ゼータと上総   作:空也真朋

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 ようやく『小説家になろう』で書いていたオリジナルが完結しましたので、またしばらくこれを書きます。
 応援よろしくお願いします。


32話 とおい異国にてめぐり逢う

 とおい異国アラスカにてオレと彼女はめぐり逢った。

 さほど時はたっていないのに、みちがえるほどに篁さんは大人になっていた。

 

 「着任、ご苦労さまです山城少尉。【XFJ計画】開発主任の篁唯依中尉です」

 「リダ・カナレス伍長です」

 

 わざわざオレの前に立って敬礼する篁さん。

 ついでに彼女の部下みたいな国連軍の制服をまとった少女も。

 

 何か言えってか。

 やれやれ、意地が悪いな。

 仕方なくオレは篁さんに敬礼を返す。

 

 「お久しぶりです篁さん。もう開発の主任を任されるなんて、優秀ですわね」

 

 「ええ。山城さんも生きていてくれて嬉しいです」

 

 それは皮肉ではなく、本当の彼女の気持ちのように見えた。

 あの日見た、ひたむきな少女だった頃のような顔をしている。

 逃げ出したときの罪悪感の痛みがよみがえってきた。

 

 「篁さん。あの、わたくし……………」

 

 「ようやく返せます」

 

 「返す? わたくし、篁さんに何か貸していた……………」

 

 

 ――――――――パアァァンッ

 

 

 いきなり彼女は手をふりあげ、オレの頬を平手打ちした。

 その音は大自然の空にたかく大きく響いた。

 

 「え、ええええー!? 中尉!?」

 「篁中尉、いったい何を!?」

 

 制服少女も白銀も驚いている。

 そんなオレらの気持ちもかまわず、彼女はスッキリしたような顔で笑った。

 

 「あの時の私の思いです。ようやく返せました」

 

 ……………痛い。

 すごく鋭い平手打ちだった。剣の腕は鈍ってないな。

 されどオレは姿勢は崩さず頬もおさえず、直立不動。

 篁さんから目もそらさない。

 

 「…………気丈なのは相変わらずですね、山城さん」

 

 「ええ。あなたの前で頬をおさえて怯えた目をするなんて、自分が許せませんから」

 

 そんな強がりを言うと、なぜか篁さんはちょっと嬉しそうな顔をした。

 それをあっけにとられて見ていた白銀と制服少女。

 おずおずと白銀が代表で声をかけてきた。

 

 「あ~篁中尉。何やら上総…………山城少尉に遺恨があるようですが、これで『終い』ってことでいいんですか? 任務に支障がでたりは…………」

 

 「ああ、失礼。白銀少尉。無論、小官は任務に山城少尉への個人的感情を持ち込むようなことはいたしません。軍人としてはZガンダムの活躍のおかげで戦術機開発の関心が高まり、計画の賛同者が多数集まったことで進行が早まったことに喜んでもいます。計画の発案者【巌谷中佐】もお礼を言うよう、言っておられました」

 

 篁さんが白銀と話している間、CPオフィサーのカナレス伍長という()は彼女に聞こえないよう小さな声でオレに聞いてきた。

 

 「えっと、ヤマシロ少尉。タカムラ中尉といったい何が?(ヒソヒソ)」

 

 嘘のつけないオレは正直に答えた。

 

 「昔、別れ話がこじれてしまいましたの」

 

 「女同士なのに!?」

 

 ああ、声が大きい!

 ほら、篁さんにジロッと睨まれた。

 

 

 

 

 ともかく無事にアラスカ・ユーコン基地に到着したオレ達。

 車で司令部ビルへ連れていかれ、まずは『プロミネンス計画』の責任者であるクラウス・ハルトウィック大佐に着任の挨拶へと向かった。

 

 そこでうけた説明によると、Zガンダムの活躍は戦術機開発の業界を大きく刺激したようだ。

 この【XFJ計画】も、通常なら1,2年は先になる見通しだったのに驚くほど早く進んで、現在はテストパイロットによる調整段階に移行しているのだという。

 それに加え、香月博士からもたらされた技術によってさらに加熱するであろう、とのことだ。

 どうやら『戦術機技術の発展でG弾不要論を高める』という博士の目論見は順調のようだ。

 

 あと何も言われなかったが、ほっぺの紅葉はやけに注目された。

 

 

 次に案内されたのは、テストパイロットの試験小隊隊長のところだった。

 彼は中東系の壮健な士官で、『中尉』という階級も低すぎると思えるほどに戦士の貫禄のある男だった。

 

 「私はトルコ軍から派遣されているイブラヒム・ドーゥル。階級は中尉だ。試験部隊【アルゴス小隊】のまとめ役のようなものだと思ってほしい」

 

 オレは彼の自己紹介した名前に、ふと聞き覚えがあることに気がついた。だが?

