ゼータと上総   作:空也真朋

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101話 天才と鎧衣親子の冒険 その2

 鎧衣美琴side

 

 ボクの名前は鎧衣美琴。衛士に落ちこぼれた訓練兵。

 二〇七訓練B分隊のみんなとユーコン基地に視察見学に来たんだけど、そこでテロ事件が発生して、さぁ大変。ボク以外のみんながテロリストに捕まっちゃった!

 じつは職業スパイだった父さん、そして天才スゴ腕衛士シロッコさんと、みんなを助けるためにがんばります。

 まずはソ連軍から戦術機を借りるために、ソ連軍管区へ行こう!

 

 

 ユーコン基地 ソ連軍管区近傍

 

 

 ソ連軍管区へ来ました! でも…… 

 

「なんということだ。まさか、ここもやられていようとは。このテロ組織は脅威となるものは事前に徹底的に排除する隙のない計画を立てているようだ」

 

 シロッコさんは戦術機に乗る気まんまんで強化装備で来たけど残念。軍管区内に八機の戦術機ファルコンが付近を威圧するようライフルを構えてに立っています。建物やら金網やらは乱暴に破壊されていて、テロリストに侵入されているのは一目瞭然。

 

 「ですな。さて、ソ連がダメとなるとどうしますか。いえ、その前にここから離れるべきですな。いまだ実行部隊は近くに居るでしょうし」

 

 「そうだね、父さんの言うとおり。でも、どうやってみんなを助けよう……あれ、シロッコさん?」

 

 シロッコさんは動こうとせず、制圧している戦術機や付近をジッと凝視。

 そしておもむろに言いました。

 

 「…………フム。よし、あの戦術機をいただくとしよう」

 

 「本気ですか? テロリスト相手に生身でやりあう事になりますが」

 

 「ヤツラの隙のなさから見て、このままあちこち探しまわろうと、安全に戦力を調達できる場所はないだろう。ならば、ヤツラが仕事をしている鼻先をかすめ取る。それ以外に道はないと思うがね。それともご息女を危険にさらすのは反対かな、鎧衣くん」

 

 「いえ……」

 

 父さんは否定せず、シロッコさん同様征圧されているソ連軍管区を注意深く観察、そして結論を言った。

 

 「たしかにあの戦術機部隊は、留守番は残してあるものの、部隊の大半は機体を降りて施設内で仕事をしているようですな。となればその留守番兵を倒せば、望みの実弾装備した戦術機は手に入ります。しかし問題は……」

 

 「問題は、空になった戦術機を守る留守番、かね?」

 

 「左様です。その留守番兵がユニット内にて監視中です。ユニット内では、ふいを突いて倒すことは出来ません。また、ここらをセンサー観測しているなら、コソコソ動く私らを見落とすことは、まずあり得ないでしょう。ユニット内の衛士を排除する方法などないように思われますが?」

 

 「心配はいらん。方法はある」

 

 「「ええっ!?」」

 

 「だが、さすがに丸腰では無理だ。まずはライフルあたりの調達からはじめよう」

 

 「どこから……ああ、いや、あなたの見ている方向から見当がついてしまいましたが、まさか?」

 

 「そうだ。今ヤツラが仕事をしている現場。あそこは機密エリアの研究棟だな。あそこへ行き、ライフルもヤツラからいただく」

 

 「二度目の本気ですか? 相手は手練れの陸戦兵と思われます。それに対抗できる戦闘スキルがあると?」

 

 「私は生身ではさほどの戦闘力はないがね。私が身に着けているこの強化装備は少々特殊でね。これがあれば、熟練の陸戦兵であろうと問題はないのだよ」

 

 シロッコさんの強化装備は、たしかに普通のよく見る強化装備とはかなり違っているけど、どう特殊なんだろう?

 

 「フム。あなたが言うのなら、それは信じるとしましょう。しかし私たちだけで、プロ陸戦兵並みのテロ集団の仕事現場に訪問ですか……」

 

 父さんは、しばらく考えた後、ボクに言います。

 

 「美琴、どうする。お前が手伝ってもらえるなら勝算はある。もちろん引いてもいいが?」

 

 「ボク、やるよ! 一刻も早くみんなを助けなきゃ」

 

 「…………そうか。ならば斥候をたのむ。訓練兵の成果を見せてくれ」

 

 そう。この中で斥候が務まりそうなのは、ボクだけなのです。

 父さんもスキルはあるけど、体が大きいし、体が小さくて先日まで訓練を受けてたボクが適任なんだよね。

 

 「ただ、研究棟入り口付近も監視対象になっているでしょう。見つかれば36mmの餌食ですな」

 

 総合評価戦技演習を思い出すなぁ。

 今度の失敗は落第じゃなくて本物の(デス)だけど。

 

 そんなわけでボク達は、建物の合間を縫って機密エリア内に侵入。

 こういったミッションは総合評価戦技演習で経験済みのボクが、先行してルートを選び、研究棟の入り口を目ざして進みます。

 だけど、あと少しで研究棟入り口にたどり着こうかという時、ふいにシロッコさんが叫びました。

 

 「見つかった! 走れ!」

 

 「え?どうして、そんなことがわかる……うわっ」

 

 父さんはボクの腕をすごい力で引っ張り、入り口の中へ転がりました。

 

 ガガガガガガガッ ガガガガガッ

 

 遅れて耳をつんざくような機銃の掃射音。

 この銃弾の中じゃ、生身の人間なんて生きられっこない!

