ゼータと上総   作:空也真朋

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106話 フェアバンクス方面の罠

 ユウヤside 

 

 俺とタリサ、VG、ステラは自機を駆ってフェアバンクス基地に応援を呼びに向かった。だがユーコン基地端の第四区画演習場にて思わぬ強敵が待ち受けていた。

 それは12機のMiG29OVT(ファルクラム)。東欧連合の最新機であり、採用されている機体ではラプターに準ずる性能を有している。くそっ、こいつはキビしい!

 

 『ファルクラムですって!? まさか東欧連合もやられているの? マズイわ。第11施設警備部のMiG29ならどうにか振り切れるかもしれないけど、丸腰でファルクラムを相手だなんて!』

 

 『ちいっ、おまけに機動も連携も並みじゃねぇ。おいユウヤ、もしかしてハメられたか? あいつら、とても丸腰で戦え(やれ)るような相手じゃねぇぜ』

 

 『ったく、どうしてテロリストに、こうも戦術機の達者な人材がいるんだよ。正規兵になってBETAと戦えよ!』

 

 とにかく回避に告ぐ回避。離脱も不可能な状況で逃げ回っていたが、やがてステラが限界に達した。ついに被弾したのだ。

 

 ドガンッ

 

 「アルゴス4! ステラ! 無事か?」

 

 『ア……アルゴス4、跳躍ユニット大破。作戦継続不可能。戦域より離脱します』

 

 ――『逃がすかよ! 命は置いていけ!』

 

 オープンチャンネル? これは敵機からの声?

 

 「いったい何のつもりだ……まずい! ステラ!」

 

 フラフラと危うい飛行で退()がろうとするステラ機を、敵の一機が猛烈な勢いでサブマシンガンを乱射しながら追撃する。

 

 ガガガガガガガッ

 

 『ステラ! やらせるかぁ!!』

 

 そこに盾となり割って入ったのはVGのACTV(アクティブ)。ステラに向けられたマシンガンの掃射を一身に受け止めた。

 

 『くううあああああっ!』

 

 「VG! なんてことを!」

 

 『ア……アルゴス3……大破。ちっと……カッコつけすぎたな……』

 

 ステラとVGの二機はからみ合いながら墜落していく。どうか無事でいてくれ。

 

 『クッソォォォ友釣りか! アイツ、これをやるためにオープンチャンネルで声を流しやがったなぁ!』

 

 「タリサ、今は怒りをおさえておけ。綱渡りの機動をしくじったら最後だ」

 

 どうする? 連中の機動は完全にエース級のそれ。

 さらに人数的にもキビしくなった今、とても抜けやしない。

 

 「アルゴス02、限界だ。いったん退()がるぞ」

 

 『冗談じゃねぇ! ステラとVGがやられて引き下がれるかよ! うわっ!』

 

 「タリサッ! くそっ、遅かったか?」

 

 俺やタリサがステラとVGの撃墜に心かき乱されてる間にもアイツらは包囲をせばめてきた。

 タリサはかなり接近された。ヤバイな。

 

 「くっ、俺にも来たか」

 

 ヤツはおそらく隊長機でエース級の腕を持っている。

 

 『フハハ、そいつがXFJ計画の試作か! 機動だけで俺達の海ヘビ包囲をしのぐなんざ大したモノを作ったな。俺が沈めてやる!』

 

 クッ、またオープンチャンネルか。やけに粗野な男の声だが、戦い方も苛烈。

 ヤツはこの俺をただ一機で追い詰めつつあり、残りの全機がタリサを包囲しているのでタリサも陥落寸前。

 

 くそっ、銃が欲しい。一瞬でも牽制出来れば抜け出せるのに……

 

 

 ガガガガガガガッ ガガガガガガガッ

 

 

 「え?」

 

 『なにっ!』

 

 突如、地上のあさっての方向から掃射が飛んできた。

 それは相手機を狙ったものであり、それによって俺はヤツを引き離せた。

 見るとそれはタリサも同様で、包囲から脱出して距離をとりつつある。

 あの援護は、いったい誰が……?

