答えは明星作戦です!
ですが、武ちゃんの出番はものすごく遅れそうです。(というか、出せるのか?)
『エゥーゴ総員兵装自由。目標前面BETA群。撃てェ!』
総長ブレックスの合図のもと、オレら独立武装連隊エゥーゴは、一斉に構えた武器を眼前より向かってくるBETA群相手に斉射した。もちろんオレもZガンダムでビームライフルを撃ちまくり、倒しにくい大型種を一手に引き受けている。
なにしろこのエゥーゴ。戦術機(ではなく実はモビルスーツ)に乗っているのはオレ一人で、他は装甲車両やらバズーカやらライフルやら。正規の軍隊ならこんな作戦行動が取りにくい編成には絶対しない。
つまり今オレが属しているエゥーゴは正規の軍隊ではなく、民兵が集まった傭兵団なのだ。
オレとハロが日本を出てから約一年。オレ達は東南アジアの対BETA最前線マレーシアにいる。
タイランド湾の天然の要害を利用したソンクラーとサトゥーンを結ぶ大東亜連合の絶対防衛線が仕事場だ。
エゥーゴは民兵の寄り集まった傭兵団にも関わらず、最近は最前線の一角を任される。まぁ、このZガンダムの戦闘力あってのものだが。
日本を出てからオレ達は東南アジアにきて東南アジア諸国の多国籍軍・大東亜連合に参加した。
ここは国籍も宗教も雑多な人間が寄り集まり、国を無くしながらも名分だけはある国軍や、非正規の武装集団や、地元の正規軍やらがごちゃ混ぜで、上の人間が苦労してやっと部隊を編成しているという始末だ。
またそういった背景はなくとも、BETAと戦う意思のある人間には武器を貸し与えロクな身分確認もせずに民兵として雇い入れる。そうして食い詰めた文無しに、死ぬまでメシの面倒を見てくれる人道あふれるシステムというものもあって、オレはそれに参加した。
そしてこの人道システム。当然武器の持ち込みも歓迎される。まぁ、ライフルやら機関銃やらを想定したものなのだが、オレはZガンダムを持ち込んだ。
さすがに戦術機(ではなくモビルスーツだが)を持ち込む奴はおらず、だが民兵を対象にしたシステムのために、生身で戦っている民兵の中に戦術機が戦っている、などという奇妙なことになっているわけだ。
さてオレ以外のメンバー。戦車級と小型種のみが相手のはずだが、しばらくするとほころびが出はじめる。するとオレは悲鳴まじりの応援を求められ、言われるままビームライフルを二三発撃ち込んで火消しをしてやる。
そんなこんなで防衛線は堅く守られ、BETAの侵攻が終わるまでは射撃のお時間………だったらいいのだが。オレの仕事はこれだけではない。
『カズサ、光線級の出現をCPが報告した。光線級吶喊の要請が来ると思うから、この地点で控えててくれ』
ブレックス総長から光点マーカーと共に連絡がきた。
このブレックスという男、もちろんかの【機動戦士Zガンダム】のあの人ではない。見てくれはもっと若いし、パツキンのそこそこな男前。偶然そういう名前のアメリカ人だ。共通点があるとすれば、そこそこ政治的才能があるという点か。
このブレックス。本国アメリカではそれなりのエリートだったのだが、人道主義がすぎるという欠点があった。そのエリート的立場と政治的手腕で、政府の難民の扱いに対する批判的政治団体なんて作っちゃったから、さぁたいへん。
上に睨まれ、東南アジアへの広報という名目で、ここに部下ひとりつけられずに飛ばされてきたのだ。そのブレックスとオレは互いに本国へ戻れない者同士。ある日知り合い、組んで傭兵団を立ち上げることになった。
オレは【Zガンダム】と【ブレックス】の運命的な出会いに感謝し、傭兵団の名を【エゥーゴ】と名付けた。
何を感謝をしたかというと、ブレックスに出会う前もここで傭兵活動をしていたのだが、扱いが実に酷かった。
正規部隊にすら追随を許さない戦果をあげていたにも関わらず、だ。
弱い立場につけこまれ愛人になるよう迫られたり、Zガンダムを取り上げられようとしたり。
だがブレックスの世界最強国【アメリカ】という国籍。そして何の権限はなくとも【エリート的立場】な肩書きはやはり強力だった。
たちまちに木っ端軍人だの地元実力者だのに口をはさまれない立場に祭られ、さらにオレのゼータでの戦果を政治的成果へと化学変化させ、今や独立武装連隊【エゥーゴ】は大東亜連合の実力者の一角となった。
「了解ですわ、ブレックス総長。では皆さま。上総は目玉のお化けと踊ってきますのであとをよろしく」
途端に嘆きの声が満ち、引き留める声があとをたたない。
これはオレがモテることとは関係なく、ゼータが戦線を離れると戦死者が相当数出るからだ。
それを無視してゼータを指定場所へと動かす。
光線級吶喊など本来は正規兵の役割だろうが、それをすると重金属雲を厚く巻いて数十数百もの部隊の犠牲を積み重ね、やっとなし得なければならない。
それがゼータなら、ただ一機で出来てしまうのだから仕方ない。
