キリスト教恭順派・ソビエト機密エリア襲撃部隊side
このソビエト機密エリア襲撃部隊の指揮をとるのは、キリスト教恭順派・実行部隊ナンバーワンのクリストファー少佐。
この機密エリアは彼らの最大の目標。ゆえに基地制圧がほぼ完全になったので、クリストファーは戦術機部隊の指揮をヤザンという新人にまかせ、この場所の襲撃指揮をとっているのだった。
事前に被支配民族の下級職員を内通者にしていたので、たやすく警備部隊を全滅させ通信を遮断し、この機密エリアを陸の孤島と化することに成功した。
あとは中の研究資料を漁ってお宝を持ち帰るだけ。
そのはずだったのだが……
ソ連軍管区機密エリア研究棟 第一実験室
「チッ、珍客をむかえに行った連中が出やがらねぇ。ってことは、やられちまったようだな」
クリストファー少佐は忌々し気にインカムをはずした。彼とその部隊は、現在、第一実験室にて研究資料を漁っている最中だった。
その途中、外の監視員から侵入者を入れてしまった報告を受け、すぐさま排除要員を送った。
だが、その連絡が途絶えた。思わぬ厄介な邪魔者の登場に、クリストファーは歯噛みする。
「クリストファー少佐。では今度は我々が」
「いいや、相手は手練れだ。俺みずから行く。二人ほどついて来い。あとはこのまま資料を漁っておけ」
「はいっ、お気をつけて」
愛用のライフルを握り、謎の侵入者を迎撃におもむかんとしたが、突然部下の一人が大声をあげた。
「少佐! お待ちください。ここ! この壁は二重壁になっています。向こう側に隠し部屋があります!」
「なにィ? …チッ、となると、ここにあった資料はみんなダミーか! ソ連の秘密主義者め、よけいな手間をかけさせやがって」
壁の一部が開いて入り口になり、その奥には培養層のようなものがいくつか並んでいる。
そしてその横の寝台には女性が横たわっている。生気のなさから死体だろう。
「培養層か。中身は何だ?」
「中は……人間? 人間が中に居ます!」
「人間だと!? まさか、第三計画の遺品か? クソッ、さっきの博士らしい奴を生かしてれば、うたわせてやったってのに!」
「やむを得ません。どこかへ連絡をとっていたのですから。ですが本国の研究者に見せれば大喜びでしょう」
「ともかく、ここにある重要そうなのはすべて持っていけ。培養層の中身はもちろん死体もだ。おそらくは貴重な検体だ」
「人間の体を持っていくのは困難ですね。ここまで大荷物となると撤収するのも一苦労です」
「ウッダーの手下どもでも手伝いに呼ぶか。Ζガンダムに第三計画の人形。あとはパプティマス・シロッコって野郎をさらえば、回収は完了だ」
「パプティマス・シロッコ? 大東亜連合の? それは当初の予定になかったはずですが」
「計画当初には存在すら知らなかったからな。だがアイツは人形をも上回るスペック持ちでZ関係者だ。奴をうたわせれば、噂のZ技術とやらも少しは霧が晴れるだろうよ」
「了解いたしました。まずは、ここの引っ越しからですね」
「ああ。手早く頼むぜ。まったくヤザンの野郎が戦術機部隊を率いてくれたんで楽になったかと思いきや、仕事は増える一方だな。そいじゃ、俺はお邪魔虫退治といくか」
クリストファーは再びライフルをかまえ、部下二人と珍客の迎撃に向かわんと実験室を出て廊下を歩む。
だが先ほど出てきたばかりの部屋から「ゴキリ」とかすかな音が聞こえ、足を止めた。
それは聞き覚えのある、人間の頸椎をへし折る音。
まさか、さっきの隠し部屋には生きた人間もいたのか?
――「クリスト……ガッ!」
―――!!?