 

 ――『ユウヤ、コイツは貸しだ。あとは自分で何とかしな!』

 

 その声はレオン! 

 

 下を見ると四機のラプターが地上を疾走していき、はるかフェアバンクス基地をめざして行く。

 

 『くそっ、レーダーに映らなかったぞ。いったい何故……そうか、ステルスか! やられたアメリカめ!』

 

 ヤツラは俺達の包囲をとき、ラプターを目がけて追跡する。だがラプターは加速も他の戦術機を凌駕している。相手が出来るのはガンダムくらいだ。

 

 「それにしても、追跡されるのを覚悟で牽制してくれたのかよ。カッコつけやがって」

 

 いかにスピードで負けるはずはないとしても、気づかれぬまま通った方が良かったろうに。

 これは本当に借りになったなレオン、ジェリド中尉。

 

 『ユウヤ、アメリカに完全にやられたな。アタシたちを囮にしやがって』

 

 「そう言うな。誰がフェアバンクス基地に応援を呼びに行ってもいいじゃねぇか。ともかく時間も出来たことだし、VGとステラの救助に向かおう」

 

 『そうだな。撃墜のあとは追撃をうけなかったし、無事だとは思うが……おっ、味方のコールサイン? ファング1ってことはタカムラ中尉?』

 

 味方機の接近を感知した先には、唯依の乗っている黄色の武御雷が飛行してきていた。

 唯依も、あの四機をしのいで無事だったか。どうやら形勢はこちらに傾きつつあるようだ。

 

 『こちらホワイトファング1。アルゴス1、アルゴス2。状況を報告せよ。アルゴス3と4はどうした?』

 

 「テロリストに奪取された戦術機に撃墜され、落下しました。なお敵テロリストは、通過に成功したアメリカのラプターを追っていきました」

 

 『そうか。どうやらフェアバンクス基地への応援要請は成りそうだな。よし、ならばこちらは、ここで態勢を立て直そう。敵からサブマシンガンを二丁奪取した。私が救護している間、両者はこれで警戒しててくれ』

 

 『敵から武器を奪取!? まさか撃墜したのか!? 丸腰で四機を!?』

 

 『マナンダル少尉、上官の口のきき方には気をつけろ。ただの未熟者撃ち(ターキーシュート)だ。スコアには入らん。それよりさっさと救護にかかるぞ』

 

 降下しステラとVGをユニットから出してみると、思ったより軽傷ではあった。ただし、やはり重傷の範囲であって、これ以上の活動は不可能なレベル。

 移送はステラは唯依が、VGはタリサが機体のサブシートで運ぶこととなった。

 

 『よし、これより移動を開始しセーフティポイントを目指す。マナンダル少尉、接敵してもジアコーザ少尉を抱えているうちは交戦を避け、ブリッジス少尉にまかせろ』

 

 『了解。とにかくあとは時間を稼ぐだけだな』

 

 と、その時だ。いきなり全員の通信から緊急アラートが鳴り出した。

 

 『なんだ? 緊急アラート? このコードは……コード991?』

 

 ザワッと背筋が冷える。

 コード991。それはBETA警報。この警報が出された時にはすべての活動を中止し、対BETA警戒へと移行しなければならない。

 

 『ハッ、どうせヤツラの欺瞞だろ。だいいち今は通信施設が封鎖されてて管制さえ受けれねぇじゃねぇか』

 

 「いや、コード991のアラートは通常のとは違う。どのような状況下でも優先して近隣機体に通されるよう設計されているんだ。しかしアラスカの真ん中でBETAとはどういう事だ?」

 

 『今たしかめるすべはない。相変わらずの広域電波障害だ。ともかくジアコーザ少尉とブレーメ少尉をセーフティポイントに送ったら行動開始だ』

 

 後に分かったことだが、このコード991は本物だった。

 そして、このアラスカの危機の引き金にもなったのだった。

 

 

 

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