さて、さっきからオレオレと言っているが、自分は山城上総という女の子の衛士。男だったのは前世の話だ。ただ、実際にしゃべる場合はさっきのようにお嬢さま言葉になる。これは作っているわけではなく、【山城上総】の肉体に染みついた性らしいのだ。
「上総。光線級群の位置を確認した。もう行っちゃう?」
「ダメですわ。ブレックス総長を立てないと。エゥーゴの代表的立場のわたくしが命令に従う姿勢を崩せば、民兵の集まった傭兵団なんて簡単に崩壊してしまいますわ」
今オレに話しかけたのは座席斜め前にいるハロ。しゃべっているのはガンダムでおなじみの球型ロボットだが、本体はなんとこのZガンダム自身。
前世はオレの親友の晴郎という奴だったのだが、転生特典でZガンダムを願ったらZガンダム自身になってしまったのだ。
やがてブレックスから指示がきた。
瞬間、オレはゼータを発進。
『カズサ、非常に厳しいが頼む。司令部からの情報で位置はここ、この辺り。作戦を検討した結果、もっとも成功確率の高いルートは………』
ハイハイと適当に相づちをうちながら何も聞いていない。
ここのガバガバ位置情報と穴だらけ最適ルートなど聞いても無駄だ。
とっくにハロが位置も最適ルートも分析済みだ。
「エンゲージ! フォックスワン!」
「左前方にもBETA群確認! けど遠いから無視して!」
途中にいるBETAを吹き飛ばしたりやりすごしたり。
目標位置の中ごろまで近づくと、早速光線級がレーザーの歓迎をしてきた。
照射の瞬間をニュータイプの直感で感じて、機体を大きくそらして回避!
右に左に回避していくと、やがて突撃級の集団がこちらに向かってきた。
足の速い突撃級がこんな所にいるのは、おそらく光線級の護衛だろう。
「そこな細道を開けてくださいな。天神様へのご用向きにあがりましたわ」
ビームライフルを取り出し、前二体の突撃級の足を綺麗に吹き飛ばした。
突撃級二体は派手に転倒し、隣の個体をも巻き込み、きれいに道が空いた。
そこをスピードを緩めず突破。ついでに突撃級を背にして照射を防ぐ。
さて、そろそろレーザーを躱すのも難しくなる所まで近づいた。
ニュータイプ能力で照射の瞬間を読んで回避行動をとっても、レバーを動かす時間と機体が反応する時間のコンマ数秒で遅れてしまうのだ。Zガンダムがサイコミュ搭載機体なら、思考したら即回避なのだが。
なのでさらに上位のニュータイプ能力【先読み】
高レベルのニュータイプ同士の戦いは、相手の一手先を読むべくこれを駆使しながら戦う。
やたらピキーンピキーン鳴って戦っているのがそれだ。
オレはこれを発動すべく、機体は猛スピードでも心は静かに光線級に意識を向ける。
BETAのなまこの感触のような意識は実に気持ち悪いがガマンだ。
ピキーン
来た! 瞬間ゼータを大ジャンプ!
さらにバーニアをふかし距離をつめる。
下にレーザー照射の奔流が通り過ぎるなか、バイオセンサーを起動。
バイオセンサーというのは、サイコミュ開発当初は巨大だったそれを小型にした簡易サイコミュだ。本来は姿勢制御のためのものなののだが、ニュータイプが起動させると魔法のようなことが起こったのだ。ビームサーベルが巨大になってロングビームサーベルになったり、サイコフィールドというバリアが発生したり、意識が裸になって敵と心が通じ合ったり。
要はパイロットができて欲しいことが起こる魔法のようなものだ。
で、オレはその魔法をビームライフルにかける。
「墜ちなさい! このぉ!」
バイオセンサーの魔法で長距離モードになったビームライフルを光線級群へと斉射する。
威力も高まったビームライフルは、50匹以上もいた光線級群をわずか十数発で殲滅してしまった。
撃ちもらしの確認をしながら周囲を警戒。
「終わりましたわね。さっきの突撃級のイノシシ達がお戻りになるでしょうし、それも片付けて………あら?」
モニターにはさっきやりすごした突撃級が、オレの乗るゼータから背を向けマンダレーハイブの方角へと去って行く姿が映っていた。
「BETAにも『恐れをなす』なんてこともありますのね。ま、急いで戻らなきゃけっこうな数の隊員が死んでしまうでしょうし、見逃しましょうか」
「アイハヴコントロール。BETAがまた出るまで操縦代わるから、休んでて」
少し不用心だが、戻ったらまたBETAが尽きるまで撃ち続けなければならないのだ。
操縦をオレから代わったハロは、ゼータを元のエゥーゴの陣地へと向けて走らせた。
実にいつものBETA退治の光景だった。
だがこの時、オレ達は知らなかった。
逃げたBETAは戦った相手の情報を持ち帰るということを。
もっとも、これが脅威になるのはZガンダムの強さもあってかなり後のことだ。
ゆっくりになると思いますが、とにかく書き始めることにしました。ちなみにこの話の明星作戦は原作より約一年遅れです。原作と違う展開になるかもしれません。