ゼータと上総   作:空也真朋

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 ソ連編の前に、マブラヴ番外編で大活躍のオルソン大尉を書かないのはどうかと思い、彼のために一話書いてみました。
 あのスーパーコーディネーターを上手く書けたかどうか。


46話 ユウヤ・ハーレムへようこそ!

 いつまでも帰国の連絡がなくてヤキモキしているオレ。

 だが、さらに精神に追い打ちをかけるような任務の話を篁さんがもってきた。

 

 「広報任務のやり直し………ですって? それにわたくしも参加するのですか!?」

 

 「すまない山城さん。前回の失態で国連軍広報官オルソン大尉の面目をだいぶ潰してしまった。故にアルゴス小隊としては、彼の要請を断ることはできないのだ」

 

 タリサ(おサル)の汚ねぇケツの尻拭いだと?

 

 「ちなみにこの任務にドーゥル中尉は参加しない。あまりに専門外だというのでな。すべて私が指揮をとり、達成に導かねばならない」

 

 ドーゥル中尉にしては無責任な。

 すごく納得できないが、監督責任で痛い立場に立っている篁さんを見捨てるわけにもいかない。

 撮影任務なんてサクッと片づけて終わらすとするか。

 などと軽い気持ちで引き受けたのだが……………

 

 「篁さん。これは軍の広報撮影でしょう? なぜ水着に、それもこんな破廉恥なものを身につけねばならないのです!!」

 

 任務の指定場所に着くと、オレは水着に着替えさせられた。

 篁さん、ステラにタリサもアルゴス女性陣全員が水着となり集合。

 それも軍の競泳水着などではなく、露出度の高いビキニだ!!!

 

 そして敷地の隅のフェンスの向こうでは、ものすごい数の男性ギャラリーが、各々カメラやビデオを手に持ち、任務の開始を待ちわびていた。

 いまはまだバスタオルを羽織っているが、任務開始と同時にバスタオルを外さなければらないんだよ! 野郎どもの目の前で!!

 そして、半裸のビキニ姿があの無数のカメラの餌食にされてしまうのだ!!

 

 「あ、ああ。この水着に関してはいちおう説明はもらったのだが、まるで理解できなかった。とにかくこの水着でなければいけないらしい。ほら、東側の彼女らもだ」

 

 オレらとは少し離れた場所には途方にくれたように水着姿で佇むふたりのソ連衛士がいた。

 【紅の姉妹(スカーレット・ツイン)】ことクリスカとイーニァだ。

 それは良いのだが、何故かふたりの水着は日本のスクール水着だった。

 なぜかギャラリーからは『トゥルースクミーーズ!!』と大声援が送られている。

 広報官のオルソン大尉という方、妙な方向でセンスがあるらしい。

 

 「とにかくこの姿で、我々が世界一致する友情団結の表現を示すのだそうだ。いつもとは勝手のちがう任務ではあるが、各々は各自役目をはたすように!」

 

 「「「了解です!」」」

 

 ビキニ水着のアホな恰好でも、上官に檄をとばされたら反射的に敬礼するオレ達。

 

 さて。集合したアルゴスとソ連の【紅の姉妹】の前に、やがて問題の企画人【オルソン大尉】が重々しく登場した。

 濃い眼鏡をかけたキレ者の顔をしており、威風堂々とした軍人の風格だ。

 こんなアホなことを考えた奴なのに、有能そうな軍人に見えるからタチが悪い。

 

 「諸君! 今回、この撮影のテーマは『肉体』だ!」

 

 つまり『エロ』だと? 軍の広報素材なのに?

