「う…………」
深いまどろみから目を覚ました。
そこはゼータのコクピットで、オレはシートに座っている。
そんなオレを心配そうに見ていたのは、いつものハロと――
「篁さん……」
「お久しぶりです。山城さん」
ノーマルスーツを着た篁さんだった。
頭を振ってまだボンヤリする意識をむりやり目覚めさせる。
なにか大切な約束をした――夢を見たような気がするけど、思いだせない。
いや、夢なんてどうでもいいか。
大事なのは現実の出来事。
とりわけ、こんな状況で目覚めた篁さんのことは一大事だ。
「おはよう、篁さん。目を覚ましたのですね」
「ええ。そこのロボットに一通りのことを聞かせてもらいました。しかし……いつも山城さんといっしょに居るこのロボットが、こんなにも人のように自由に話せるとは。どこの技術なんです?」
「その話はできませんわ。それよりゼータはどうなりました?」
これにはハロが答えた。
「捕まったよ。ウェイブライダー形態でジ・オーBETAのボディに呑みまれた途端、バイオセンサーでも防ぎきれないサイコプレッシャーがきて上総はやられたんだ。今は白銀が放ってくれたフィンファンネルのIフィールドで守られている。そのおかげで二人は目を覚ましすことが出来たんだ」
その言葉で全周囲モニターの向こうを見てみると、たしかにフィンファンネルが周りに飛んでいて、Iフィールドを周りに張ってくれている。
「で、νガンダムだけど、ボクらに代わって追いかけ回されているみたいだ。ファンネルを操作しながら逃げるんじゃ、分が悪いよ」
「そう……白銀、ありがとう。で、ここから抜けられます?」
「難しいな。リバースかけてやっと踏みとどまっているけど、ジリジリ飲み込まれている。これ以上のパワーを出して脱出するには、バイオセンサーやサイコフレームを起動しないと」
「まかされました。やりましょう」
コクピットレバーを掴み、思念を静かに高めてバイオセンサーの機動を促す。
キュピィィィンン――
――!?
違和感を感じた。
自分のニュータイプ思念以外のそれを感じたのだ。それもすぐ近くに。
それはオレの思念と激しく共鳴し合い、信じられないほど巨大になり、バイオセンサーのみならずコクピットまわりのサイコフレームをも激しく起動させた。
「篁……さん…………?」
そのもう一つのニュータイプ思念の元は隣だった。
篁さんの思念がオレのと共鳴して、強大な一つの思念へと膨れ上がる。
「篁さんが………ニュータイプに?」
そうだ、篁さんはニュータイプになったんだ。
以前オレとキスした時に感染して。
病棟崩壊の時に、飛躍的に能力が向上して――
って、どうしてこんなことを知っているんだ?
なんとなく何かを思い出しそうになるものの、まったく思いだせない。
だけど今は、思いだせない記憶なんかさぐっている場合じゃない。
「篁さん、いっしょレバーを。あなたも戦ってください」
そうだ。今ゼータはジ・オーBETAに飲み込まれかけているけど、それは敵の懐に入ったということでもある。
そしてヤツは白銀のνガンダムを追いかけ回すことに夢中で、こちらに意識が向いていない。
となれば、ここでサイコフレームを最高に反応させれば、ヤツの心臓にも手が届く!
今ここが、人類勝利最大の
「わかりました、山城さん。共に戦わせてください」
篁さんはノーマルスーツのメットを取って、その手をレバーを握るオレの手に添えた。
篁さんの美しくて可愛い顔がすぐ横に来て、ちょっとドキドキ。
そうだ。篁さんはオレとキスしてニュータイプになったんだった。
ならば――
――チュウッ
篁さんにキスをした。
いやこれは決して、可愛さとトキメキに負けた衝動的エッチな犯罪行為なんかじゃなくって!(誰に言い訳してんだオレ)
カアアアアアアッ
コクピットの外が激しく青い光を放った。
それはゼータ自身が発光するサイコフレームの輝き。
そう、篁さんが感染したあの時と同じ状況を再現することで、さらなるサイコフレームのパワー増大を狙ったのだ!
その威力はやはり最強。プレッシャーだけでゼータを拘束していたジ・Oモドキの内壁を崩してゆく。
「やった! 今なら脱出できるよ!」
「いいえ。ハロ、それは違いますわ。今ゼータはちょうど巡行形態のウェイブライダー。ならば!」
「Zガンダム原作のまま! ウェイブライダー突撃とまいりましょう!」
「ええ!? げ、原作ってなに、山城さん!」
ヴオオオオオオオン
信じられない出力!
信じられない輝き!
ウェイブライダーは目の前の壁を突き破りながら奥へ奥へと進んでゆく。
やがて………
「見えた! あれが………」
ひと際硬い壁を突き破った先には、だだっ広い空間があった。
そこの中央には、前に見た頭脳級を巨大にしたような物体が、カプセルに入って鎮座している。
あれこそが――
「あれがBETAの根源。BETAすべてを統括する重脳級!!」
「人類が夢見た最大の宿敵がここに!」
その部屋の床一面には触手のようなものが幾重にも折り重なって据えられていた。
そいつらはウェイブライダーの侵入に反応して、一斉にスルドイ鞭のような動きで襲い掛かってくる。
「ボスを守る防御装置ですね。ですがその程度で!」
無数の襲い来る触手でも、サイコフレームで強化されまくったウェイブライダー突撃は止められない。
青い輝きに触れた触手はいとも簡単に蒸発してゆく。
それでも幾重にも幾重にもウェイブライダーにからみつき、進行をわずかながら遅らせる。
が、それでも限界はやってくる。
ついには、束ねられ巨大な蛇のようになって襲い掛かってきた最後の触手をも蒸発させると、目がけた重脳級カプセルの目前へと到達した。
篁さんといっしょに握られたレバーに最後の力が加わる。
「見て――ますか? これが約束の人類勝利の時です!」
誰に言ったんだろう?
「あまたの英霊よ! 今待ち望んだ時が来ました。どうか安らかに!」
一瞬よぎった疑問は、篁さんの声にかき消された。
ウェイブライダーの赤い先端がカプセルを砕くのが見えた。
そしてそのまま中の巨大な脳ミソを引き潰し――
「やった――」
ドガンッ!!!!
――!????
重脳級の本体を破壊したと思った瞬間、ものすごい衝撃が来た。
「ピーポポポッ!!」
「ハロ!?」
膝脇にいるハロが、いきなり叫びのような電子音を出して――
ゴトッ
そのまま床に落ちて転がった。
「ど、どうしたのです!?」
ハロを拾い上げようとするも、警告音を発するゼータのシステムメッセージを見て「ギョッ」とした。
「機体に……重大な損傷? いったいどうして……ああっ!?」
グゴゴゴゴゴゴゴゴ………
重脳級の本体はたしかに破壊したはず。
なのに周囲の肉の壁はいまだ活動を続け、修復をはじめる。
しかも深刻な機体損傷を受けて動けないゼータを、そのまま取り込もうとする。
いったいどうして!?
なぜ重脳級の本体を破壊したのに、活動を止めないんだ!!!