ゼータと上総   作:空也真朋

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40話 演習前日アレコレ

 ユウヤ・ブリッジスSide

 

 俺とヴィンセントが無事着陸したムリーヤから出ると、迎えの軍用四駆が来ていた。

 

 「到着ご苦労さまですブリッジス少尉、ローウェル軍曹。これからお二人を基地へご案内いたしますが、その前に寄り道をします。先ほど撃墜された衛士を回収して欲しいと要請がありました。お二人にも手伝ってほしいのですが」

 

 ああ、そういや墜とされたF-15改修機がいたな。

 軍用四駆で航空路脇のF-15改修機の不時着した場所へと赴き、ヴィンセントと協力して機体のハッチを開けた。

 墜とされたとはいえ、あの機体の衛士も相当の技量を持っていた。どんなヤツなのか興味はあった。

 だが、まさかあのハイレベル回避機動をとっていた衛士が…………

 

 「ちっくしょぉぉぉ! あのイワン女どもめぇ!!」

 

 まさかこんな子供………いや悪ガキみたいなヤツとは思わなかったぜ。

 しかもなお悪いことに、そいつは女だった。

 ともかくコイツを拾って基地に向かったのだが、車内でヴィンセントとケンカをはじめてじつにうるさかった。

 だが基地に到着し、コイツの上官らしき中東系の士官から怒鳴りつけられ青くなったサマを見ると、実に爽快だった。いい気味だ。

 

 「名誉ある国連軍広報任務を任されながらこの体たらく。結局ヤマシロ少尉の言葉通りになってしまったな。貴様は自分が何をやらかしたのか理解しているのか?」

 

 「あ…………ひっ…………」

 

 「まずは医務局へ向かい精密検査を受けろ。貴様を締め上げるのはその後だッ。駆け足!」

 

 悪ガキ(タリサ)は勢いよく敬礼。だが勢いつけすぎて、自分の顔に手刀くらわせて悶絶。

 痛そうに片眼をおさえたが、上官に睨まれ、涙目になりながら駆けていった。

 本当に悪ガキみたいなヤツだ。

 アイツを呆れた目で見送ったその男は、こちらへ向き直った。

 

 「さて、君達が米国からのお客さんだな。日本の試作戦術機の相手をしてくれるという」

 

 「はい。開発衛士(テストパイロット)のユウヤ・ブリッジス少尉及び整備のヴィンセント・ローウェル軍曹です。よろしくお願いいたします」

 

 「イブラヒム・ドーゥル中尉だ。試作戦術機のテストパイロットは現在ウチの試験小隊と行動を共にしている。おっと、丁度良く彼らがきた」

 

 ドーゥル中尉の促す方を見ると、国連軍の軍装を纏った女が、衛士強化装備を身につけた一組の男女を連れてこちらにやってくるのを見た。三人ともやけに若い。高校生(ハイスクール)あたりの年齢に見える。

 だが問題なのは、三人ともおそらくは日本人。日系の俺に近い肌と黒髪と顔立ちをしている。俺にとっては因縁のある国の人間だろうということだ。

 

 「ドーゥル中尉。試作戦術機・開発衛士(テストパイロット)の白銀、山城両少尉二名ともただ今戻りました」

 

 「ご苦労だったタカムラ中尉。ウチの跳ねっ返りが迷惑をかけたな。このあとソ連への対応を協議したい。時間はとれるか?」

 

 「はい。もちろんです」

 

 ――――なっ!? 中尉だと!? こんなガキが!?

 そう驚いた俺だったが、ドーゥル中尉はさらに驚くべきことを言った。彼は衛士強化装備の方の女。長い黒髪と透き通るような肌。良家の出のようなお嬢さま然とした彼女にこう言ったのだ。

 

 「それとヤマシロ少尉。体に異常はないのか? あんな空中機動戦(ドッグファイト)をやっていながら、普通に立って歩いているが」

 

 「はい、問題ありませんわ。よろしければ明日の演習の訓練に戻らせていただきたいのですが」

 

 ――――――なんだとッ!? まさか、あの”z”に乗っていたのがそいつ!?

 あれだけの空中機動テクを、こんなガキが!?

 しかも、あんな死んでもおかしくない格闘機動をしてなお、訓練を続けるだと!?