 もちろん違った。

 

 「君たち鍛え上げた衛士(パイロット)の肉体をどうどうとさらし! BETAに対する人類の不屈の闘志を表現する! さらに各民族が一体となった姿を表現し! 全世界一致の団結をみせるのだ!」

 

 うーん。半裸の女だらけで、そんな映像になるかなぁ。

 タリサとステラさんも微妙な顔。

 

 「しかし水着ってやつはよ。話には聞いてたが、着るのははじめてなんだがよ。でも、これって下着じゃねぇの? こんなモンで野郎どもの前に出るなんざ、狂気の沙汰だぜ」

 

 「私はプライベートビーチに行ったとき着るけど、ここまで際どいのは経験ないわねぇ。これが任務って、軍の広報素材として本当に良いのかしら?」

 

 さて。この任務だが、じつは女性だけの参加ではない。

 青一点で参加している奴もいる。それが――――

 

 「オルソン大尉殿! 質問です! どうして自分もこの撮影に参加するのです!?」

 

 ユウヤ・ブリッジス少尉だ。

 少し離れた場所で男性水着を着用し、オレら半裸の女性陣を微妙な目で睨んでいる。

 

 「適任なアメリカ軍衛士(パイロット)が君しかおらんのだ。それに、女性ばかりではこちらの意図とはずれたスチールになってしまう可能性がある。故にブリッジス少尉。栄光あるアメリカ軍代表として、中心で大きくかまえてくれたまえ」 

 

 「いやいや! 明らかに男女比がおかしくあります! 自分が彼女らの中心になったスチールや映像など、それこそ目的と大きく外れたものになってしまうと、愚考いたします!」

 

 男の立場として考えて、ユウヤの立場はオイシイのか?

 少し羨ましい気もするが…………いやいや!

 女の子の素肌に多少ふれられるとしても、その映像が出回るとしたら一生の恥だ!

 【ハーレム(キング)】なんて二つ名がついたら軍をやめたくなる!!!

 あのギャラリー共のオカズにされているのは、ビキニ姿のオレ達だけじゃない。

 男の身でオレ達と並んで撮られるユウヤも同様だ!

 

 「がんばれユウヤぁ! アメリカ代表として、どうどうと世界の女どもを従えてみせろ!」

 「アルゴス代表男の勇姿を見せつけてやれ! お前もついでにバッチリ撮ってやるからよ!」

 

 VGと、ユウヤと共にきた整備士のヴィンセントはあそこか。ついでに白銀もヤレヤレといった感じでいる。

 VG、ヴィンセントは高そうな撮影機材をもって、ふたり仲良くハイテンション。

 

 「ヴィンセント、VG! てめぇらっ!!」

 

 ユウヤの絶叫が響くなか、撮影任務は始まった。

 ユウヤをオレらビキニガールズが囲って、嬉しそうにニッコリ。

 ……………なんだか、まるで自分がユウヤの女にでもなった気分だ。

 篁さんは心なしかちょっと嬉しそう。

 

 「うむ。タカムラ中尉の表情はじつに良い。心からの歓喜があらわれているようだ。それに比べブリッジス少尉、ビャーチェノワ少尉。もっと表情を柔らかくしたまえ。これは国籍を越えた友情の撮影なのだぞ!」

 

 国籍越えて女漁ってハーレムつくった変態野郎の勝利宣言撮影だと思う。

 やっぱりこのオルソン大尉のセンス、変だ。

 

 「でもこういう撮影なら、ユウヤだけじゃなくタケルもいてほしいわね。欲張りなのはわかっているけど」

 

 ……………ステラさん?

 

 「そうだよなぁ。オルソン大尉、こういう所が片手落ちって感じだよなぁ。タケルがいりゃ完璧なのに」

 

 タリサ(おサル)さん、何が完璧なの? ワタクシ、ぜんぜん分かんないですけど!

 

 「…………む? まぁ撮影だけなら、白銀少尉の参加もアリか?」

 

 篁さんまで!?

 なんかアルゴス女性陣がみんなハーレム要員(メンバー)脳になっていらっしゃいます!?

 いやコレ、ユウヤのハーレム撮影じゃなくて、国際友情撮影なんですけど!!

