門番みたいな強力そうなBETA達及びやたら硬い扉を、ロングビームサーベルで叩き切る。
高密度なG元素の気配のあるその部屋に入ると、そこには何やら不思議な結晶が数多くそこら中にあった。
「ここがアトリエか、カズサ」
「まさかこんなに早くハイヴ下層までこれるとはな」
「カズサ様、さすがです!」
「すごいな。これが各国が取り合うG元素か。こりゃ、とんでもないひと財産かもな」
ゼータに続き、ついてきた大東亜連合のみんなも入ってきた。
たしか当初は60機あまりいたはずだが、その数は十数機しかいなかった。まさかこれだけしかついてこられなかったとは。
「これがG元素。各国が取りあうBETAの黄金。そしてここがアトリエですのね」
本当に何が役に立つかわからない。
作戦の前、つい欲にかられて作ってしまったG元素強奪計画のお陰で最速でアトリエに到着することができた。ここのハイヴはまだ小規模のフェイズ2だったことも幸いした。
「G元素強力吸収モード!」
ハロはそこに着くなり、ZガンダムにそこにあるG元素を取り込ませる。
ものすごい勢いで、G元素の結晶はゼータに吸い取られていく。
「それじゃ上総、これからやることを話す。上総はバイオセンサーに思念を送ってアトリエ全体にサイコフィールドを張るんだ」
「サイコフィールド? それって二人のニュータイプ同士がサイコフレームを共振させてできるものではなくって?」
アムロがνガンダムでシャアと共振してアクシズの落下をくいとめた奴だよな?
いくら何でもゼータであれは無理なんじゃ…………
「いま核融合炉全開で、G元素をサイコミュの基礎機能をもつチップ。即ちサイコフレームに変えて、バイオセンサーに組み入れている。上総が思念を送ったなら、それを体内で反響させて共振をおこす。早く!」
とにかく言われるままにバイオセンサーにニュータイプ思念を送る。すると本当に不可視のフィールドが形成された。そしてそれは、アトリエ全体を覆うまでに広がっていく。
すごい! バイオセンサーが今までと比較にならないくらい強力になっている! これならアトリエ内の機体を全て守ることが可能だ!
「すごいですわ。これならどんな衝撃がきても大丈夫ですわね」
「いや、重力だ。ボクらが身を守らなきゃならないのは超重力からなんだ」
「はい? 重力ですか?」
「ああ、そうだ。G弾とは重力爆弾。効果範囲の重力を数十倍に高めて圧壊させるという恐るべきものなんだよ! その効果から免れるにはサイコフィールドしかない」
「待って! それじゃ、いくらハイヴの奥にいてもその効果から逃げられないじゃありませんか。つまり、ここに来れない者は…………っ!」
「あきらめるしかない。それよりBETAが入ってきたら排除を頼む。ボクは補正できないから、がんばって!」
そう言ってハロは作業に集中するために黙った。
オレは超重力にそなえてサイコフィールドを発生させながら祈った。
(まだブレックスも鳴海も平も来ていない。いや、大東亜連合の大半が来ていない。早く………早く来てくれ!)
「上総、来た!」
「間に合いましたか!」
「いや、BETAだ。さっき言ったようにボクは何もできないから頼む!」
「キーーーッ!! お前らじゃありませんわ!!!」
けっこうな大殺戮をしてここまで来たのに、またワラワラとお馴染みの虫どもがアトリエ入り口に群がってきた。こいつらが入り口をふさいでいたんじゃブレックス達が入れない。
「害虫立ち入り禁止! これで潰れておしまいなさい!」
入り口に群がり侵入しようとするBETA。それを排除すべくビームライフルを向けた瞬間。
――――グシャッ!
