―――――「くううっ! なんてヤツッ!」
また何度目かになる、背後へまわってのロックオン。
ゼータ相手にこの状態になったならば、この世界のいかなる戦術機も逃れる術などない。
――――そのはずだった。
「うくっ、またっ!」
だがチェルミナートルは、またしても瞬間にロックを外した。
あろうことか、ヤツは逆にこっちの背後へまわろうとする!
その気配を瞬時に察知したオレは、機体を最小半径で旋回させ、またしても相手の背後を狙う!
だがさらにさらに、ヤツは複雑すぎる螺旋機動でまわりこむ!
―――――信じられない! 本当にコレが戦術機の動きか!?
A級ニュータイプ能力を持ち、グリプス戦役随一のモビルスーツ【Zガンダム】を駆っているオレをして、そんな驚愕をおぼえる。
信じられないことに、このソ連機・チェルミナートルはゼータと互角の機動戦を為している。
その様は正に荒れる波濤か暴れる狂鳥。
最小半径で暴風のように飛び狂い、疾風の速さで旋回機動をとり続ける。正に神業!
「だったら、もう出し惜しみはしません! バイオセンサー起動!」
ニュータイプ能力も”先読”みまで深化。
光線級を相手にする高機動モードになると、常に背後をとり続けるようになった。
だが、このZガンダム。ロックオン照射はできるものの、じつは銃器を装備していないのだ。
いや、実弾装備なんてしてないこちらの方が普通なのだが。
実体の伴わないロックオンなんて無視されるので、ゼータとチェルミナートルはもつれ合うように互いに背後をとりあう。
――――くそっ! 撃てないのが本当につらい!
だが、どれだけ難しかろうと、背後を完全にとってコイツを止めるしかない。
しかしこんな攻防は、まるで本家【Zガンダム】のモビルスーツ戦だぞ。
チラリ視界の先に見えた輸送機にあやまる。
航空路の真上でこんなことをしてて、着陸できないでごめんなさい。
――――――――何故だ!? なぜ私達より上をいく?
わたしたちより優秀なやつなんていたら―――
わたしたち、いらなくなっちゃう!
プラーフカを! プラーフカをもう一段階あげてください!
なんか、中の
オレのニュータイプ能力は戦闘以外はポンコツで、見える『色』があさっての方向にいってしまうこともしばしば。
こんな風に相手の思念が言語化までして聞こえるなんてことは初めてだ。
それにしても奇妙なのは、中の二人の考えていることが完全に一致している。
本当に寸分違うことなく完全に同じ?
――――「うっ!? うああっ!?」
チェルミナートルからの
と同時、ヤツはさらに荒れ狂い、動きは獣じみたものへと変化する。
”先読み”で見るヤツの攻撃が加速度的に増えていく。
雷の雨を捌いている気分だ。
躱す躱す躱す躱す躱す躱す躱す躱す躱す! 躱…………
タタッ タタタタタタタタタタタッ
――――「なっ!?」
完全な死角から35mm弾が飛んできた。
反射的に避けはしたもののおどろいた。
コイツ、ニュータイプを超えてきた!?
くそっ! もう出し惜しみなんかしてられないっ!
「バイオセンサー、フル稼働! ハロ、ついてきてください。わたくしは止まりませんから!」
「ああ! 止まるんじゃねぇぞ上総!」
バイオセンサーをフルに稼働した後も―――
驚いたことに、それでもチェルミナートルはこのドッグファイトについてきた。
鋭いプレッシャーと複雑すぎる機動は、ときにZガンダムを圧倒した。
だが、その恐るべき機体とはうらはらに。
きこえる姉妹の思念は悲鳴となり、意味不明なものとなっていった。
――――そうか。彼女らも止まれないんだな。
この攻防を穏便にすませることは不可能だ。そう見切った。
だったら―――抜く!
無限とも思えるドッグファイト。
躱し躱されの螺旋から、ようやく二機が止まる瞬間がきた。
オレはビームサーベルを抜き、切っ先はチェルミナートルの管制ユニットへ。
相手はゼータのコクピットに突撃砲をロックオン。
ピタリ互いの急所を狙ったまま、どちらも微塵も動けない。
緊張でヒリつくオレに、ハロは心配そうにたしなめた。
「上総。ぜったいに『ブスッ』とやらないで。相手が実弾であろうと、ゼータのコクピットブロックは貫けないから。殺っちゃうのはもちろん、機体に傷つけるのもダメだよ」
「………ええ。わかっていますが、抜かされましたわ。いったい何なんですの? A級ニュータイプのわたくしと互角の存在だなんて」
「ソ連の機体だよね。だったら強化人間みたいなものじゃないかな。それよりこれからどうする? 相手に撃たせて終わりにする?」
「それもよくありませんわね。相手の立場を追い込んでしまうかもしれません」
とにかくもう一度呼びかけてみようか、と考えていたときだ。
いきなり近距離通信がはいった。
『双方、武器をおろせ。互いの
白銀の声!?
気がつくと、いつの間にか近距離にνガンダムがきていた。
もっとも武装は何も持たずの丸腰だ。
νガンダムは互いの腕が交差するあたりにとまった。互いを牽制するように。
「白銀。来ましたか」
『アーガマ1だ。アーガマ2、まずはそちらから武装をおさめて帰投しろ』
【アーガマ】がオレ達のコールサインだ。
もちろん、Zガンダムの母艦からとった。
「…………アーガマ2了解。これより帰還いたしますわ」
オレはビームサーベルをおさめると、ゆっくりとチェルミナートルからはなれていく。
後方を確認したが、チェルミナートルは
やがて白銀もこちらに来ると、チェルミナートルもソ連側の基地へと進路をとって小さくなっていった。
微かな戦闘の余韻を残してこちらも帰投する。
――――「しかし乗ってたの、本当に人間かな?」
帰還の途中、ポツリとハロが言った。
「ハロが言うと奇妙な感じがしますね。そう感じるほどの腕前でしたが、ちゃんと人間でしてよ。ニュータイプ能力で二人の搭乗者の意思を感じましたもの」
「いや操縦技術もだけどさ。じつは
「………………え?」
つまり本来は、内臓が締め上げられ圧壊するほどのGが、
それほどの超加速Gの中に居たのは相手も同じ。
……………だとしたら?
「ハロ。相手の”対Gシステム”がこちらより優れている可能性はあるのでしょうか?」
「宙間戦闘がメインのモビルスーツより優れているならすごいねぇ。戦術機なのに」
神クラスの怪談聞いた時みたいに背筋がゾクリとした。
「………………化け物?」
紅の姉妹がZガンダムにビックリする話かと思いきや、上総が紅の姉妹にビックリするお話でした。
機体同士の戦いって初めて書きましたけど、難しかった!
このあとユウヤともやるんですよね。上手く書けるかなあ(不安)
次回はそのユウヤがバトルを見た感想です。