ゼータと上総   作:空也真朋

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04話 ゼータ対BETA

 この体にかすかに残る記憶。”嵐山基地”というワードをもとに、その辺りで通信が飛び交っている場所を重点的に調べた。

 やがて、現時点でBETAの東進を阻んでいる戦線をつきとめた。そこの部隊は愛宕、鳥ヶ岳間に防衛線を構築。そこの山稜線で斜面を活かした陣地を作って防衛をしているらしい。

 さっそくそこへゼータを向かわせた。

 

 到着してみると、だがその陣地はすでに崩壊。戦術機はほぼ残骸となっており、不気味に蠢く戦車級BETAの餌場となっていた。

 そこの隊長機らしき機体から微かに全方位通信が流れていた。

 

 『………我ら………斯衛軍332独立警護中隊……奮戦………虚しく………ここに終わる。どうか……我らの挺身を無駄にせず………後に続く者があらんことを…………中隊指揮官如月…………切に……祈る……』

 

 この通信を聞いた瞬間、オレの中で何かがはじけた。

 オレの体は勝手に動き、ゼ-タの俊足で瞬時に隊長機に到着。

 ビームライフルを撃ちまくり、その隊長機にまとわりつくBETAを即時に排除。

 そして勝手に口がその隊長機に通信で呼びかけてしまった。

 

 「如月中尉! ご無事ですか!?」

 

 『な、なんだその機体は!? いったい、どこの………』プッ。

 

 通信をハロに強制的に切られた。

 

 「上総、何やっちゃってんの!? 現地の組織なり部隊なりの接触は、ちゃんと計画たててやんないと危ないでしょ!」

 

 「え、ええ。迂闊でしたわ。……………ですがハロ。かの隊長機に一言だけお願いいたします」

 

 オレの頼みで、ハロはしぶしぶつないだ。

 オレ自身、何故この隊長殿が気にかかるのかがわからない。

 もしかしてこの上総に縁ある者か?

 

 「この陣地はわたくしが引き継ぎます。貴官は撤退を。どうかご無事で」

 

 それだけ言って切断。

 向こうから通信が返ってきたようだが、無視。

 

 「ハロ、移動しますわ。向かってくるBETAは迎撃」

 

 次の行動としてゼータをその場から移動させた。

 理由はゼータが来た途端、何故かBETAが一斉にゼータに向かってきたからだ。戦術機を咀嚼していたBETAすら食事をやめてゼータに向かってくる。

 つまり、奴らをここから引き離すことに最適。生きている者がいたなら逃げられるだろう。

 

 

 さて、Zガンダム単独の防衛戦開始。

 オレはこの防衛線の射撃陣地の一つ、見晴らしの良い場所にゼータを据えた。

 BETAはやはり吸い込まれるように次々とゼータに向かってくる。

 この子の記憶、座学で『BETAはより高性能な演算機能が搭載されている機体を優先して襲う』の教本通り、Zガンダムを狙ってきたのだ。 

 もちろん、オレはそれを迎え撃つ。

 

 「貴様のような虫ケラがいるからいつまでも掃除が終わらないのですわ!」

 

 「そんなに我らが秋津洲(あきつしま)を穢したいんですの? 消えなさい!」

 

 「お遊戯でやっているではなくてよぉぉぉぉ!!!」

 

 この()自身の言葉なんじゃないかと思えるセリフを吐きながら、オレはビームライフルで次々と迫り来るBETAを狩っていく。

 ビームライフルの威力はやはり素晴らしく、戦術機の重火器ではフルオートで5秒は撃ち込まねば倒せない大型の要撃級BETAも一発でダウン。小型の戦車級BETAなら一発で10匹近く倒せてしまう。

 

 この高火力、連射速射の高回転により、街道を次々上ってくるBETAも、Zガンダム一体で完全に阻んでしまっている。

 

 されどいくら撃墜してもまるで数が減らない。一時間近くビームライフルを撃ち続けてているのに、倒した先からBETAは次々と沸きだし、終わる気配は微塵もない。

 

 「いやぁノリノリだね上総。CPにハッキングしたデータリンクから計算してみると、あと十時間は続くから楽しんで♡」

 

 「楽しめませんわ! 面倒ですわ。ハイパー・メガ・ランチャーを使わせなさい!」

 

 ハイパー・メガ・ランチャー。

 

 Zガンダムの大口径ビーム兵器。あれならこの無限作業とも思えるBETA殲滅も短時間で終わらせられるはず。しかし………

 

 「ゴメン。あれを使えるほどエネルギー供給が間に合っていない。根性のビームライフル無双でがんばって」

 

 根性のビームライフル無双? 何その嫌なネーミング。

 ますますやめたくなったよ!

 

 「だったら交代なさい! 指が疲れましたわ! ゼータはあなた自身の体なんだから自分で撃てるでしょう! ユーハヴコントロール!」

 

 「ノーコントロール。いやぁ、戦闘してないノーマル時なら問題ないんだけどね。戦闘中は熱核反応炉の管理がシビアになるし、機体と砲身の冷却、エネルギー効率化、ダメージコントロール、周囲レーダー警戒とやることが山のようにあって、とても戦闘機動にまで手がまわらないんだよ。だからニュータイプ様におまかせします」

 

 「ああもう! 怒るに怒れない論理的な理由を! 元は晴郎だったくせになまいきですわ!」

 

 ああ、まったく終わらないこの作業。まったく催眠誘導でも欲しい………

 

 

 

 

 ピキーーン

 

 ――――――!?

 

 何だ? いま、もの凄く禍々しい気配がした。

 ニュータイプの能力(ちから)を初めて感じたが、何かしらの脅威が迫っていることを感じている!

 されどモニターを全周にめぐらせてみても何もない。

 ただ、BETAが変わらず向かってくるだけ…………

 

 いや、来ない!? 

 BETAがいつの間にかゼータを避けるような動きをしている!?

 これはいったい…………?

 

 ピーガーピーガー

 

 いきなりコクピット内に警報が鳴り始めた。コクピット内に反響して拷問みたいだ。

 

 「うるさいですわ! 警報はもっと音量を下げた設定にしてください!」

 

 「それどころじゃないよ上総。レーザー警報だ! ロックオンされた!」

 

 「どこから!? モニターにはどこにも脅威らしき者の姿など見当たりませんわ!」

 

 「位置を特定………………え? 正面山岳地帯のふもと? 距離にして150キロ?」

 

 「なんですって!? ありえませんわ! そんな超遠距離から狙撃なんて………っ!」

 

 だが、オレ達はBETAという怪物をまだ甘く見ていた。

 無限の物量攻撃を仕掛けるのもBETAなら、望遠観測のはるか向こうから超精密狙撃をするのもBETA。

 

 

 ――――シュカァァァァァァァァ!!!

 

 

 一筋の流星がせまるのを見た。

 

 瞬間、光に灼かれた。

 

 光線級。

 

 その超長距離のレーザー光芒がゼータに直撃したのだ。

 

 

 

 

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