ゼータと上総   作:空也真朋

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 ようやくアルゴス小隊を全員出せます。
 紹介だけで四話も使ってしまいました。
 二次創作なのにね。


34話 狂犬ブリッジス

 ※時間が少しだけ戻ります。 

 

 篁唯依Side

 

 ここ、ユーコン基地の実質的な司令官であるプロミネンス計画最高責任者のクラウス・ハルトウィック大佐は、着任の挨拶に来た山城さんと白銀少尉との話をしめくくった。

 

 「着任、ご苦労。ユーコン基地はシロガネ、ヤマシロ両少尉を歓迎する。君らは、このタカムラ中尉が主任として指揮下にある【アルゴス試験小隊】と行動を共にしてもらう。では、指揮官のドゥール中尉に挨拶をしてきたまえ」

 

 それにしてもハルトウィック大佐は二人を妙に詮索していた。

 二人を見る目も警戒するようにかなり強い。

 やはり私のつけた山城さんの頬の紅葉がまずかったか。やりすぎた。

 だが、大佐が小さな声でつぶやいた言葉が聞こえた。

 

 (若いな。交渉事にも慣れていない。まさかあのコオヅキが、本当にただの衛士(パイロット)を寄越すとはな)

 

 …………? 大佐はどんな人材が来ると思ったのだろう。

 そう思いつつも、私も二人に続き部屋から出ようとしたのだが。

 

 「ああ、すまんがタカムラ中尉。君はこのあと残ってくれ。少し話したいことがある」

 

 「は? はい。では二人の案内をカナレス伍長に頼みます。引き継ぎをいたしますので、少々お待ちください」

 

 私はカナレス伍長を呼び戻して二人を頼んだあと、部屋に大佐と二人きりになった。

 

 「中尉自ら彼らの案内をしようとしたのか? 主任のやることではないと思うが」

 

 「上からの意向も伝えたいと思いましたもので。それで自分への話とは何なのでしょう?」

 

 嘘だ。私が山城さんを案内したかったのだが、仕方がない。

 

 「うむ。君にいくつか聞きたいのだが……………」

 

 私はいくつかの大佐の質問に、機密以外を答えた。

 その内容は、やはり”z”に関してのことだった。

 

 

 「……………ふむ、そうか。到着したうちの一機はたしかに”Z”であるわけだね」

 

 「はい。あの日、崩壊した京都で私が見たそれでまちがいありません。失礼ですがハルトウィック大佐。自分は”Z"の確認のために残されたのでしょうか?」

 

 「今回の件。コオヅキがやけに強気なのが気になってね。まさかこのユーコンで戦術機技術の売り込みをするとは」

 

 たしかに私も”z”のことを知らねば無謀と思ったろう。

 しかしさっきから大佐が言っている『コオヅキ』とは何者なのだろう?

 大佐は微かに憂いをたたえた表情で続ける。

 

 「明星作戦によるG弾投下。あれを境に国連の主導計画派と予備計画派。両派閥の動きが活発になった。それにこのユーコンも巻き込まれようとしている」

 

 いきなり内部事情を話しはじめた。

 この話は、たかが中尉の私が聞いて良い類いのものか?

 

 「予備計画の概要は知らされています。横浜を壊滅したあのおそるべきG弾をユーラシア全土に撃ち、BETA殲滅をはかるものだとか」

 

 「それを知らされているなら話は早い。それに反対する主導計画派が、連携を持ちかけてきているのだ。この”Z”の演習もその一環だ」

 

 私は叔父様がユーコン基地へ来訪したときのことを思い出した。

 叔父様は『この演習には様々な上の思惑がからんでいる』と言っていた。

 多分、このことを言っていたのだろう。

 そして叔父様がこのユーコン基地に来たのも、その連携の交渉のためだろう。

 

 「失礼ですが大佐は、BETAを駆逐する手段としてのG弾の使用を、どのようにお考えでしょうか?」

 

 本来ならたかが私ごときが大佐ほどの人物にしていい質問ではない。

 だがなんとなくだが、この質問の答えこそが私が引きとめられた理由のように思えた。

 

 「無論、反対だ。各国の意向としても、ユーラシアを重力異常にさらす手段はとれない」

 

 「では………」

 

 連携に参加するのか、とおもったのだが。

 大佐はいきなり強く叫ぶように言った。

 

 「だが、国連の主導計画にも疑問をもっている。あえて言うなら、あれは人類最大の詐欺犯罪だ。おとぎ話に天文学的な予算を注ぎ込む愚行だとすら思う」

 

 ――――――――?!!

 

 そこまで言うのか。怒気すら感じる。

 大佐がここまで嫌う主導計画とはいったい?

