ゼータと上総   作:空也真朋

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16話 タリサ・マナンダル

 式典は続く。お姫様衛士営業活動も続く。オレのストレスも続く。

 

 ブレックスに連れられ、式典に来ているあっちの偉い人こっちの偉い人に挨拶をしてまわり、作り笑いも清楚な物腰も限界になった頃だ。

 片隅の物陰で休ませてもらい、ブレックスは「飲み物をもらってくるよ」とオレから離れた。 

 

 ぼんやりそこら式典にいる人たちを眺めながら待った。どうやらここは軍の人間が集っている場所のようだ。

 ふと、色の浅黒い活発そうな少年軍人と目があった。するとそいつは妙にうれしそうな顔でオレに近寄ってきた。顔つきはやけに可愛く現地の子供のようではあるが、正規軍の制服を着ているのでれっきとした軍人か。

 『オレのファンだったらめんどくさいな』とか思ったが、そいつはそれより遙かにめんどくさい奴だった。

 

 「フフン、いいところで会ったぜ」

 

 いや、女の子? 声は女の子のもの? セリフはともかく、やけに可愛い声だ。

 

 その子は着飾ったオレに臆する様子も見せず、ブラリ真正面に立って言った。

 

 「よお。アンタがアタシら正規軍も差し置いて、東南アジア最大の戦果をうちたてたってお姫さまかい?」

 

 「人違いですわ。わたくし、そんなものうちたてた覚えも、お姫さまでもありません」

 

 「へへっ。間違いねぇようだな。よしっ。あたしと勝負しろ! あたしのF-15とお前のぜーたで模擬戦だ!」

 

 違うと言っているのに、どうして話が進むのだ。そもそも一機で光線級吶喊が出来るゼータと、ここらの戦術機で勝負になるか!

 

 「お断りします。ほかの軍との模擬戦は原則として上層部が決めた場合にのみでしかやってはいけないのがきまりです。ましてや万一傭兵の戦術機に正規軍のものが不覚をとった場合、面子が立たないでしょう?」 

 

 「大丈夫だ。アタシは絶対勝つ! スコアじゃ部隊の規則のせいで負けても、一対一(サシ)でやったらアタシの方が絶対強い」

 

 なんなんだろうね、この自信。ゼータと他戦術機の圧倒的な性能差を見てどうしてそう言い切れる?

 とにかくこんなアホの提案なんかに乗って、貧乏くじを引くわけにはいかない。

 

 「BETAとの戦闘はスコアを競うハンティングゲームではありませんし、模擬戦はどちらが強いかの勝負事ではありません。お断りいたします」

 

 「だぁぁぁぁぁ勝負しろー! しなきゃスカートめくるぞ! パンツ見るぞー!」

 

 「きゃあああ! やめなさい。正規軍衛士が堂々と不祥事おこして!」

 

 コイツ、見かけだけじゃなく中身まで悪ガキ坊主だよ!

 セレンダンを引っ張る悪ガキ衛士を、彼女の上官らしき兵士とその部下が駆けつけて取り押さえると、謝罪をして向こうへ引っ張って行った。

 オレはブレックスに連れられ、崩れた衣装を直しに控え小屋へいった。

 

 「あの()はタリサ・マナンダル少尉。ネパール軍の衛士だね。大東亜連合の中でも腕を認められる俊英だよ」

 

 オレはメイドの少女達に衣装を直されながら、ブレックスからタリサとかいう悪ガキネパール軍女衛士のことを聞いた。

 しかし俊英? 現地語じゃだいぶ意味が違うのか?

 

 「それにしても思い上がりがすぎますわ。大東亜連合の精鋭のだれか、あの高すぎる天狗鼻をへし折っていただけないものかしら」

 

 「そりゃ無理だ。衛士としての腕はここらじゃ最強で、大東亜連合の誰もが戦術機の腕であの子にはかなわないってほどのものらしいよ。ああ、君を除いてだけど」

 

 いや、オレ個人の腕はそれほどでもない。神がかった戦術機機動も、ゼータの性能とハロの補正のお陰で出来ているだけで。

 おかげでゼータに乗った初めての戦闘で、光線級吶喊なんて出来てしまった。

 

 「まぁ、あの()も最後に噂の君と競ってみたかったんだと思うよ。なんでも最近、ここを離れるらしくてね。アラスカで調整が行われる最新鋭機のテストパイロットに選ばれて、国連に派遣されるらしいんだ」

 

 なんと! 本当にエリート衛士だったとは! イキって飛び出して無駄死にする雑魚にしか見えなかったよ!

 

 このとき、もう二度と会うことはないと思ったあの()だったが、なんと数ヶ月後には再び出会うことになってしまう。しかも本当に模擬戦なんかをやらされるとは思いもしなかった。

 

 衣装を整え再び式典に出ようとするオレに、ブレックスは思い出したように言った。

 

 「ああ、そうだ。式典のあと詳しい話はするが、次の大きな作戦のさわりだけ教えておこう。場所はなんと君の祖国の日本帝国だよ。大東亜連合は日本で行われる横浜ハイヴ攻略戦に参加する。これは他に在日米軍と国連軍日本支部も参加する大規模なものだ。エゥーゴも大東亜連合の戦力のひとつとして参加することが決定した」

 

 ――――!??

 

 「日本………ですか? しかしわたくしは脱走兵で………」

 

 「大丈夫。その辺りの話もついている。脱走以外の悪いことをしたわけでもないし、今回の作戦への貢献と謝罪で許されるよう話をつけたんだ。僕も祖国に帰れないつらさはわかるつもりだからね」

 

 ウィンクして答えるブレックス。

 ヤバイ! ブレックスが一瞬いい男に見えた!

 

 「ありがとうブレックス!」

 

 思わず恋人同士のようにブレックスに抱きついてしまった。

 アイドルお姫様衛士やらされている恨みも吹き飛んだよ!

 

 

 ――――――パチパチパチパチパチ

 

 …………え? なんでオレら、拍手されてるの?

 見るとメイドの女の子達が、結婚式を見るみたいな目で抱き合っているオレらを見ていた。

 いや違うから!

 『恋人同士のように』ではあっても、『恋人同士』じゃないから!

 キスシーンとか待っている目をやめるんだ君たち!

 やたらキリッとした顔のブレックス! お前も何を待っている!?

 

 

 

 

 

 ――――そして一月後。

 オレは大東亜連合の一員として一年数ヶ月ぶりに日本帝国の地に戻った。

 作戦目的は、本州よりBETA排除のための横浜ハイヴ攻略作戦。

 作戦名は明星作戦。

 

 ここでオレは運命とも言えるような奴らとの出会いをする。

 国連軍日本支部所属の衛士・鳴海孝之と平慎二だ。

 

 

 

 




 とりあえずタリサと会わせてみました。
 トータルイクリプス編はどういう話にするかはまだ未定。
 そして次回より舞台を日本に移して明星作戦開始!
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