魅せて、魅せられた彼と彼女は、向かい合えど決して交わらない 作:初代小人
どうしろというのだね、そう問いかけた自分の心は全くもって返事をしない
何はともあれ彼と定期的に接する機会を得た私の心は、ふよふよと、少しばかり浮かれていた。
だけれどそれはあまり長続きはしなかった。
「あんた何考えてんの!?」
放課後、部活終わりに私にそう叫んだのは私の中学以来の親友だ。
「何って…私何かした?」
「なんであんたが図書委員なんかになってんのよ…アイツが図書委員になったからだろうって予想はつくけどさ…あんた本なんて読まないでしょ!」
「読むよ!失礼な!」
「例えば何を読むのよ」
「星の王子さまとか…」
「とか?」
「そんなこと別にいいじゃん!〈親友〉ちゃんこそ、学級委員だなんて、偉いよねぇ〜」
「あれは別にクラスの子達に押し付けられただけで…って、そうじゃなくて!あんたがアイツのこと気に掛けてるのは知ってるけど、そこまでしなくてもいいでしょ!」
「もしかして…勘違いしてる?私別に彼のことを可哀想に思ってるわけじゃないよ?」
「え、そうなの?」
「私はあの人のことが純粋に気になるだけ、それ以上でもそれ以下でもないよ」
そう言って私は家に向かって駆け出した。
別段額面以上の意味を込めずに発した言葉ではあったけれど、それが親友にとってどういう意味に受け取られるかということは流石に理解していた。
ただ、誤解されたなら別に誤解されたままでもいいかなだなんて、そんなことを思っていた。
それから数日経った昼休み、私と彼は図書室で2人で隣に並んで、カウンターの中に座っていた。
窺うように彼の顔を覗くといつも通りの眠たそうな顔。
当然彼から何か言うことも無くて、時折の貸出業務の時も「ん」としか言わない。
焦れったくなった私は至極当然の行動に出た。
「君は好きな本とかあるの?」
「…太宰治」
「例えば?」
「走れメロスとか…」
「どんな所が好きなの?」
「…別に」
そう言って彼はまた無関心そうに意識を中空に漂わせた。
クラスでもなんでも、彼はやることが無い時いつもそうして過ごしている。
何を見ているかは分からないけれど、何かを視ているような、そんな目線を放流している。
それに私も、彼と話せた事に幾ばくか興奮を覚えていた。
彼はどちらかと言うとクールな方だから、走れメロスだなんて、どちらかと言うと暑苦しい本は読まないと思っていたし、そのようなつまらない、他の人と同じような先入観を通して彼を見ていたことに気づいて、まだまだだな、なんて内心でクスリと笑った。
ところが私の笑みは不意に外に漏れ出ていたらしくて、隣にいた彼に怪訝な顔をされてしまった。
「…なんのつもりなんだよ」
今度は彼が口を開いた。
まさか初日から彼の方が何か言ってくれるなんてそれこそ思っていなかった私はさらに笑みを深めた。
「…アンタはこっちをチラチラ見てたから何となく覚えてるけど、別に俺なんかに構わなくても、他の
彼の疑念は尤もなものだった。
クラスの黒板に埋まった名前の何処と私が変わっても多分そんなに支障はなかったと思うし、私はそこでその委員の仕事をまっとうにこなしていただろうけれど。
「別に、私が何処にいてもクラスに影響はないでしょ?ほかの委員の子達も互いに上手く助け合って頑張ると思うよ?」
「それならそれで、なんでわざわざ俺なんだよ、最初は自意識過剰かとか思ったが違ぇだろ。だから聞いてんだよ、何のつもりだよ」
彼は当初の疑念を繰り返した。
「私はどこに居てもクラスに大した影響を与えない、でも君は違う。君という人間は特別変わっていて、私はその理由がどうしても知りたくなった。それだけだよ。」
少し恥ずかしい。こんなこと親友のあの子にすら言ったことは無い。でも今目の前にいて接してるのは当の本人なのだから、きっと私は素直に私自身であるべき、そんな気がした。
んだよ、からかってるだけかよ…
彼はそう言ってまた視線を虚空に戻した。