ゼータと上総   作:空也真朋

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 前回に入れようと思ったのですが、長くなりすぎたので分けました。
 おかげで”誰得?”なよく知らないおじさんの会話だけの一話になってしまいました。


41話 ソ連さんは驚きました

 ソ連Side

 

 ユーコン基地ソ連機密エリア

 π(ツェー)3研究専用棟会議室

 

 完全な防音と防諜の施されたその会議室には、沈痛な面持ちの三人のπ3計画のトップがいた。

 π3計画責任者のイゴール・サンダーク中尉。

 その上官であり、ソ連軍中央開発軍団のブドミール・ロゴフスキー中佐。

 π3計画研究主任のイーゴリ・ベリャーエフ博士だ。

 

 暗いこの会議室で、三人はチェルミナートルが映したZガンダムとの戦闘映像を食い入るように見つめていた。

 やがて三人の中でもっとも立場が上のロゴフスキー中佐は口を開いた。

 

 「憂慮すべき事態だな。事前に”z”の性能をここまで見られたのは僥倖だが、まさか衛士(パイロット)の能力までも”イーダル”を完全に凌いでいるとは。これではπ3計画の存在理由自体が揺らぎかねん」

 

 その言葉に、はじかれたようにベリャーエフ博士は反論した。

 

 「イーダルは負けておりません! 互角ではありましたが、相手のコクピットに銃口を突きつけることには成功いたしました!」

 

 「本気で言っているのかね? ”z”の方は終始銃器を使わずこちらを制圧しようとしていた。その上でイーダルは常に背中をとられ続けた。”プラーフカ”を限界近くまで使いながらな。どちらがより優れているかは検証の必要もないと思うがね」

 

 気の小さいベリャーエフは、まだ何か言おうと口をモゴモゴさせたが、結局黙り込んだ。

 そんな彼を冷ややかな目で見ながらサンダーク中尉は口を開いた。

 

 「それでイーダルの状態はどうなのです? ”z”の能力を見るためとはいえ、相当深くプラーフカを使用させてしまいましたが」

 

 「………両名とも培養槽で集中調整中だ。だが寿命はかなり縮んだだろう。意識が戻らない場合、廃棄も考えなければならないかもしれん」

 

 「それはいけませんな。上層部になんと報告するのです? こちらの提案でもない広報任務のトラブルで貴重な成功サンプル二体を廃棄。我々全員処刑…………いえ、そんな無駄は党は嫌いますな。カムチャッカでBETAへの肉の壁が妥当ですか」

 

 「ううっ!」

 

 「ベリャーエフ君、サンダーク中尉の言う通りだ。何としても蘇生させたまえ。サンダーク中尉、参考までに聞きたい。”z”の搭乗者はどうなった? 死亡したのか、もしくは集中治療ですんだのか」

 

 この問いに、終始冷静だったサンダーク中尉もわずかに怯んだように目を閉じた。

 だが再び眼を開けた時、いつもの冷静な調子で報告をした。

 

 「…………健在です。衛士の名はカズサ・ヤマシロ少尉。現在彼女は精密検査を受けてはいますが、事件後の食事、活動も常と変わらずだったそうです。基地内の人間と談笑する姿も確認されております」

 

 この報告にベリャーエフは思わず立ち上がった。口から泡まで吹いて発狂したようにも見える。

 

 「そ、そんなバカな!! イーダルが限界まで戦術機機動の相手をつとめたのだぞ! それで何の障害も無くすむはずがない!」

 

 「事実です。そういえば彼女は国連軍日本支部よりの出向でしたな。あそこの責任者ユウコ・コオヅキ博士には第四への移行時に第三計画の成果をある程度渡してあります。それを元に、こちらを凌ぐ実験を成功させてしまったとしたら?」

 

 瞬間、二人の脳裏に党上層部の怒りの落雷の幻がよぎった。

 

 「ヒッ、ヒィィィィ!!!」

 

 「ウ、ウム。もし研究の浅い部分を元に、こちらより遙かに優れた成功例を作られてしまったとしたら……我々はとんだ無能の集団だな。π3計画に粛正の嵐が吹き荒れてもおかしくはない」

 

 この報告をしたときに起こるであろう深刻な事態を想像し、彼らは青くなって黙りこんだ。

 唯一、冷静なサンダーク中尉は話をつづける。

 

 「カズサ・ヤマシロ少尉。一人でイーダルの二人を限界まで相手どり、あまつさえ余力すらある。我々の研究をすべて徒労にするような存在です。こうなれば彼女の………いえ、”z”に関わるすべての対策は必須でしょう」

 

 「どうするのだね? サンダーク中尉」

 

 ロゴフスキーの問いを受け、小さくブツブツ言っているベリャーエフを冷ややかな目で見ながら、サンダークは続ける。

 

 「ベリャーエフ博士、落ち着いて。私はあなたの研究を詳細に見ている。あなたの研究が生んだイーダルはたしかに最高だ。とにかく姉妹の維持をなんとしても。こんな広報任務で失ってはさすがに言い訳すらできません」

 

 「わ、わかった! 必ず復帰させる!」

 

 ベリャーエフは退室の許可をもらうと、すぐさま研究室に向かった。

 そして会議室に残ったサンダークとロゴフスキーは次の行動について話し合う。

 

 「さて。イーダルの方は博士に任せるしかありません。ですので私は”z”の衛士カズサ・ヤマシロ少尉についての対策を考えましょう」

 

 「うむ。なにか案はあるのかね?」

 

 「彼女らのこのユーコンの滞在は約半年間の予定だそうです。ですがこのまま試作戦術機を見せていただいて『はいサヨナラ』とはいかなくなりました。まずは彼女の調査が必要でしょう」

 

 「ふむ。彼女のデータの入手をするのかね? アルゴスの方は特に注目もしていなかったので、今から諜報員を送るのは厄介だが」 

 

 「いえ、それだけでは足りないでしょう。ここアラスカにいては検査は向こう頼み。こちらの必要なデータなど望むべくもありません。なのでこちらにご招待いたしましょう」

 

 「こちら? …………本土での実戦試験か。しかし段取りは簡単ではないぞ」

 

 「絵は私が画きましょう。しかるべき予定を組み、相手が断れない状況を作ります。ただ、彼女の背後にはコオヅキがおります。しかるべき貢ぎ物が必要となります」

 

 この言葉にロゴフスキー中佐は顔をしかめた。

 

 「またあの女狐にエサをやるのか。デカくなれば、手に負えない怪物になることはわかっているというのに。今回のような悪夢は二度とごめんだぞ」

 

 「申し訳ありません。彼女に何か与えるのはこれで最後にいたしますので」

 

 

 

 

 ロゴフスキーとの話が終わり、彼が去ったあとサンダーク中尉は、もう一度Zガンダムの戦闘映像を見ながらつぶやいた。

 

 「第五計画に張り合ってくれるのは有難いですが、こちらの領分にまで手を出されるのは困ったものです。コオヅキ博士、貴女はいったい何を手に入れたのです?」

 

 

 

 




 中途半端なのですが、”なろう!”の方で書きたいオリジナルができてしまったのでしばらく中断します。再開は未定です。
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