいか。
あの女、俺のトラウマのことを計画に入れて俺を呼び出したわけか!
「ほらほらほら!」
次々に振り下ろされてくる刀を避けていくが壁にぶつかり、動きが止まってしまった。
「変身!」
『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』
立ち止まった俺に刀が振り下ろされた瞬間に振るえる腕で無理やり解錠し、
ドライバーにセットしてブレードを下ろし、変身を終えると同時に、
両手に刀2本を握りしめて振り下ろされてくる刀を受け止めると、
鍔迫り合いをしながら駐車場の屋上から飛びおり、
空中で相手を蹴飛ばしていったん、距離を取った。
地面に足をつけたと同時にトリガーを引き、銃弾を装填して引き金を奴めがけて引き、
すべて直撃するが奴にダメージらしいダメージは通っていないように見えた。
……どういう意味だ。
「ここで貴方との決着もつけてあげるわ!」
『ドリアンスカッシュ!』
「うぉ!」
奴がブレードを一回降ろすと奴の頭に付いているトサカのようなものが輝きだし、
頭を下げたかと思えば一気にトサカが伸びて俺に向かってきた。
それを真横に飛びこんでその場から退き、トサカが通った場所を見てみると、
コンクリートの道路に深い溝ができていた。
……ここまでの威力じゃなかったはず……考えられるのは奴がまだ、
本気を出していなかったか、もしくは根本的な何かが変わったかだ。
「悪いが俺は負けるわけにはいかないんだ」
俺はドライバーのプレートを取り外し、追加パーツを差し込み、
レモンのロックシードを解錠した。
『レモンエナジー』
『ミックス! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ! ジンバーレモン・ハハー!』
ドライバーにレモンをセットし、自動的にロックが解除されたオレンジと、
レモンのロックをかけてブレードを降ろすとオレンジとレモンが同時に展開され、
頭上に滞空していたレモンのアームズに上空へ射出されたオレンジのアームズが、
空中で合体して一つになるとそのまま俺にかぶさり、陣羽織のように展開されて、
手に赤い弓が握られた。
「何よそれ」
「大切なものを護るための力だ!」
俺めがけてかけだして、振り下ろしてくるブラーボの2本の刀を姿勢を低くして避けて、
すれ違いざまに弓で切り裂くと体勢を崩して地上の駐車場の内部に入り込んだ。
立ち上がり、俺に蹴りを入れてくるがそれを後ろに飛び退きながら弦を引き、
矢を放つと奴に直撃し、大きく吹き飛んだ。
「はぁ!」
立ち上がった凰連めがけて矢を放つと奴は二つの刀で防ごうとするが、
防ぎきれずに直撃して、壁に激突した。
「な、なによそれ! このワテクシが一方的だなんて!」
「言っただろ。俺は負けられないんだ……俺が変わるために。
そして俺が護りたいと思う仲間のために!」
「やっぱりアマチュアね! 戦いとは相手を潰すことに集中しなければならくてよ!」
『ドリアン・オーレ!』
「闘いに集中しすぎて周りが見えなくなれば意味がない!」
『ロックオン』
『ソイヤ! オレンジスカッシュ!』
レモンを取り外して弓の窪みに装着させ、ブレードを一回降ろすと、
目の前に輪切りにされたオレンジとレモンが交互に現れ、
ブラーボまでの通路となり、引き絞っていた弦を離したと同時に、
奴が放ってきたドリアン状のエネルギーの塊を一瞬で粉砕し、
ブラーボに直撃するとそのまま地上数階分の高さから奴を地上へと叩きつけた。
「ふぅ……次はお前か」
後ろからカツカツと足音が聞こえ、振り返ると先ほどのスーツ姿の女性が、
腰に次世代型のドライバーをつけ、手にはピンク色のロックシードを手に持って立っていた。
「初めまして……じゃなかったわね。
私はプロフェッサー凌馬の秘書の湊耀子……そして」
『ピーチエナジー』
「変身」
『ロックオン・ソーダ・ピーチエナジーアームズ』
解錠したロックシードをドライバーにセットし、レバーをロックシードに近づけるような形で、
押しこむとロックシードが展開し、頭上に浮いていたピーチのアームズが奴にかぶさり、
