ハロがそう言うのならそうなのだろう。しかし、オレはやはり決断できずにいた。
ブレックス他、エゥーゴの仲間。それにそれを知らせに来てくれた鳴海と平。
それらみんなを見捨てて、俺達だけで逃げていいのか?
そんなこと、とても………とてもできやしない!
「……………決断できないか。実はボクもなんだ。だったら、命を賭けてみんなを助ける万一の可能性に挑戦してみる?」
「そんな方法があるのですか!? もちろんやります!」
「そうか。だったら作戦はこうだ。この先の行動はこれこれこう………」
ハロから授けられた作戦はやはりキツイものだった。
しかしオレ達ががんばってみんなを助けられるなら、やるほかあるまい。
もうオレはガンオタじゃなく、本物のガンダム乗り。晴郎にいたってはガンダムそのものなのだから。
そう。オレ達がガンダムだ!
「わかりました。それでいきましょう。みんなに通達します。通信をオープンに」
さて、ここからは階級も序列も関係ない。オレが最高指揮官だ。
有無を言わさず全員、これからの命令に従わせる。
「全員傾注! 間もなくここにアメリカがG弾という恐るべき爆弾をおとします。すでに上空の衛星軌道艦隊は発射態勢にあり、今から効果範囲外へ退避するにしても、とても間に合いません」
――――――ザワリ
何やら騒がしく通信が一斉にきた。が、無視して続きを言う。
「ですから避難します。核の直撃を受けようと、ビクともしない施設がここにはあるのです」
「な、なんだって?」
「カズサ? そんなもの、一体どこに?」
「山城さん? あの、まさかと思いますが………」
「あれです」
ピタリ。ゼータの腕を上げその一点を指し示す。
それは多くの突入部隊を飲み込んだ地表構造物。
BETAが無限に湧き出してくるハイヴ。その門。
「総員、ただ今より横浜ハイヴへ突入をかけます! 地下茎内深々度の奥へと潜り、もっとも防御の高い施設の一つ、『アトリエ』と呼ばれるG元素貯蔵庫まで一気に駆け抜けます。G弾の直撃を避けるにはそこより他ありません」
最大に通信がやかましく鳴った。
あそこに突入した精鋭部隊は全滅し、一機たりとも帰ってこなかったのだから無理もない。
しかしまたしてもそれを無視して続ける。
「わたくしが先導し、なるべく全てのBETAを倒します。ですが撃ちもらしがあった場合、それぞれの部隊で対処をお願いいたします。鳴海少尉、平少尉。あなた達も頼りにさせてもらいます」
「や、山城さん!? 正気………」
――――――プチッ
さて、言うべきことは言った。当面通信は遮断して行動に移ろう。
説得や説明の時間なんてないし、ついてこない奴は見捨てるしか無い。
クスリ。
つい笑みがこぼれた。
「まさか欲に駆られて作ったアレが役に立ちますとはね。ガンオタの迷走もたまには役に立ちますのね」
オレはゼータをハイヴの門へと向けて突撃した。
ゼータがハイヴの門へ迫ると、やはりBETAがウジャウジャわいて出た。
だがビームライフルでは遅い。足がとまる。ならば!
「出し惜しみはしません! バイオセンサー起動!」
ビームサーベルを高出力のロングビームサーベルへと変化させ脇に構える。
「
ロングビームサーベルを低く大きく半円を描くように薙いだ。
一瞬にして前方全てのBETAが屍となる。
そのままいきおいを緩めずハイヴ内へと突入した。
◇ ◇ ◇
「燕飛! 左太刀! 蛙はがし! 一文字のみだれ! 五月雨の連撃!」
ロングビームサーベルを振るい、向かい来るBETAを次々撃破しながらゼータはハイヴの深々度奥、中層を突破し下層へとと突入する。
ピタリ。
通路のとある一点に、何やら不穏な気配を感じて止まる。
横坑からの奇襲。数多の部隊を葬ったBETA得意の戦術か。
「ですがニュータイプの直感の前にはそれも塵芥ですわ」
ハイパー・メガ・ランチャーをそこに向け構える。
出力を低く抑えることで、いつでも撃てるようになったのだ。
――――ボコリッ!
その音とともにその壁が崩れ、突撃級の装甲殻が現れた。
「お待ちしておりましたわ!」
瞬間、ハイパー・メガ・ランチャーの引き金を引く。
シュカッ!
