「………………あ?」
気がつくと、そこは変わらずのゼータのシートの上だった。
どうやらいつの間にか眠っていたらしい。
せっかく話せたのに、ブレックスとはサヨナラも言えずお別れになってしまった。
全天周囲モニターで見る外の景色は、ハイヴ内の穴蔵ではなくそこを出た廃墟のただ中。周囲の建築物は、G弾のためか一つ残らず潰れて倒壊している。
どうやら無事に脱出できたらしい。周囲には人一人いない廃墟の中をゼータは疾走している。
「上総、起きたね。すでに超重力圏からは脱出している。とりあえず品川を目指しているから、そこで休もう」
「生きて出られましたの。あの超重力の中から生還できたなんて。本当にサイコフレームはすごいですわ。死んだ人と会話までできましたし」
「ああ、やっぱりできちゃったんだ。ボクにはわからなかったけど。でも、ここまでサイコフレームで強化されたバイオセンサーは危険かもしれない。リミッターをかけてフルには使えないようにしておくよ」
クインマンサに乗ったプルツーみたいになるか。クインマンサの強力すぎるサイコミュは、プルツーが戦場で殺した人達の声を集めて、彼女は精神をやられた。死人の声をきくのは危うい行為かもしれん。
「そういえば、どうしてハロはG弾が重力兵器だと知ってましたの? あれは『対BETAに画期的な兵器』なんて宣伝文句しか出ていなかったはずですわ」
「神様からもらった知識の中にあったんだ。実はBETAの他に、この”G弾”からも地球を守るよう神様から言われている」
「守る? あれって地球を破壊するようなものですの? 人間が作ったものなのに?」
「うん。アメリカの強硬派はあれでBETAのハイヴを全て潰そうとしているみたい。だけど、そうすると地球の重力が大きく狂ってしまい、結果、地球は人間の住めない星になる可能性が高いらしいよ」
ブレックスの言う通りか。あいつも自国の強硬派がヤバイことは肌で感じていたみたいだ。
あのG弾はたしかに横浜ハイヴのBETAを全滅させた。つまりもう完成してしまっていて、政治的な課題さえクリアしてしまえばいつでも使えるということだ。
となると、もうオレ達も急いで行動しなけりゃならない。
「ねぇ。ウェイブライダーで一気にいきませんこと? もうわたくしも操縦はできますわ」
「頭とか腕とかずいぶんひしゃげたんだ。重要度の低い場所は維持するのをやめたからね。だから今は変形できない」
「ええ!? 大丈夫なんですの? 直らなかったら、もう戦闘はできないんじゃありませんこと?」
「大丈夫。メインシステムが無事ならどれだけの破損も修復できるから。人里についたら一度亜空間にしまうよ」
◇ ◇ ◇
建物は残っているものの、住人は避難して誰もいない品川近郊。
とりあえず状態の良い家の一つを仮の宿とした。
ゼータは亜空間に格納して修復にはいり、それが終わるまでここに留まる。
家を整え食事もすまして、やっと落ち着いた。
オレはくつろぎながら、ぼんやりとあの写真を眺めた。
鳴海・平と二人の女の子達の写真だ。結局、これは鳴海にかえすことができなかった。
「上総、それは?」
「わたくし達の恩人の鳴海くん・平くんの写真ですわ。いつかこれを、この
写真を裏返してそれを見るのをやめた。
さて、これからのことををまん丸ロボなハロと話し合おう。
「で、上総。これからどうする? マレーシアのエゥーゴに帰る?」
「いいえ。わたくしにはとてもブレックスの代わりは務まらないし 、この日本でやることが出来ました」
「え? 何だっけ?」
「『日本を守るために戦う』って言葉です。あれはもう英霊達との約束になってしまいました。あれは嘘にしてはいけない気がするんです」
「確かにそうだね。ボクらがここにいるのも彼らのお陰みたいだし」
「それからブレックスにも頼まれました。『アメリカの強硬派を止めてくれ』と。それがG弾などを落とした奴ら。そしてブレックスや鳴海くん平くんその他の仇のようです」
「仇って………まさか復讐!? オペレーションメテオとかソレスタルビーイングとかやっちゃうの!? ハッ! まさか【星の屑作戦】!? アメリカの衛星軌道艦隊に核をぶっ放すとか!?」
「ああっ! なんて魅惑なワード! でもダメです。こんなBETAに滅ぼされかけている世界で、Zガンダムでそれをやったら本当に人類は滅びてしまいます」
本当はやりたいんだけどね。G弾作っている秘密工場を突き止めて破壊して『任務完了』とか言って。『世界を壊すものは根絶する! ゼータがそれを為す!』なんてキメ台詞も言っちゃって。
「でも、言ったからには何かするんだよね。どうするの?」
「こんなことをするような連中には、そのやり方に反対する対抗組織があるはずです。そこに力を貸して強硬派と戦うのです。英霊との約束もあるので、できるなら日本のものがよろしいですわね」
「すごい! 上総が軍師みたいなことを言っている!」
オレの考えじゃなく、ブレックスから教えてもらったことだけどね。
「それで? その組織とかをどうやって探して接触するの? 情報の方はゼータのシステムを使えば、まぁ、さわりくらいは分かると思うけど、それと話をつける方法は?」
「ええ。何一つ頼れるツテなんてありませんわね。ですから、今こそあれに電話をかけてみようと思います。確か”鎧依さん”でしたわね。『日本で助けがほしいときは力になると』おっしゃっていました」
「な、なんだってー!? あの怪しい電話番号をとうとうかけちゃうの!?」
「ハロ。ゼータを急いで修復なさい。一応の用心として電話番号はたどれないよう、ゼータのシステムを使ってかけます。あと、万一の場合の準備も」
オレはもう一度写真を表に返し、鳴海と平の絵に願をかけた。
「鳴海くん、平くん。わたくし達を、あなた達のいた国連軍へと導いてください。あの日語った国の未来に、歩んで進めるように」
写真の中の二人の笑顔がオレに向けられたように感じた。
鎧依との再開。そして夕呼、白銀との邂逅近し!
書かなきゃならないことが多すぎて、本当になかなか会えないんですが。