「あら?」
何もしていないのに、そいつらは勝手にその場で潰れた。
と同時、このアトリエ内の洞が激しく揺れはじめた。
………ズッ……ズズズズッ……………
「来た! 上総、サイコフィールドに集中だ!」
「ええ! でもハロ。他のみんなはやはり………」
「G弾について詳しい説明をしなかったから、深々度まで下りて安心しちゃったんだろうね。残念だけどここに来られない以上、サイコフィールドの恩恵は受けられない」
「……………そう」
共にやってきたブレックス。
撤退すべきなのに、自分の命をさらしてオレ達の撤退を促した鳴海孝之と平慎二。
――――――ゴメン。
君達を置いて生きてしまうけど。
それでもこのBETA大戦、逃げないで戦うことを誓う。
「カズサ、いったい何が? この揺れはいったい?」
「G弾が落ちたのか!? このアトリエは崩れないのか!?」
「他のみんなは!? まだ来ていない者が相当数いるのに!」
「カズサ様! ブレックス様がまだ来ていません。探しにいかないでいいのですか!?」
ここにたどり着いたみんなが騒ぎはじめた。だが無事のようだ。
本当にサイコフィールドは、このアトリエ内の機体と搭乗者は守れている。
ともかく、ここにいる者達だけでも安心させて守らないと。
「みなさん落ち着いてください。G弾は投下され、その影響が現れたようです。ですがここは安全です。G弾の効果が終わるまでこのままアトリエ内で待機していてください」
オレはより強くニュータイプ思念を放ち、サイコフィールドを強化する。
振動は間弾なく続くものの、モニターでみる周囲の機体は全機異常なく無事だ。
ゼータはどんどんG元素を取り込んでサイコフィールドもより強力になっていく。
「とりあえず切り抜けられそうですわね。本当にハロには感謝しかありませんわ」
となると、考えるのはここから出た後のことだ。
オレ達がBETAと戦っているにも関わらず、こんなものを投下したアメリカ。
これによって多くの将兵が死んだ。ハイヴを制圧するためとはいえ、あまりに乱暴な行為だ。
考えてみれば、在日米軍の役割は作戦初期のBETAの誘引。
G元素が欲しいならばハイヴ周辺の制圧を担当してもいいはずなのに、米軍は付近にはいなかった。
そして大東亜連合にはアメリカの強硬派がけむたく思っているブレックスがいる。
まさか、これは仕組まれていたものなのか………?
――――ギッ……ギギィ…………
「ぐわぁぁぁぁ!」
「カ、カズサさま! 苦しいぃぃ!」
「つ………潰れるゥ!!」
――――え?
悲鳴まじりの通信に我に返り付近を見ると、周囲の戦術機がみな潰れかけていた。
足はひしゃげ、フレームはゆっくり曲がっていき、次々地面に倒れ崩れていく。
「み、みんな!? いったいどうして? さっきまで完璧にサイコフィールドで守れていたのに!」
「…………くっ! 地面に伏して破損を抑える! 上総、もうみんなはあきらめるしかない。サイコフィールドをゼータ周囲限定にして!」
「ハロ!? お前まで!?」
ゼータはゆっくり地面に倒れ、うつ伏せに寝転がった。
「いったいこれは!? まさか重力がさらに高まったの!?………あうっ!」
――――ズンッ
「あっ……あぐぅぅぅ!?」
さらに重力は強くに高まった。オレまで潰れそうになるくらいに。
ゼータのコクピットもオレの着ているノーマルスーツも、宇宙世紀の耐G機能が備わっている。にも関わらずここまで影響があるのでは、もうみんなはとっくに圧死しているだろう。
サイコフィールドをゼータの周囲限定にまで狭め、ようやくしゃべれる程度まで余裕が出来た。
オレはさらに強くサイコフィールドを発生させるが、息苦しさは抑えられない!
「は………ハロ? どうなってますの? どうして重力が………こんなに……抑えきれなくなって………っ!」
「二発目だ! 米軍はハイヴ内を確実に潰すために二発目のG弾を投下したんだ。くっ、バイオセンサーの強化もここらが限界だ!」
「なん………ですって………え!」
「ゼータ全防御システムをコクピット及びメイン機能に集中! 残りのサイコフレームはコクピットまわりの強化にあてる!」
「………絶っ対………負けませんわ! ここで……わたくし達が……死んだなら………っ!」
ここでだまし討ちにあったみんなの思いを背負うと勝手に決めた!
ブレックスやその他大東亜連合のみんなが頑張ってきたこと。
何もできないかもしれないけど、それでも覚えていることだけはできる!
それに鳴海や平の代わりに戦うことだってできる!
戦闘力だけは無駄にあるんだから!
「あああああああああ! わた……くしは……生きて……日本を守る……っ!」
「上総ぁ。このまま高重力が続くと、君が呼吸ができない…………っ!」
重力の高まる穴蔵のなかの一人と一機。
その命その能力すべてを駆使し、アメリカの陰謀に抗い続けた。
サイコフレームは正確にはサイコミュの基礎機能をもつチップをうめこんだ鋼材のことなんだけど、便宜上、作中ではチップ自体をサイコフレームと呼んでいます。