魅せて、魅せられた彼と彼女は、向かい合えど決して交わらない 作:初代小人
そんな感情をせめて文字に起こして供養するための小説。
衝動で書いていくため不定期更新かつ展開未定なのでご了承ください
突然だが私には友達が割と沢山いる。
自分で言うのも変なことだけれど、他人からよく人気だね、とか顔が広いね、なんて言われるからまあ間違いは無いのだろう。
そして私には気になっている人がいる。
って言っても恋愛感情ではなくて、額面通り、文字通り気になる人、だ。
いつもクラスの端の席で、欠伸をしているか寝ている彼は、ある意味私の対極のような存在だった。
もちろん彼も友達が居ないわけでは無いのだろうけれど、数人の友人が時折彼の席を訪れても一言二言話すと直ぐに会話をやめて机に突っ伏して寝てしまう。
クラスの誰に聞いても彼の人柄についてだけは答えが返って来なかった。
だけれど私が直接話に行くのも迷惑かもしれないと、どことなく視界が悪いような煮え切らない心持ちではあったが、それは仕方の無いことであると私は一応の妥協点を既に見いだしていた。
そんな折、思わぬ機会が巡ってきた。
学年が変わって桜の木に緑が交じり始めた頃だったろうか。
「今日は委員会を決める」だとかなんとか、無気力そうな担任が教卓に立って言った。
人気なのはあまり仕事のない保健委員など。
逆に不人気なのは面倒な学級委員や、週に一度交代制で昼休みに本の貸出当番をしなければならない図書委員等だったのだが。
彼は何故かその図書委員に立候補した。
まあ、余りに気怠そうに手を挙げたものだから、誰もが寝起きに伸びでもしたのかと思った程だったが、何はともあれ彼は図書委員になった。
そして、その影響で、図書委員の倍率はさらに下がった。
昼休みを削ってまで仕事をしなければならない上、よく分からないクラスメイトの彼と仕事をしなければならないとなれば、敬遠したくなる気持ちは分からなくはないが、これは私にとって好都合であった。
私は、少し逡巡した後に、恐る恐る手を挙げた。
「実は本が好きで、図書室に好きな本を入れてもらうために図書委員に立候補した」と言えば対外的に言い訳になるだろうか、だなんて心中で見積もりを立てながら。
その瞬間彼が少しだけ顔をこちらに向けて、直ぐに逸らした。
あれはどういう表情なのだろうか。
彼を1年生の間見てきて、知ったことがひとつある。
いつもぶっきらぼうで、眠そうにしている彼の顔は実は、私達とは全く異なった沢山の表情に彩られているということ。
何色でもない、誰にも似ていないその表情を魅せつけられた私は、それから益々彼に対して興味が尽きなくなっていた。
つまりは─────どんな風に生きてきたら、彼のようになれるのだろう、ということだった。