ゼータと上総   作:空也真朋

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 冷静に考えたら、いくらご都合主義の神様だからって宇宙世紀の高技術のモビルスーツをくれるなんてムチャクチャだなあ。
 戦国自衛隊どころじゃないよ。
 自重できない自分が悲しい。


02話 少女が聴いたゼータの鼓動

 唯依side

 

 京都東端戦域嵐山

 

 私は篁 唯依。譜代武家篁家の娘。

 山百合衛士訓練学校の訓練兵だったけど、さきほど任官。臨時任官だけど正式な斯衛軍衛士少尉になった。これはBETAの日本襲撃のためだ。

 

 台風4号と共に上陸したBETAは、上陸後数時間で九州、四国、中国三カ所の絶対防衛線を破り、瞬く間に京都西ヶ嶽まで侵攻してきた。

 帝都防衛が決定的となったとき、訓練兵であった私達山百合衛士訓練学校の学徒は臨時に衛士に任官。戦術機・瑞鶴を拝領。

 

 中隊長の如月中尉の指揮下、斯衛軍332独立警護中隊として、兵站の要衝、嵐山基地仮説補給所の守備を命じられた。いわば後方警備にも関わらず、私達は浸透してくるBETA群との戦闘にはいった。

 

 後に知った情報だが、私達が戦闘にはいった時点で舞鶴――帝都――大阪を結ぶ第一、第二防衛線は破られ、最終防衛線での戦闘に移行していたそうだ。どうりで後方の補給基地の守備をしていた私達まで戦闘したはずだ。

 

 嵐山戦域の支配が困難となった頃、CPは中隊に嵐山基地直援を指示。中隊は愛宕、鳥が岳間に防衛線を構築すべく移動。如月隊長は、消耗と損傷の激しい私と山城さんと和泉の三機に京都駅本陣への後退を指示した。

 

 

 

 そして現在。京都駅本陣に向かうべく東海道本線を上り、唐橋平垣町近傍に来た。

 だが、信じられないことに、BETAはこの本陣ですらすでに制圧してしまっていたのだ。

 

 「きゃぁっ!?」

 「あうっ!?」

 「和泉! 山城さん!」

 

 ふいに現れた巨大BETA要塞級に襲われ、和泉は操縦をあやまり山城さん機に接触、墜落。

 二機は京都地下鉄の天井を突き破り、そこへ落ちてしまった。

 

 「待ってて二人とも。無事でいて」

 

 私は二人を探すため着陸し地下鉄へ続く階段へ。

 周囲を調べるためライトで軽く照らしながらそこをを下りていく。

 最初に発見したのは和泉。

 でも、それは恐怖と悲しみと吐き気のいり交じったものだった。

 

 

 

 「うっ………ぐぇ…………っ!」

 

 私はこみ上げる嘔吐を必死でおさえ、体を硬くして気配をころす。

 親友の和泉がBETAにまとわりつかれ、食い殺されている光景を見たのだ。

 彼女はすでに事切れ、ただ虚空を見上げながら喰われているだけだった。

 

 ショックを無理矢理おさえ、もう一人の仲間を探しにさらに奥へと行く。

 山城さん! あなただけは無事でいて………っ!

 

 

 

 今日一日で大切な友達を何人も失った。

 同じ斯衛軍付属・山百合衛士訓練学校の仲間達。

 

 志摩子。防衛戦闘の最中、高度を取り過ぎて光線級の餌食になった。

 安芸。 同じく戦闘中、死の八分を越えた瞬間に不意打ちにあい死んだ。

 和泉。さっきそこでBETAに食べられていた。

 

 

 

 

 「……たか………むらさん…………」

 

 インカムで呼びかけていた私の声に、ふいに応答がはいった。

 山城さんだ!

 山城さんが生きていたことを喜んだのもつかの間。その姿を確認した瞬間、私は絶望した。

 

 「山城さん………せっかく生きていたのに………っ!」

 

 彼女の瑞鶴は行動不能の状態のまま、多数の戦車級BETAにまとわりつかれてしまっていたのだ。

 やがてBETAは瑞鶴の装甲を食い破り、山城さんはユニットから引きずり出された。

 負傷している彼女はいまにも喰われそう。

 その時、再びインカムから彼女の声がきた。

 

 

 「撃って………篁さん。わたくしを殺して………わたくしがこいつらにくわれる前に」

 

 

 …………そうだ。BETAに生きながら喰われるなんてひどすぎる!