 

 「父さん、シロッコさんが……」

 

 「動揺をするな。こういった潜入では、仲間の死も当然のことと受け止め、先に進まねばならん。しかしな……」

 

 「しかし……なに?」

 

 「彼と長くつき合ったせいだろうな。どうにも私にはシロッコ氏がここで死ぬとは思えんのだ。そう思わせるだけの奇跡を何度も見てきたからな」

 

 父さんの言葉通り、やがて後れて無事なシロッコさんが入り口から入ってきました。

 どうして生きているの!? ありえないんですけど!

 

 「ふうっ。さすがに36mmの雨の中を走り回ってはかなわんな。さて、しばらくは君の諜報員としてのスキルに頼ってもらっていいかな?」

 

 「ええ。こういったうす暗い施設内こそ私のスキルの生きる場。ですが早めに武器を調達せねば危ういでしょう。先ほどの監視機体から、中の仕事連中へ私たちが侵入したことは連絡が入ったはずです。さすがに”これ”だけでは、連中の武装に対抗しようがありません」

 

 父さんはP88拳銃を手元でヒラヒラさせた。

 さすが本職スパイ。そんなものを持ち込んでいたんだね。

 

 「―――貸したまえ。君達はさがって」

 

 と、シロッコさんは父さんから拳銃をとりました。

 そして研究棟内部に続く扉の前に立ち、構えます。

 

 「襲撃の警戒? でも扉の横で待つのがセオリーじゃ?」

 

 「……いや、彼の流儀でやらせてみよう。美琴、こちらに来なさい」

 

 やがて……

 

 「バアアンッ」と荒々しく扉が開け放たれ、中から三人のライフルを構えた武装兵が飛び出してきた!

 

 パーン パーン パーン

 

 「え?」

 

 あまりのことに呆気にとられちゃいました。

 シロッコさんは扉が開いた瞬間、構えた拳銃を三発だけ放って突撃テロリストを倒したのです。

 見ると、テロリストの額にはヘルメットをさけて眉間に一発ずつ。

 

 「うそ……何でこんな事が? こんなの『襲撃される』って予知でもしなきゃ不可能なのに」

 

 「ならば、したんだろう。彼の異能にいちいち驚いてはいられんよ」

 

 ボクの驚きをよそに、シロッコさんは倒れたテロリストの腕からライフルを拾います。

 

 「さてと。奥に進むまでもなく、めでたく無傷のライフルが手にはいったな。これで外のファルコンを奪いに行けるな……む?」

 

 ふいにシロッコさんは、扉の向こうの奥へ続く廊下の先を遠い目で見ます。

 

 「どうしました? また襲撃者が来ますか」

 

 「……何者だ? それに共振だと? まさか、この先に真のニュータイプが居るというのか?」

 

 突然シロッコさんはわけのわからない事をつぶやきます。

 

 「どうしたんです、シロッコさん……あれ?」

 

 何となく。何となくだけど、シロッコさんが感じてるものをボクも感じたような気になった。

 この感覚は、まるで宇宙?

 

 「どうした、美琴。何かあったのか?」

 

 「うん……この先に不思議な人がいる気がするんだ。その……うまく言えないけど、意識だけ飛ばして話しかけてくるような。あと、まるで宇宙の中に意識だけで居るような気分なんだ」

 

 ボクの言葉にシロッコさんはニヤリ。

 

 「ほう。君はなかなか良い資質をもっているな。ニュータイプを感じたか。そうか、ここはソ連機密の研究棟。あの紅の姉妹(スカーレット・ツイン)が生まれた場所か。ならば納得だ」

 

 「また【ニュータイプ】ですか。あまり踏み込む気はなかったのですが、そろそろ、それが何なのかご教授していただきたいところですな」

 

 「フッ知りたいなら、この先にいる”彼女”に会うといい。言葉で説明するよりずっとよく理解できるはずだ。少しだけ寄り道するとしよう」

 

 彼女? どうして女性だとわかるんだろう。

 

 「三たび本気ですか? この先はソ連の機密を扱うエリア。踏み込めばソ連に狙われることになりますよ」

 

 「だが、今はすべてキリスト教恭順派どもの仕業に出来る。この不幸中に降ってわいた千載一遇のソ連の機密を知る好機。スパイとしての君はどう思うのかね?」

 

 「い、いやお嬢さん方の救助はどうするのです。それに、この先は武装グループの本隊も居ますが」

 

 「なに、連中が彼女達を人質にするなら、しばらくは命の心配はあるまい。それに戦術機を奪う最中に、本隊が出て来たら挟み撃ちになってしまう。本隊は排除しておいた方が安全というものだ」

 

 そう言ってシロッコさんはライフルを構えて扉をぬけ、奥へと進んでいきます。

 

 「ふう。かつてない機密を知る機会に恵まれたことを喜ぶべきか、それとも彼女達の危機の中でそれが来たことを悲しむべきか。ともかく策はシロッコ氏の異能頼りだ。彼が行くというならば、つき合うしかない。美琴、悪いな」

 

 「うん。でもこれが終わったら、ちゃんとみんなを助けに行こう」

 

 ボクたちもライフルを拾いあげ、シロッコさんに続くのだった。

 

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