まさか日本からはるか離れたアラスカで、篁さんと再会するとは思わなかった。
だが衝撃の再会は、篁さんだけではなかった。
格納庫を案内されている途中のことだ。
アルゴス試験小隊の三人に偶然出会った。
彼らはカリキュラムを終えた直後らしく、衛士強化装備で何やら話していた。
そこの北欧系美女の衛士がオレたちに気がつき、声をかけてきた。
「あら、カナレス伍長。その二人が今日、日本からいらした?」
「はいブレーメル少尉。あ、本当は明日会う予定でしたけど、今紹介しちゃいますね」
紹介された三人は以下のとおり。
イタリア軍から派遣されているヴァレリオ・ジアコーザ少尉。通称VG。ラテン系の兄ちゃんだ。
スウェーデン軍からのステラ・ブレーメル少尉。北欧美人で巨乳。衛士強化装備だと目のやり場に困るね。
ネパール軍のタリサ・マナンダル少尉。アジア系の子供みたいな奴だ。いや女の子なのだが、ワルガキみたいな感じだ。大東亜連合にはよくこんな子供がいたな。
が、そいつはオレの前に歩み出て、顔をのぞきこんで言った。
「よお。また会ったな、お姫様衛士」
「え? どこかで…………ああっ! ネパール軍の!」
昔、エゥーゴの式典でオレにちょっかいかけてきたアイツか!
タリサ・マナンダル。衛士の腕を見込まれて国連軍テストパイロットに派遣されたという奴だったが、まさかここにいたとは!
なんなんだ、このユーコン基地は! なぜにこうも心臓の悪い再会が続く!?
「なんだ、知り合いなのかタリサ」
「おおVG。コイツ、大東亜連合の傭兵団のお姫様だったんだぜ。なんで国連軍にはいったのか知らねーけど」
「唯依姫に続いて二人目のお姫様か。上総姫と呼ぼう」
なっ! 上総姫ってなんなの!?
「ふふっ。でもタカムラ中尉より話しやすそうね。日本のお姫様の衛士ってちょっと興味があるから、いろいろ聞いてみたいわ」
なななっ!?
これはマズイ!
これは説明して訂正せねば!
「よろしいですか、みなさん。篁さんと比べては、わたくしなど”お姫様”などと呼ばれるようなものではありません。まったく的外れな認識です」
「はぁ? お姫様やってたじゃんかよ。大東亜連合の式典で
「あ、あれは忘れてください! 篁さんの篁家は武家最高峰の五摂家に連なる”譜代”と呼ばれる名門の家柄。それに比べ我が山城家は”外様”という、血筋では大きく劣る家格なのです。つまりですね……」
うんたらかんたらクドクドクド……………
「……………というわけなのです。わたくしは只一般の武家の娘。”姫”などという呼称は過分にすぎます。わかりましたか? とくにマナンダル少尉」
ポカーーン
みんな一様に呆けた顔をしている。
そして一番に認識をあらためさせたい
「ムニャムニャ…………んん? 終わったか、お姫様?」
「マナンダル少尉! あなた眠ってらしたの!? わたくしが説明している間ずっと!?」
「任務中でもねぇのに、いちいち呼び方めんどくせぇなぁ。タリサでいいよ。ふわーぁあ」
アクビやめろ! いかにホトケの山城さんでも怒っちゃうよ!