鎧の展開が終了すると手に赤色の弓が出現した。
「アーマードライダー・マリカ……随分と戦い方が変わったわね。
相手を見下さなくなった……それが普通。そしてここからが重要よ!」
「ここからが本当の戦いか!」
駆け出し、弓を振り下ろすが奴の弓に防がれ、そのまま横ばしりしていくと、
駐車場の壁を破壊し、地上へと落ちていくが俺達が落ちたのは地面ではなく、
大きめの倉庫のような場所で、大量のドラム缶が放棄されていた。
互いに互いを見つめあった直後、同時に弦を引き絞って矢を放つがスレスレで避け、
ドラム缶を飛び越えたりしながら矢を放っていくが互いの矢は一発も当たらず、
ドラム缶がない、少し開けた場所に出ると矢を引くのをやめ、近接戦闘に持ち込み、
互いの弓を当て、蹴りを入れていくが腕で防がれたり、避けられたりしていく。
「はぁ!」
至近距離で矢を放つが奴は姿勢を後ろへと持っていき、それを避けつつも矢を放つが、
俺はそれをバック宙で避け、地面に足をつけたと同時に弓を奴に向けると、
奴も同時に俺に向けていた。
「一体、どれほどの訓練を積めば、
その域に達することができるのかご教授願いたい」
「流石はプロフェッサー……いえ、貴方も凄いわ。強化パーツ一つで、
ここまでの性能を出し、その性能をいかんなく発揮している。
その年にしては戦闘センスは抜群ね」
その時、一瞬だけ奴の視線がずれた。
その隙を狙って俺は一気に駆け出し、奴が放った矢を弓で弾いて、
下から上へ弓を動かして奴を切り裂いた。
「闘いの最中によそ見はいくらなんでも余裕を露わにし過ぎじゃないか」
「年長者の余裕って奴よ。貴方には分からないでしょうけどね」
そう言い、俺と奴は同時に矢を放つがぶつかり合った衝撃で俺も奴も吹き飛ばされた。
「くっ! あ?」
吹き飛ばされた先に誰かの足が見え、視線を上げてみると、
何故かそこに光実が立っていて、
何を迷っているのかロックシードを握り締めたまま突っ立っていた。
……なんで光実がここにいるかは放っておく。
「気をつけろよ、光実。あいつ、メロンと同じくらいに強いぞ」
俺が立ち上がると同時に奴も立ち上がった。
一瞬も気を緩めずに奴の動向を見続けるが奴は俺を……というよりも、
俺の後ろの方をジーッと見続けていた。
……年長者の余裕にしてはおかしすぎる。戦いの最中に視線を外すなんて、
攻撃してくれと言っているようなものだ。
「変身!」
『ハイー! ブドウアームズ・龍砲・ハッハッハー!』
「うぁ! 何を」
その時、後ろで光実が変身を終えたかと思えば俺の背後から、
紫いろの弾丸が何発が飛び、奴に直撃した。
「はぁ!」
俺はその隙に弦を引き絞り、奴めがけて矢を放つと避ける暇もなく奴に直撃し、
奴を大きく吹き飛ばすが反撃をしてくる様子はなく、
ぶつぶつと小さな声で何か言うと、そのまま去っていった。
……いったい何なんだ。
変身を解除して後ろを振り返ると光実はどこか後悔しているような雰囲気を出していた。
「……帰ろう。最近、お前が来ていないって舞が言ってたぞ」
「……はい」
「悪いね、貴虎。今、彼が使っている試作品なんだが私の予想外の性能を叩きだしていてね。
もう少し観察をしておきたくて今回、光実君にお願いしたんだ」
『そうか……まぁ、良い。弟の身柄は当分、お前に預ける』
「了解」
そう言い、プロフェッサー凌馬はキーボードを叩いてネット通話を終了させると、
椅子を回して僕の方に向いた。
正直、ついさっきの行動は僕の独断でやったことなのにこの人は何も言わずに、
僕の行動に辻褄が合うように口裏を合わせてくれた。
「大変だね、君も」
「いえ……口裏を合わせてくれて感謝します」
「良いんだよ……僕は貴虎よりも君の方が賢い……どちらかといえば、
腹黒いと思っているくらいなんだ。そして兄上以上の野望もね……まあ、
これからも引き続き、頼むよ」
「……はい」
僕はあの人の……舞さんの笑顔を護るためなら健太さんと敵対しようとも、
悪魔にだって魂を売ることだってしてみせる。
久しぶりのガイム更新です。
ところで私の作品って読みにくいですか?