 悲劇的な最後をむかえる前に、私が彼女を解放してあげなくては。

 ……それが…………僚友のつとめ……………っ!

 

 私は携帯している拳銃を取った。

 そして山城さんに狙いをさだめる。

 でも動けない。人を、学友を。

 そして何より、本当はいつも憧れていた彼女をこの手で殺めるのはあまりに重い。

 

 「早く撃って! こいつらに喰われる前に! 篁さん、お願い!」

 

 山城さんが恐怖で叫んでいる。早く撃たなきゃ! でも………

 

 BETAが彼女に這い寄る。

 なのにまだ動けない。自分の指がやけに重い。

 

 

 「撃ってよぉぉぉ!唯依! こいつらに食べられる前にぃぃぃぃ!」

 

 目をつむった。

 

 

 彼女が名前で呼んでくれたことが少しだけ嬉しかった。

 

 

 好きでした。憧れていました。あなたと友達になりたかった。

 

 

 ずっと願っていました。あなたと名前で呼び合えるようになりたいと。

 

 

 だから最後に彼女の名前を呼ぶ。

 

 

 この一瞬を永遠にするために――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 「かずさぁぁぁぁ!」

 

 

 ――――パーーン!

 

 

 引き金を引いた瞬間、山城さんはガクッとうなだれた。

 ああ。私はいま山城さんを殺したのだ。

 

 「苦し………まなかったよね。山城さん………かずさ」

 

 彼女の人生はここで終わり。でも私は………全てを無にしないために生きなくては……

 そんなことはわかっている。

 でも動けない。足が震える。

 彼女を殺したこの手はまるで鉛のよう。

 

 ああ…………悲しいんだ。

 眼から頬へ。

 そこから落ちる水滴がいくつも………

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――ガガーーーン!!!

 

 

 突如、山城さんの瑞鶴の天井が爆発した?!!

 

 

 

 突き破られた天井。

 その外界へ広がる空の中に、人型機械のそれは出現した。

 

 「戦術機!? 助けがきたの!? でもあれは……どこの最新機?」

 

 それはまったく見たこともない、見知らぬタイプの戦術機。

 その戦術機は日本、海外で私の知っている戦術機の形状のどれとも大きくかけ離れ、にも関わらずより洗練されているように見えた。

 

 赤青白三色のトリコロールカラーで彩られたそれ。

 頭部の形状は武者の兜を思わせる。

 

 ふいにその兜から無数の銃弾が発射され、山城さんの周囲にいる戦車級BETAをひき肉にした。

 周囲にBETAがいなくなっても、山城さんは動かないまま。

 当然だ。悲しいけど、銃弾は見事に山城さんの咽を貫いた。ほとんど眼をつむって撃ったのに。

 

 「なんで……もっと早く来てくれなかったの……っ!」

 

 そんな理不尽な思いで心は満たされた。

 そしたら、私は山城さんを殺さなくてすんだのに!

 

 さらに次々奥からにわきだしてくる赤グモのような戦車級BETA。

 それに対し、謎の戦術機は腰より光りのような長刀を取り出した。

 そのあり得ない刀身に私は驚愕した。

 

 「何なの、あの長刀? 刀身が見えない! まるで光が刀身そのものみたいだわ!」

 

 それはBETAの群れに突入し、光の長刀をなぎ払うと、一瞬にしてまとめてBETAは蒸発した。いったいどれだけの高温なの!?

 

 そうしてこの地下鉄の場に、脅威であったBETAは全ていなくなった。

 私はただ呆けて見ているだけ。

 だが、それの次の行動を見て驚愕した。

 

 

 

 「あっ! 山城さん!」

 

 その不明機は戦術機とは思えないほどに器用に腕部を動かし、山城さんの遺体をそっと持ち上げた。そのまま山城さんを持ち去ろうと元の天井の穴へと向かった。

 

 「待って! 山城さんを連れて行かないで………っ!」

 

 そんな私の言葉は虚しくとどかず、謎の戦術機はそのまま穴の向こうへと去っていってしまった。

 

 

 




 おお上総よ。タイトルに名前がありながら、こんな最序盤で死んでしまうとは情けない。
 やすらかに眠りなさい。
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