ゼータと上総   作:空也真朋

45 / 124
 これから上総をソ連に行かせなきゃならないんだけど、その流れをつくるのが難しい。
 結局は夕呼さんに頼るしかないのか?


45話 三頭会議

 香月夕呼Side 

 

 とある基地の地下会議室。そこであたしは二人の男と会っていた。

 一人はすっかり腐れ縁の鎧依。

 そしてもう一人は、今、ここで会っていることが知られると少しばかりマズイ相手。

 帝国技術厰の巌谷中佐だ。彼とは密かな同盟を結んでいる。

 

 「ご協力ありがとうございます巌谷中佐。おかげで演習の実行と目的は大きく達成することができましたわ」

 

 「そいつはどうも。だが結果は時間切れの優勢勝ちだったそうだな。この結果でも、博士の目的は叶ったのか? いやアメリカ虎の子の【ラプター】に勝利したというのも、十分な成果といえるが」

 

 「アメリカの戦技研衛士が、がんばったようですわね。ですが、かえって機体の優劣差を証明できましたわ。相手のラプターがスクラップになるほどの酷使につき合いながら、こちらのガンダムは健在でしたもの。この結果でだいぶ第五に向きかけた流れを、こちらに引き寄せることが出来ましたわ」

 

 「……………あれはいったい何なんだ? 山城少尉のゼータといい、とても地球が生みだした機体とは思えん。BETAとは別のエイリアンからでも購入したのか?」

 

 「さあ。その質問には答えることはできませんわね」

 

 巌谷中佐はしばらく探るようにあたしを睨んだが、やがて目をつむった。

 

 「まぁいいだろう。『計画成功おめでとう』とでも言っておくか。そちらが提供してくれた技術で、こちらの【XFJ計画】も大きく進んだ。テストは始まったばかりだが好感触だ。篁中尉はよくやっている」

 

 「姪御さんに立派な箔をつけられるようで何よりですな。彼女に自分の後を引き継がせる道筋をつけられた、といった所ですかな」

 

 「鎧依。俺はそんな公私混同はしない。XFJ計画の順調な進捗は、彼女の実力によるものだ」

 

 そうは言いながら、巌谷中佐はまんざらでもない様子。

 巌谷中佐の姪の【篁唯依】というのは、けっこう使えるわね。

 巌谷中佐は「コホン」と咳をして無理矢理に姪の話を打ち切り、あたしに向き直った。

 

 「ところで、だ。そちらの内部に踏み込んだことで恐縮だが、そのガンダム衛士の白銀少尉と山城少尉にはいまだ帰国の通達をしてないようだな」

 

 「あら、調べましたの? 油断はできませんわね」

 

 「いいや。篁中尉がそちらの二人に、こちらの線で調べてもらうよう頼まれたそうだ。彼らはいつまでも帰国の通達が来ないことを不安がっている」

 

 「おやおや。以外とナイーブでしたな。まぁ考えてみれば、あの二人も優秀とはいえ十代の若者。ホームシックになってしまいましたかな」

 

 「鎧依、茶化さないでもらおうか。香月博士、どういうことだ? あの二人のことは、政府にも軍部にもいちおうの話がついているはずだ。なのに帰国させないいというのは何故だ?」

 

 「あら、巌谷中佐。あまりにこちらに踏み込みすぎではなくて? 姪御さんの仲良しのお友達とはいえ、二人のことは国連軍内の問題ですわ」

 

 「…………俺は任務に赴いている篁中尉を身内扱いなどしない。それにその二人は仲良しの友達などではなく、今現在、篁中尉の部下だ」

 

 「あら、そうでしたわね。まぁあの二人は、こちらの体勢が整い次第帰国させますわ。どうかゆるりとお待ちになってください。二人にはこちらから説得もしておきましょう」

 

 「いや。そちらの衛士二人だけなら、俺もここで問題になどしない。問題は二機のガンダムだ」

 

 ――――――あ。

 風向きが変わった。ちょっと面倒なことになりそうな予感。

 

 「あれほどの機体をいつまでも外国に、それもアメリカ圏内に置いておくことは日本にとって重要な問題となる。いや、なりつつある。今回融通してもらった技術も、元はあれの派生技術なんだろう?」

 

 「さあ、どうですかしら」

 

 ああ、失敗した。これは帝国上層部からの声だったのか。

 

 「政府、軍部からも同様の意見がチラホラだ。このままでは帝国が介入し、二人は強制帰国だ。そうなりゃ、そちらにとっちゃあまり良いことにはならないだろうよ」

 

 「こわいこわい。たしかに帝国に口出しされる口実を与えるのは良くありませんわね」

 

 顔は笑顔を張りつかせて。だけど内心はあせりまくり。

 でも今、二人を帰国させる訳にはいかないのよね。

 

 「はっはっは。これは心ならずも、大事になってしまいそうですな博士」

 

 などと、とぼけたセリフの鎧依も、やはり密かに『帰国NO』のサイン。

 理由は、鎧依からの情報では間もなく日本にはクーデターが起きる。

 そんな時、二人が日本にいては、あっという間に鎮圧してしまうだろう。

 こちらのスケジュール通りに事を進めるには、やはり二人にはクーデターが終わるまで外国にいてもらう方が良いのよね。

 

 ………………仕方ない。気は進まないが、ソ連から要請のあったアレを使うか。

 こっちが得しかしないような胡散臭いプラン。ついでに貢ぎ物たくさん。

 サギに一度もあったことのない素人なら必ず飛びつくような、玄人なら他人に喰わせて様子をうかがうのがセオリーのような、あの話。

 多少ヤバくても、あの二人なら何とかするわよね。

 巌谷中佐。悪いけど、可愛い姪御さんも巻き込ませてもらうわよ。

 

 「ええ。たしかに直ちに帰国させるべきかもしれませんわね。ですが、その前にもう一つ海外で任務をさせようと思っていますの」

 

 「なに!? 初耳だ。いったいどういうことだ?」

 

 「じつはソ連からこのような話がきています。これはそちらの【XFJ計画】にも有益なお話」

 

 さて。ソ連のサギの片棒をかつぐとしますか。

 巌谷中佐と話しながら、頭の中では高速で帝国へのメリットを、そして断れない理由を矢継ぎ早に紡いでいく。

 そして話し終わる頃には、すっかりソ連遠征のプランが出来上がっていたのだった。

 我ながら自分の頭が恐いわ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。