 

 「そ、そうだ、こういうのはタケルが似合う! 今からでもアイツに変わってもらおう!」

 

 ユウヤの奴、錯乱してやがる。元男として気持ちはわかるが。 

 篁さんのためにも、唯一冷静なオレが引き締めをはかろう。

 

 「落ち着きなさいユウヤ。白銀じゃアメリカ軍代表にはなりませんわよ。みなさんも余計な雑念は抱かず、任務に集中なさってください! 『我らは国境を越えた友。人類は団結し、結び握る手は固く』ですわよ」

 

 「へーえ。んじゃ、カズサもアタシに友情(ユージョー)ってのを感じてんの? マジで?」

 

 タリサ(おサル)がオレの顔をのぞき込んでニヤリ。

 

 「……………………………………………………もちろんですわ」

 

 オレはいま、嘘つきの顔をしているのだろうか?

 

 「殺意こめて睨んでいるソ連の冷血女共も? あの顔、どう見ても友情抱いてるようには見えないぜ」

 

 そうなんだよな。【紅の姉妹】のふたり。オレのことを、姉のクリスカはだれかの仇みたいに殺気をとばして睨んでいるし、妹のイーニァは子猫みたいにおびえてるし。

 そんな紅の姉妹にオルソン大尉の落雷がおちる。

 

 「ビャーチェノワ少尉、シェスチナ少尉! なんだその敵でも見るような顔はぁ! それで国境を越えた友好を示せると思っているのかあぁぁぁ‼!」

 

 「…………クッ、ですがどうしても自分らは、ヤマシロにはッ!」

 

 あの空中機動戦。オレは完全にとばっちりの被害者のはずだが?

 まいったな。このふたりがいる限り、この撮影は終わらない気がする。

 この状況に対し動いたのはハーレム(キング)………ではなくユウヤだった。 

 

 「ああもう! ビャーチェノワ少尉、シェスチナ少尉。もっと俺にくっついて! 俺だけを見て他に目をやるな!」

 

 「な、なに? どういうつもりだ!」

 

 「アンタらはアルゴスに因縁があるようだ。俺はここに来たばかりで、しがらみは何もないはずだ。だから俺だけに目をやって、我慢して撮影の間だけは表情を取り繕ってくれ。こんな任務、俺はさっさと終わらしたいんだ!」 

 

 「………………同感だ。アメリカ衛士。不本意だが、連中を見ないよう体を借りるぞ」

 

 クリスカはイーニァと一緒にぐぐいっ、とユウヤに体を寄せる。

 ……………あれ? 何やらイーニァから妙に乱れた波動を感じる?

 

 「う……………うううあっ………ブリッジス少尉………ユウヤぁ」

 

 ああ! 篁さんが泣きそうな顔になっている!!

 なんだか山百合の頃の彼女に戻ったみたいだ。

 まったく。しかたがないなぁ篁さんは。

 

 「篁さん。わたくしをビャーチェノワ少尉から見えないように、もっと寄せ合って隠してください。それと向こうは見ないで、わたくしだけを見て笑ってください」

 

 「山城さん? …………わかった」

 

 彼女はなぜか頬を赤く染めてオレに体を預ける。

 素肌同士で強く寄せ合い、彼女の柔らかくてあたかかい温もりを感じると、やけに変な気分になってしまう。

 ヤバイな、この表情。

 妙に潤んだ瞳で見つめられている。

 

 「いいぞタカムラ中尉! その表情! ひたむきに友を信じ、身を投げ出すことも厭わない良い表情だ! 撮れ! あの表情を余すことなく撮るのだぁぁぁ!!!」

 

 やっぱりこの大尉、変だ。

 この大尉にとっての【友情】っていったい何なのか、いつか聞いてみたい。

 

 

 ともかく篁さんのおかげで、広報任務はどうにか達成したが。

 後日、撮影素材であるオレ達のビキニ姿は、さまざまな角度でプリントした写真が写されてユーコン基地中に出回った。

 とくにオレと篁さんの2(ツー)ショット写真は、目の玉が飛び出るような値段で取引されている。

 やっぱり、篁さんのあの表情はヤバかったんだな。

 




 これを書く前に原作TEを見返したのですが、巌谷中佐のキャラが、だいぶズレていたことに気がつきました。なので前回の話とか、巌谷中佐のセリフを書き直しました。
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