ビュオオオオオオオッ
サイコウェーウの激しい嵐の吹きすさぶ中、オレはゼータを駆り海岸線に沿って北上してゆく。
せまるアンノウンを海上で迎え撃つというプランは捨てた。
この嵐の中、空中でバランスをとりながら戦うのは難易度高スギだし、しかも篁さんまで抱えているのだ。まだしも足場のある場所で迎え撃つ方がいい。
「目標距離五十キロまで接近。間もなく戦闘領域に到達。着地してここで迎え撃つ。いいね?」
「ええ。サイコフレームのおかげでハイメガランチャーも撃てます。有効射程に入ったらぶちかましてやります!」
元より戦闘機動のとれない一発勝負。
すべてをハイメガランチャーの炎に変えて敵を貫くのみ!
「上総のバイタル安定。精神は緊張で多少の隆起はあるものの規定値内……」
「どうしたんです。こんな時にわたくしのバイタルなんか測って」
「いや、サイコフレームがおさまらないのが気になってね。上総の感情の爆発に反応してサイコフレームは異常活性した。だから上総が落ち着いた今はおさまってもいいのに、活性化したまま止まらないんだ」
「外敵の接近に反応してるんじゃありません? 向こうは巨大なサイコミュの塊みたいなものですし」
「外部からの思念波に反応するんじゃジャックされる危険性があるよ。ゼータの最終話はそれでジ・Oに勝ったんだし。アレをこっちがやられちゃたまんないから、外部からの思念波は受け付けないよう対策してる」
すごい有能だな。晴郎だった頃はこんなデキる奴だとは知らなかったぞ。
「いいじゃないですか。おかげでハイメガランチャーが撃てます。最終決戦では計算できない奇跡が起こるものですわ」
「アニメと現実をいっしょにされてもなぁ。うーむ、いったい何がこんなにもサイコフレームをざわつかせているのか。謎は深まるばかり」
「それは勝ってから考えなさい。今やることは敵を倒す。それだけです」
「……そうだね。疑問を検証ファイルに入れて置いておこう。全センサーをアンノウンの位置特定と分析に集中」
やっと戦闘モードに入った。やれやれだぜ。
「射程に入り次第、全サイコフレームの余剰パワーをハイメガランチャーの火力にまわす。準備はいい?」
「いつでもよくてよ。来なさい、サイコミュのバケモノ!」
ヤツがせまる南西の空が禍々しい藍色に染まってゆく。
あれは怨念を吸ったサイコフレームの色なのか。
「距離五十にまで接近。新型BETAの映像を出せるよ。これがラスボスだ」
中央モニターに大きく映し出されたそれ。
海面を半身出して泳いでくる巨大なソレを見た時、少なからず驚いた。
ビア樽のよぷな巨大なボディと日本の巨腕。頭部はモノアイのみのどこかで見たデザイン。
そのどこかで見たようなデザインが、肉の塊で構成されて向かって来ているのだ。
「あれはジ・O? どうしてこのデザインに?」
「サイコミュの研究課程で、その形状も模倣したんだろうね。まったくゼータのラスボスにふさわしいよ」
「でもあれじゃ海を泳ぐのには不向きですわね。なのにどうしてあんなに高速なのでしょう?」
「神様の情報じゃ、保有している全G元素をサイコフレームにしているらしい。だからとにかくパワーが無限大なんだよ。それを推進力にしているんだ」
「攻撃法の予測は?」
「見た感じ武装っぽいのは見当たらないな。ジ・Oが転移してきた時、ビームライフルだけは回収しといたのが良かったのかもしれない」
「ならデカいだけの的にすぎませんわね。上陸させないで仕留めます。篁さんのためにも!」
キュピィィィィィィィィィィィィィンン
サイコミュやサイコフレームがビームの威力を増大させる不思議現象を起こすのは原作でもお馴染み。
なのでこの異常起動したサイコフレームのパワーを全開放。
それをハイメガランチャーの一発に集中させ放つ!
「いきますわよ、篁さん。おかっちませええええッ」
隣の篁さんのせいか、山百合の掛け声が自然に出た。
「う、うわッ! 出力がさらにハネ上がった!? 制御が……!」
ブオオオオオオンッ
ハイメガランチャーの光条は一直線に巨大ジ・Oもどきに直撃。
巨大な水蒸気爆発を巻き起こし、視界を白一色に染め上げる。
「ヤバイ! 高波が出来た!」
「回避します!」
水蒸気爆発で起こった高波を、バックブースターをかけて後方にさがり、ウェイブライダーには変形して空中に逃れた。
モニターには火山噴火でもおこったように白い煙がもうもうと吹き荒れている。
「ハロ、ジ・オーBETAはどうなりました?」
「霧のノイズを除去しているから待って………そんな」
モニターから霧を除去したその向こう。
そこには巨大なジ・Oが撃つ前と変わらぬ姿で、海にたたずんでいた。
モノアイは変わらず赤く光り、真っ直ぐにこちらを見ている。
「嘘……山をも消滅させられるほどののビーム威力ですわよ」
「これ一発で終わるとは思ってなかったけど、まさか無傷とはね。ゼータの武装じゃヤツを倒す手段はないってことだ」
「でも、向こうにもこちらを攻撃する武装はないのでしょう? こうなったらとれる限りのデータを取って、博士やシロッコに対抗策を考えてもらいましょう」
「……いや、油断しないで。いつでも回避機動をとれるようにして」
「え?」
ブゥゥゥオオオン
巨大な光の腕が伸びてきた!
こちらを掴もうとするそれを間一髪、回避する。
「まさか隠し腕!? そこまでジ・O!?」
「それ以上だよ。けっこう、いっぱいあるみたいだ」
伸びてくる腕はさらに増えてゆき、次々に上ってこちらを掴もうとする。
しかしこちらは幾度もレーザーを回避してきたニュータイプだ。
それより遅い腕なんかに捕まえられるはずもない。
「オーホッホ、スローすぎてあくびが出ちゃいますわ。ああ、眠い眠い♪」
「だったら早く離脱して。隣の彼女が永遠に眠っちゃう前に」
「え? …………篁さん!?」
言われて隣に目をやると、ヘルメットごしに見ても篁さんの顔色は明らかに悪くなっている!
危険な状態だということは一目瞭然だ!
「言ったよね。今の篁さんに戦闘機動は耐えられないって。バイタルが低下する一方だ」
「で、でも離脱するのにスピードを上げたら、すごいGがかかって!」
「サイコフレームの発生粒子をすべて耐G機能にあてる。横浜ハイヴでやった計測データを使えば、発生Gをほとんど消して最高速が出せるはずだ」
「ならば行きます! 急速離脱!!」
ガクンッ
「なっ!? コントロールが!!?」
フットレバー全開で離脱しようとした矢先、いきなり機体すべての機能が停止した。
操作はまるで受け付けず、かといって墜落するでもない。
まるで無重力空間に投げ出されたように、ただ空中を漂う奇妙な状態になったのだ。
「しまった。空はヤツの領域だった。この藍色の空は、世界中のハイヴのG元素をすべてサイコフレームにしてまき散らしたものだったんだ。それが一斉にゼータの拘束に動いた」
「えっ!? じゃあ、どうなりますの?」
「…………捕まってしまったらオシマイだ。なるようにしかならない」
ウェイブライダーは為すすべなく伸びてくる無数の光の腕に掴まれた。
そしてそのまま引き寄せられてゆくのであった。