「いいえ、あなたなんて”サル”でじゅうぶんです! これから”おサルさん”と呼んでさしあげますわ!」
「ぬわんだとぉう!? 上等だぁ!」
オレに飛びかかろうとした
迎撃体勢をとったオレには白銀がおさえていた。
「あんたも、お互い苦労するな」
「いや、上総は普段は苦労をかけるような奴じゃないんだが…………」
白銀はチラリと
「そいつと壊滅的に相性が悪いらしい。昔の俺の仲間にもこんな感じの二人がいた」
◇ ◇ ◇
そしてその夜。
オレ達はアルゴス小隊の連中に連れられ、リルフォートの街へと来た。
ここはユーコン基地に所属する軍人・軍属とその家族をささえる、基地内に造られた都市だ。
そしてそこにある【PoleStar】というバーで歓迎をうけた。
「それじゃ、お二人さんの着任を祝ってカンパーイ!」
「よろしくね。今日はいないけど、ここにはナタリーって友達の子が働いているから、あとで紹介するわね」
「ま、来たんならしょうがねぇ。せいぜい、がんばんな」
アルゴス小隊はそんな歓迎の言葉を述べる。
気のいい奴らみたいで、しばらく共にするのは申し分ない連中だ(サル以外)。
「あなた方と行動を共にしますけど、ここのテストパイロットになったわけじゃないんですよね」
「あーあ、そうなんだってな。お二人さんの任務ってのがイマイチわかんねぇんだが、機密じゃなけりゃ説明していただけないかい?」
「ええ。俺たちの任務は【ガンダム】という新概念の試作戦術機の演習をして…………」
つまりオレ達はガンダムの演習をしてその圧倒的な力を見せつける。
そして別便できている政治家や技術者が、その派生技術をここに集まっている各国の戦術機屋に売りつけるのだ。
もちろん目玉は白銀が香月博士に作らせた新型OS【
商売を通じて各国へのつなぎをつくると同時に、各国の戦術機技術の底上げ。
それによって【G弾不要論】を高めるのが目的だ。
「つまり、お二人さんはセールスマンってわけか。しかし世界中の戦術機技術が集まっているこのユーコン基地で、売れるようなモンなんて出せるのかねぇ」
「あらVG。あなた聞いたことないの? たった一機で六万ものBETAを殲滅したって噂の戦術機のことを。その”Z”がきてるのよ」
「あれか!? けどよ。そんなトンデモ戦術機がここ以外でできてりゃ、プロミネンスもアメリカも何なんだって話だぜ。なぁタケル。いくらなんでもそりゃガセだろ?」
「え、ええっとですね。それは演習を見て判断していただけたらってことで」
「六万はどうか知らねぇけどよ。そこのお姫様はマレーシアでたった一機で光線級吶喊やっていたぜ。重金属雲もはらねぇ正規軍の応援もナシでな」
そしてみんながオレに注目。
さっきまで気持ち良さそうに酔っ払いの顔をしていたVGもシラフの顔になってオレを見つめている。
「お、おい。なぁ、その試作戦術機って…………」
「質問はおやめになってください。こちらの機密に関わることです。白銀の言う通り演習をお待ちになってください」
そう言うと、アルゴスの皆はハッとしたような顔をした。
「あ、ああ、そうだったな。酔いがまわって脇が甘くなってたぜ」
「テストパイロットとして失態ね。それじゃ話をかえて、コイバナでもしましょうか」
「あらステラさん。あなたの懸想している方でも聞かせていただけるのかしら?」
「私じゃなくて、あなた」
はっ? オレ? なんか話せることってあったっけ?………………………………………ないな。
我ながら見事な枯れ衛士だ。
「残念ですが、聞かせられるような睦事など経験したことありません。恥ずかしながら、そちらの方面は、とんと疎いものでして」
「タカムラ中尉とも? カナレス伍長が面白い話をしてくれたわよ」
げふぅ! あンのゴシップハイエナめ! なに広めちゃってんの!?
「おいおいステラ。唯依姫がどうしたって? たしかに同じ日本人で境遇なんかも似てそうだけどよ。どんなコイバナ聞いたんだ?」
「タカムラ中尉、カズサに逢うなりいきなり頬をひっぱたいたんですって。ほら、カズサの左の頬がうっすら赤くなっているでしょう? 昔ひどい別れ方をした、そのケジメですって」
「な、なにいぃぃぃぃ!!!? それじゃ、上総姫は唯依姫と女同士でゴニョゴニョゴニョ!!?」
ゴニョゴニョゴニョってなんだ! 何を言おうとして口ごもっている!?
「それって高貴なお方の
サルッ! 露骨に離れるな! 間違ってもお前なんかに手を出さねぇよ!
とにかく落ち着けオレ! 落ち着いて誤解を解くんだ!
こんなウワサが篁さんの耳に入ったら、オレは破滅だ!!
「女の友情はたまに恋愛関係に似ることがありますわ。別れ話がこじれて泣かせてしまうこともありますのよ」
「友達関係に別れ話とかあるなんて初耳だわ。私、友達はたくさんいるけど、別れ話なんてしたことないわよ。あと、泣かせたの? あのタカムラ中尉を」
くはっ! もうみんな確信に満ちた目でオレを見ている!
だれか助けてえぇーーーー!!!!