 コイツの体はいったいどうなっているんだ!!!?

 

 「ダメだ。貴様はマナンダル少尉と精密検査だ。明日の演習も出場は見合わせてもらう。しばらくは経過観察が必要だろう」

 

 「ええっ!? それは………ッ!」

 

 「山城少尉。私もドーゥル中尉と同意見だ。あんな無茶なドッグファイトをやったあとに演習など許可できん。明日は白銀少尉のみで演習に出てもらう」

 

 「上総、まかせろ。演習は明日だけじゃないんだ」

 

 もう一機の試作戦術機のテストパイロットがこの男か。そして明日の俺の相手。

 やはり高校(ハイスクール)から徴兵されたばかりの新任にしか見えん。いや、衛士なら今だ訓練課程真っ最中の年齢じゃないのか?

 本当にここのテストパイロットはどうなっている? ガキばっかじゃねぇか!

 

 

 

 

 

 ♠♢♣♡♠♢♣♡

 

 

 山城上総Side

 

 結局、有無を言わせずの上官命令でまたまた検査室に詰めることに。

 夕暮れ時の現在、ガンダムの整備の名目でこの格納庫に逃れてはいるが、この後を考えると実に気が重い。

 そんなわけでオレとハロと白銀は、格納庫にて明日に備えたνガンダムの整備点検を行っている最中だ。主にやっているのはハロだが。

 

 

 「あああああっ! 結局わたくしも任務失敗!? おサルとの賭けがあぁぁぁぁぁ!!!」

 

 タリサ(おサル)の失敗はまぁ予想通りだが、そのとばっちりでオレまで演習にでられなくなってしまった。予想をはるかに越えたトラブルメーカーめ!

 

 「残念だったな。それで今日だけじゃなく、明日もまた一日中検査だって?」

 

 「ええ。元凶のおサルさえもう終わったというのに。着任してから検査ばかりで、やっと解放されてゼータに乗れると思ったら、また検査室に逆戻り。グスン」

 

 「たしかに上総の検査は、ここに来てからやたら多いな。たぶん明星作戦で喰らったG弾の影響がないか調べているんだと思うが」

 

 点検の終わったハロが話に加わった。

 

 「とにかく、明日の演習のことを話そう。白銀がユウヤ・ブリッジスって人と一対一(ワンオンワン)で勝負するんだよね。どう、勝てる?」

 

 本来の実戦で、戦術機が一機単独で戦いをすることなど、まずありえない。

 なので演習でもこんな状況で行うことなどほとんどないのだが、今回はガンダムの機動性能を見せることが目的だ。

 故にこんな特殊な演習が行われることになったのだ。

 

 「さてな。相手は米国の最新鋭機ラプターだ。しかも衛士は合衆国陸軍戦技研部隊の人間。νガンダムでも絶対はないな」

 

 「負けたらまずいんじゃないんですの? わたくし達の任務上」

 

 「だな。まぁ負けるつもりはない。ここに来てからも、上総が検査に詰めている間はシミュレーションで鍛えている。まかせてもらっていい」

 

 オレが検査検査でうんざりしている間、そんなことをしてやがったのか。

 くそっ。正規の軍人ってなままならない面倒ばかりだな。

 

 

 「うーん、絶対に勝たなきゃなんないんだよね。よし、じゃあ明日はボクもνガンダムに乗ろう。それで手助けするよ。あ、本体の方じゃなくこっちの端末の方ね」

 

 コロン、と転がりながらハロが言った。

 

 「はぁ? ハロがいてどうなるってんだ?」

 

 「いろいろ役に立つんだよ。索敵、通信の傍受、戦術データの処理」

 

 「ええ。いつも一緒に乗っているわたくしが保証しますわ。ハロがいるなら一対一で負けることなど絶対ありえません」

 

 ハロのすばやいデータ処理のおかげで的確に周囲の状況を分析できるので、簡単に敵の位置を割り出したりできるのだ。

 

 「……………そうか。助かる」

 

 白銀はそう言ったが、何故か気がすすまなそうだった。

 

 

 

 

 

 

 




 と、いうわけでユウヤの相手は白銀の原作主人公対決!
 じつはこの回、ソ連Sideの話も入れる予定でしたが、長くなったので次回に回すことにしました。
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