 

 「中尉………ですか?」

 

 「なんだヤマシロ少尉。私の中尉の階級がどうかしたのか?」

 

 「いえ、大尉ではないのですか? 以前に大東亜連合にいたときのことです。中東から流れてきた者に、『イブラヒム・ドーゥル大尉』という高潔な部隊指揮官のお話を聞いたことがあります。その英雄的活躍に助けられた者は多く、たいへん尊敬していると仰っていました。あなたはその『イブラヒム・ドーゥル大尉』ではないのですか?」

 

 「…………………私は中尉だよ。ヤマシロ少尉、軍人にとって階級は重大な意味をもつ。今後、私を『大尉』とは呼ばないように」

 

 なんだ人違いか。つまらんことを言ってドーゥル中尉の機嫌をそこねてしまったな。

 おおかた、同姓同名のその『大尉』が大活躍していることに、コンプレックスでも抱いているのだろう。

 気をつけよう。オレはこういうことに鈍感だからな。

 

 「さて。今日のうちに、うちの小隊と君らを会わせようと思ったが、明日にした方がよさそうだな。今日の所は基地及び格納庫の案内をさせよう。ヤマシロ少尉。明日朝のブリーフィングまでにそれは何とかしておくように」

 

 このほっぺ、そんなに目立つのか。

 どれだけハデな紅葉を作ったんだ篁さんは。

 まだヒリヒリ痛いし。

 

 「どうも申し訳ありませんドーゥル中尉。自分らのせいでスケジュールを遅れさせてしまいましたか?」

 

 白銀がきくと、彼は『謝罪は無用だ』とばかり手をふった。

 

 「いや、どのみち君らの試作戦術機を披露するのはもうしばらく後のことになる。アメリカ側のスタッフがまだ到着していないのでな。こちらの立場的に、アメリカより先に見るわけにはいかんのだよ。ではカナレス伍長。あとは頼んだ」

 

 ドーゥル中尉がオレ達の後ろに控えていたカナレス伍長に言うと、彼女は元気よく応えた。

 

 「了解しました中尉。では私、リダ・カナレス伍長がご案内いたします。お二人とも、ついて来てください」

 

 

 

 だが基地内の案内のはずが、なぜかいきなりCPの休憩室みたいな所に案内された?

 

 「カナレス伍長。これは?」

 

 「その顔で基地内を歩けませんでしょ。はい、これでほっぺを冷やしてここで少し休んでください」

 

 冷たく濡らしたハンカチを渡された。

 

 「あ、ありがとうございます。ええっと、それで彼女らは伍長の仕事仲間ですかしら?」

 

 案内された席の前にはカナレス伍長と同じ制服をきた二人の女性がいたのだ。

 

 「はい。私の仲間を紹介します。私と同じCPオフィサーのニイラム・ラワヌナント軍曹とフェーベ・テオドラキス伍長です」

 

 インド出身という肌の浅黒い眼鏡をかけた理知的そうな女性と、欧州系の背の小さい小動物みたいな()が座っていた。

 コーヒーなんか出されて、歓談する気まんまんだ。

 なんだ、まさか着任していきなり合コンか?

 違うよな。男は白銀一人だし。

 

 「それでヤマシロ少尉。タカムラ中尉と別れたってことは、昔つきあっていたんですか? 女同士ですけど(ワクワクッ)」

 

 なにぃっ!? いったい何を聞いてくるんだこの子は!

 

 「私、じつは同性同士の恋愛に非常に興味があります。タカムラ中尉とどういったお付き合いをされていたのか、教えていただけないでしょうか?(キラリッ)」

 

 ラワヌナント軍曹!? そんなクールな顔できかれても困る!

 

 「あの凜々しいタカムラ中尉の過去とか、すっごい興味があります! まさか『そっち系』の人だったとか、衝撃の事実!(テンション高っ!)」

 

 あわわっテオドラキス伍長! 篁さんをそっち方面にしないで!

 あとで恐いから!

 

 ヤバイ! こいつら、篁さんのゴシップ狙うハイエナだ!

 白銀、たすけてぇー!!

 

 「ああー女同士の会話に男がいるもんじゃないな。ちょっと出ているから、終わったら呼んでくれ。上総」

 

 そう言って白銀は出ていってしまった。

 

 逃げやがった――――――――!!!!!! 

 

 

 

 

 




 ここのトータル・イクリプスは原作より半年ばかり進行が早いです。
 これは作中で説明してあるように、Zガンダムの活躍で戦術機の関心がおおいに高まったためです。
 さらに夕呼さんの工作で、いろんなイベントが早まる予定です。
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