 

 「君の叔父のイワヤ中佐に伝えてほしい。こちらがそちらにのるとしても、消極的協力となるだろう。そして国連日本支部の計画にのるつもりはない。この演習で何を見せられようと、私の意思が変わることは、決してない」

 

 

 

 

 

 ♠♢♣♡♠♢♣♡

 

 ユウヤ・ブリッジスSide

 

 アメリカ陸軍グレームレイク基地

 

 

 俺の名はユウヤ・ブリッジス。階級は少尉。米国陸軍の開発衛士(テストパイロット)だ。

 現在はここグレームレイク基地でF-22EMDラプターの実証試験をしている。

 だがある日、上官に呼び出され突然移動を告げられた。

 

 「ユウヤ・ブリッジス。貴官を国連軍へ出向させる。アラスカ・ユーコン基地にて、そこで行われている日米共同戦術機改修計画【XFJ計画】の開発衛士(テストパイロット)をしてほしい」

 

 こいつは上への追従だけでこの地位についている典型的なクソ上官。

 だが、この命令はシャレにならない最悪のクソだった。

 

 「なぜだ!? なぜ俺がアラスカくんだり、僻地にとばされなきゃならない!?」

 

 「貴様は開発衛士(テストパイロット)としてはたしかに優秀だ。【アメリカ最高】という称号がついたのもうなずける」

 

 俺は手がけた、あらゆるテスト機体の最高値をたたき出すことから、いつしかこう呼ばれるようになった。これは俺の自慢でもある。

 

 「しかし、やりすぎなのだよ。このまま態度を改めなければ死人が出るという意見も多数だ」

 

 「ふざけるな! 前線じゃ多数の人間が死んでいるんだろ! 後方とはいえ、衛士(パイロット)が死ぬのにビビッってどうすんだよ!?」

 

 「BETAに殺されるのと人間に殺されるのは大きく意味がちがう。”最高”の裏にある貴様のもう一つの名を教えてやろう。”狂犬”だ。いずれ貴様の暴走は手に負えなくなる。見えている破滅に何の対処もしないようでは、上官として無能なのだよ」

 

 余計なマネをしなくても、とっくに無能だろう!

 

 「てンめぇーーッ!!!」

 

 抑えきれない衝動に拳を握る。

 このままヤツのニヤケ(ヅラ)を消したくて仕方がなかった。

 だから、俺は――――――

 

 「フッ。その拳は上官を殴るか? まさに狂犬だな。だがその拳を使う前に私の話を聞け。これから言う私の課題に応えられたなら、この話を流してもいい」

 

 「なに?」

 

 まだ拳は握りしめたまま。

 だが、体が止まる。

 この先を聞きたいほどには、理性がはたらいた。

 

 「それどころか達成できれば、貴様は名実ともに【アメリカ最高】の称号を手にできるやもしれんぞ。貴様にピッタリの仕事だ」

 

 「………………言ってみろ」

 

 「ははは、やる気まんまんだな。さすが【アメリカ最高】」

 

 イラッ 

 

 「部下をなぶるのが有能な上官か? 俺の理性が拳をおさえられている間に、さっさと課題とやらを言え!」 

 

 クソ上官(ヤツ)はもったいぶって言った。

 

 「知っているか? ”Z”の伝説を。お前の大嫌いな日本から生まれた、最高にゴキゲンな戦術機伝説だ」

 

 「ああ、ホラだろ」

 

 曰く、たった一晩で六万のBETAを殲滅した。

 曰く、時速六百キロで地上を疾走した。

 曰く、航空機に変形をした。

 

 まったく物も言えない。

 こんな荒唐無稽な話で自分を大きく見せようとする日本人の姑息さには呆れるばかりだ。

 

 「それがただのホラではないらしい。近日それをユーコンに出し、演習を行うそうだ」

 

 「なに? あのムチャクチャな話を納得させられるだけの機体を出せるのか?」

 

 ピタリ

 ヤツは俺を指刺して言った。

 

 「ユウヤ・ブリッジス。貴様、その”z”の演習の相手をつとめてこい。そして墜とせ。機体は何を使っても良いそうだ」

 

 「――――――ほう。では、いま手がけているラプターでも?」

 

 「許可はとれる。もっとも、負けたら貴様の帰る場所はないがな」

 

 俺はやっと拳をひらくことが出来た。

 

 「なるほど。上が何を考えているかわかったぜ。たしかに思った通りのクソ任務だ」

 

 「詮索はよせ。それでは返事を聞かせて貰おう、狂犬」

 

 クソ上官(ヤツ)は相変わらずクソのようなニヤケ笑い。

 だが、俺も同じように「ニヤリ」と嗤う。

 

 「初めてアンタに感謝するぜクソ上官。たしかにこれは俺向きの仕事だ」

 

 

 俺はクソ上官に心からの敬礼をした。

 

 

 

 




 ライバル登場!
 【アメリカ最高】と【狂犬】の二つの名をもつユウヤ・ブリッジスの実力は?
 原作主人公対決なるか!?
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