白光の熱閃はその突撃級を蒸発させ、さらに横坑に潜むBETAをまとめて焼き尽くした。
その跡を見るとかなり広い空洞になっており、BETAが相当数潜んでいたことが見て取れる。
「これが最後の防衛施設だったみたいですわね。G元素の気配も相当近くなっています」
「うん。もうこの先がG元素貯蔵庫【アトリエ】だ。どうやら間に合ったみたいだ」
ハロの言葉にやっと一息つくと、鳴海から通信がきた。
「山城さん。遅れた機体がかなりある。君の隊長もついてこられない。一旦止まってくれ」
そう言われて後ろを見てみると、全天周囲モニターの後ろはかなり機体の数が減っている。
ゼータはわらわら来るBETAを排除しながら進んでいるのに、そのゼータについてこられない奴がこんなにいるのか。
付け焼き刃で戦術機なんて乗っているブレックスもやはりだ。
「しかたありませんね。ハロ、戻ってみんなを連れてきましょう」
「ダメだ! ボクらは一刻も早くアトリエに着かないと! でないと間に合わなくなる!」
ダメか。アトリエに着いた後のことは聞いていないが、そこで終わりはでなく、まだやることがあるらしい。仕方なくオレは鳴海に断りの通信を送った。
「ごめんなさい。どうしてもアトリエへの突破の時間を遅らせるわけにはいかないの。すみませんが、だれかブレックスを連れてきてあげてください。アトリエはすぐそこです」
「そうか。だったら仕方がない。俺達がもどって後続の護衛につこう。慎二、いくぞ」
「わかった。生き延びる可能性も山城さんあってのものだしな。山城さん。あとで会おう」
二人の二機は坑道を引き返し、それを見送りながらオレ達は前に進む。
「『あとで』か。あの二人、本当にブレックスを連れてアトリエまでたどり着けるかな」
ハロがポツリと言った。
「これなくても大丈夫でしょう。かなりの深さですし、G弾の衝撃からは身を守れるはずですわ」
「上総。G弾で死ぬのは熱や衝撃のためじゃない。自分の体重に殺されるんだよ」
「ハァ?」
ハロはその言葉の意味は教えてくれず、ともかくオレ達はアトリエへと道を急ぐのだった。
♠♢♣♡♠♢♣♡
鳴海孝之Side
俺達は道をもどりながらも、足下の無数のBETA共の死骸でできた絨毯を見て、山城さんの戦術機のすごさを改めて思い知る。
「まったく凄まじい力だったな。このBETA、全部山城さんただ一機でやったんだよな?」
「俺達も多少の漏れてきたBETAはやったが、9割はそうだな。ハイヴ攻略部隊の精鋭は全滅したはずなのに、俺たちは楽々ハイヴ下層まで来ちまった」
「こんなことなら山城さんにハイヴ攻略部隊にはいってもらった方が早かったんじゃないか? ここまでの性能の戦術機が開発されたなんて聞いたことがないぞ」
「そうか! 山城さんはあの…………っ!」
「どうした慎二?」
「孝之、聞いたことはないか? 一年前の京都陥落のさい、たった一機の戦術機がBETA共の数を大いに減らして、それ以上の侵攻を防いだって話を。その機体の搭乗者は斯衛の新任衛士だったって噂だ」
「あれか! じゃあ山城さんがその斯衛の? もういっそ、このままハイヴを攻略しちまうか? その方が…………あぐっ!?」
――――ズンッ
な、なんだ? いきなり機体が重くなった!?
いや、機体だけじゃない。俺自身も重い!
「ぐぅぅぅっ!? どう……したんだ………っ! いったい……何がっ!」
その場に縫い付けられたように機体が動かない!
それは俺だけじゃなく、慎二も同様の状態だ。
まさかこの場の重力がいきなり高まったのか? そんなバカな!
「孝……之……俺……達は……勘違い……してた。G弾は……核のよう……な…爆発じゃない。重力を………」
慎二同様、俺もG弾の正体を知った。
それは局地的に超重力を起こす重力爆弾だったのだ。
その効果範囲内にいる物全ては、自重を数百倍に高められ圧壊してしまう。
(なるほど。頑強なハイヴ深奥にいるBETAも排除できるわけだ。だったら、このハイヴ内にいる者はもう一人も生き残れない……!)
水月、遙、ゴメン。それに慎二、つき合わせて悪かった。山城さんも――――
――――――グシャァッ