ようやくアメリカ側のスタッフが今日到着するそうだ。
やっとオレ達の任務であるガンダムの演習を行なえる。
演習は明日の予定だ。
さて、演習前日である今日朝のブリーフィング。
だが急遽本日、アルゴス小隊に広報のための撮影任務がはいったことをドーゥル中尉が告げた。演習場の整備や撮影機材の関係だそうだ。
内容はソ連の戦術機とこちらの
だがオレはこれに、大いなる破滅の危機があることを発見した。
この破滅をさけるべく、オレは果敢に諫言を行うことを決行する。
「東西両陣営の雄・アメリカとソビエトの実験機が、母なる地球の象徴であるアラスカの大自然を背景に、エレメントを組んで飛ぶ――――ですか。素敵な絵ですわね。まさに国連の提唱する『人類の大同団結ここにあり!』の素晴らしいスチールとなるでしょう。もし…………」
タリサをチラリ見る。大いなる破滅の元凶を。
「乗るのが、このおサルさんでなければッ、ですがっ!」
「ああー? どういうことだテメー! アタシの腕がこの程度もできないヘッポコとでも言うのかぁ!?」
そう。こちらの
コイツが、共産主義思想で脳をやられているであろうソ連の衛士となかよく撮影などできるはずがない。
「マナンダル少尉! 発言は許可をとってからにしろ。ヤマシロ少尉も仲間をサルと呼ぶのはやめろ」
どうでもいいがこのブリーフィングの光景。
『とある学園の授業風景』とかいっても通用しそうだね。
とにかく仕切り直し。
「衛士としての腕はけなしません。むしろ大きく秀でたものがあることを認めましょう。ですがこの任務に求められるのは品性。マナンダル少尉にソ連衛士と仲良く撮影飛行ができるとは思えません」
全員の顔を見回したが、一人をのぞいて全員「もっともだ」と言う顔。
一人はもちろん『強ければよかろうなのだ!』なバーバリアン思想の
「この任務に限っては、ジアコーザ少尉もしくはブレーメル少尉。どちらかが代わりに
しかしオレの誠を尽くした諫言は届かない。
アルゴスは破滅の昏い道を歩み行く。
「まさに愚考だな。撮影の求める飛行はかなり難易度が高い。両名ともしかるべき時間があればこなすだろうが、撮影は今日だ。
「もちろんです! ヤマシロの心配することなど何ひとつ、まったく起こりません!」
盛大にフラグ立ててるし。
さて、演習前日の今日よりやっとZガンダムに乗れる。
オレと白銀の今日の予定は、互いのガンダムの機動チェック。アルゴスは撮影だ。
正式な衛士となったいま、さすがにオレ一人だけパイロットスーツはもう着れないので、あの恥ずかしい衛士強化装備を着なければならない。ただし対G性能は普通のものより格段に向上させてある。
アルゴス小隊とともに衛士強化装備を着て格納庫に集合した。
互いのチームごとに今日の予定を確認する。
「上総。タリサより自分の方は大丈夫なのか? 俺達の演習は明日なんだぞ」
「ご心配にはおよびませんわ。わたくしは
「いや、俺達の任務は品性より腕の方が重要なんだが?」
「山城上総に隙は微塵もありませんっ! わたくしの心配は雫の一滴すら必要ありませんことよ!」
「俺には、そのセリフがフラグをたてているようにしか聞こえない」
白銀が何か言っているが無視だ。
隣のアルゴス小隊にも堂々と宣言する。
「衆人観衆の中でハデに転んで泣いちまえ。お姫様」
「ソ連衛士と乱闘して営倉にブチ込まれなさい。おサルさん」
「ぐぬぬうぅ!」 と、にらみ合うオレ達。
そこにアルゴス常識人二人がたしなめる。
「やめなさいタリサ。二人とも任務で争わないの。ミスが出ないよう、互いにフォローしあうのがチームよ」
「まっ、タリサのお守りはこちらの役目だ。互いに相手の仕事には口出しせず、自分の仕事を完璧にこなそうぜ」
しかし、これで互いに任務に出るのは少しおもしろくない。だったら………
「ではタリサさん。わたくしと賭けをいたしましょう」
「はぁ? 何をだよ」
「もし、あなたが撮影任務を滞りなくこなしたなら、わたくしは以後あなたをサル呼ばわりはいたしません。そちらも、わたくしが演習を完璧にこなしたなら”お姫様”と呼ぶのをおやめなさい」
ステラ、VGは「なるほど」というようにうなずく。
「いいんじゃないかしら? 仲直りのきっかけになりそうだし」
仲直り? 的外れだなステラさんよ。
オレは確信している。以後もオレはアイツを『サル』と呼び続けることを。
そしてアイツのお姫様呼ばわりをやめさせる完璧なプランだ。
「整備の連中に面白いバクチを提供してやれそうだぜ。タケル。あんたもやろうぜ!」
まるで銀行のようなバクチだなVGさんよ。
【オレの成功・
「仕方ないか。上総のお守りは俺の役目だしな」
お守りなど必要ない。オレは完璧だ!
「しかしよタリサ。真面目な話、さすがにここまで舐められっぱなしじゃ、同じアルゴスとして立つ瀬ないぜ」
「そうね。衛士は戦闘だけじゃなく、あらゆる状況に対応し、滞りなく任務をこなすことも重要な資質よ」
「ああ、わかっているよ。ガキじゃないことを証明すりゃいいんだろ? ひとつソ連の冷血女どもと仲良く握手でもしてくるぜ」
撮影任務の機体搭乗前に、アルゴスの三人はソ連衛士の待機所へと向かった。
これは見のがせない。
「白銀、わたくしも行ってきますわ。あのおサルは確実にやらかします。なので決定的瞬間を見て、悪役令嬢のごとく笑ってさしあげねば」
「……………ほどほどにな。本当に仲が良いな、お前ら」
さて。ソビエトチームの待機所。
そこのソ連女衛士に、今日の撮影フレンドリーによろしくをしに行った
―――――――パアァァァン!!!
「……なっ……にすんだゴルァーー!!(怒)」
握手に差し出した手を見事に振り払われました。
予定通り悪役令嬢のごとく。気高く声を響かせて。
「おーっほほほほほ! さすがは冷血ソビエト。おサルさんと握る手は持っていないということですか」
幼い雰囲気の少女衛士を側に連れているソビエトチームの女衛士は、そんなオレをジロリと見る。
「馬鹿笑いはやめろ享楽主義者。人前で声をたてて笑うなど、お前は本当に衛士か? 西側の衛士育成機関は欠陥だらけのようだな」
ムカッ。
「山百合にケンカをお売りになる? だいたい何ですの、その子は! そんな子供を連れ回し侍らせ、くっつきながら待機なさるのがソビエト衛士の流儀でいらっしゃいますの!?」
少女に指刺して言うと、女衛士は指先から少女を守るように前に立つ。
「………………イーニァはれっきとした我が国の衛士だ。復座仕様となっている私達の機体に、私とともに搭乗する大切なパートナーだ」
なにぃ!? たしかに衛士強化装備をつけてはいるが、訓練兵かと思ったぞ。
「我々はなれ合いを好まない。二度と近寄るな!……………いや、貴様。さっきイーニァを侮辱したな。その罪、安くはない。覚悟しておくんだな!」
うわっ視線イタタッ痛い!
ヤバイ! もしかしてオレもやらかした!?