「少佐!」
「ああ、はっきり聞こえた。チッ、中に番人がいやがったか!」
研究室のドア横にもどり、身を低くしてドアを一気に開けて中に飛びこむ。
見ると、ソ連の将校らしき男が部下の首を異様な方向へねじっている最中だった。
あちこちにも部下が倒れている姿が見える。
この短時間で全滅? おそろしい奴だ。
「テメェ! よくも俺の部下どもを!」
ガガガガガガガッ ガガガガガガガッ
部下二人とともに、部下の死体に穴が開くのもかまわず、広域に乱射。
将校はすばやく秘密部屋の向こうへと逃げていく。
「出てきやがれ! よくも俺の部下どもを殺ってくれたな!」
―――「人の部屋に勝手にあがりこむ輩にお仕置きをしただけだ。それより、この部屋でさっきのような乱射はご勘弁願いたい。ここには大事な資料と、何より彼女達が眠っているのでな」
このかくし部屋の研究物や資料は貴重だ。
できるならここで銃撃戦はひかえたいと、クリストファー達は踏みとどまる。
「出てこい! でなきゃこの部屋ごと爆破してやるぜ」
「出来るかな? 君達のお宝も爆破されることになるが」
「チッ……」
クリストファーは考える。
この野郎は、俺の部下どもを全滅させるとんでもねぇスゴ腕だ。
かくし部屋の資料を惜しんで損切り出来なきゃ、こちらも危ねぇ。
「よしっ、テメェら。資料に構うな。まずは野郎を排除……なにっ!?」
ガガガガガガガッ ガガガガガガガッ
突如、後背の入り口からフルオートの乱射が来た!
(糞っ、向こうの侵入者を忘れてた!)
部下二人はまともに喰らって倒れたが、クリストファーはどうにか頑丈な机の裏に逃げることが出来た。そして一瞬、襲撃者どもの顔を確認することも出来た。それはターゲットのひとつの……
「テメェは……パプティマス・シロッコ!?」
部屋の入口にて他二人とライフルを乱射し構えている男は、まさにそれだった。
「おや、私を知っているのかね。だが、あまり光栄ではないな」
次にねらうお宝が向こうからやって来た。が、部下が全滅したこの状況では嬉しさも半減。
さらう暇も手段もありはしない。ならば万一に賭けて懐柔か。
「どうだ、俺と来ねぇか? テメェを高く買ってくれる有力者に紹介してやるぜ」
「バカかね、君は。この状況でテロリストにつくほど、私が愚かだとでも?」
「だよな。だったら仕方ねぇ。どこまでも、お宝がだい無しになる日だぜ……うっ」
ギリリッ
首の圧迫とともに、背後に猛獣のような気配をクリストファーは感じた。
――「命もだい無しだな。いけないな。私を相手に私から目を離すなんて。『主敵から目を逸らすな』と学ばなかったか?」
警戒を怠ったつもりはなかった。
それでも奴に背後をとられ、あまつさえ致命的にまで接近された。
(糞っ、なんで研究所なんかに、ここまでデキる奴がいるんだよ!!)
――「その野獣のような目。嫌いではないが、この部屋を見られたからには生かしておけない」
ゴキリッ
♠♢♣♡♠♢♣♡
鎧衣美琴side
テロリストたちはみんな倒れたので、ボクたちは三人そろってソ連の将校さんに挨拶。
でも機密エリアの研究所なんかに入っちゃったこと、どう説明しよう。
この将校さん、そこらに倒れているテロリストをみんなやっつけちゃった人みたいだし、恐いよ。
「ご協力感謝します。私はイジェー・サンダーク。ここに所属するソビエト軍中尉です。ですが、あなた方は? どうしてこの機密エリアの研究棟に?」
「我々は大東亜連合エゥーゴの者です。先の演習の行為について説明をもとめに来たのですが、途中テロリストに襲われましてな。あちこち逃げ回りライフルを奪ったりしている間に、ここに来てしまったという訳です」
さすが父さん。機密エリアなんかに入っちゃった理由を無理なく説明してる。
「そうですか。それは大変でしたね。ですが、あなた方が来ていただいたお陰で、大切な資料や研究を守ることが出来ました。ふかく感謝いたします」
あれ? だけどサンダークさん、何で倒したテロリストからライフル拾っているの?
「ガチャリ」流れるような動作で発砲状態にして?
「ふたりとも下がれ! ……いや、私の後ろに!」
シロッコさんは叫ぶ。
父さんはスゴい勢いで、ボクに覆いかぶさるように抱きかかえる!?
ガガガガガガッ ガガガガガガッ
サンダークさんが掃射した!?
しかも速い! この人、歴戦か!!
シロッコさんは強化装備が守っていない頭もしっかり撃たれてる!
「恩人だろうと、この部屋を見られたからには生かしておけない。パプティマス・シロッコ。君の能力は惜しいが、容赦はない。みなキリスト教恭順派の憐れな犠牲者となりたまえ」
ガガガガガガガガガガガガガガガッ……
なんだか毎回人が死んだり殺されたりの殺伐とした話になっちゃったなぁ。
痛快マブラヴ二次創作だった『ゼータと上総』はどこに?