ふいーーーっ! まったく焦ったぜ、篁さんの『山城さん変わりましたね』には。
変わったのは当然だよ。中身、別人だもん。
おまけについ『京の都』なんてワード出して、昔話なんかが始まりそうな展開になったのは、
山百合訓練校時代のことなんか、ぼんやりイメージが見えるだけで昔話できるレベルじゃないっての。
本当は篁さんとは距離置かなきゃヤベーんだけど。
でも篁さんてば、他の人間には凜々しく接しているのに、この山城上総の前では可愛い女の子の顔になるから、こっちもついほだされて世話をやきたくなっちまうんだよなぁ。
ま、可愛い友達の恋のためにがんばる親友ポジってのも悪くない。
もっとも成功して目の前でイチャコラされたら、それはそれでムカつきそうだけど。
それは考えないようにするか。
約束通りワンピースのカーディガンをはおったお嬢さま風ファッションの私服で待っていると、やがて彼女は来た。
「山城さん、どうだろうか。持っている私服で一番マシなのを着てきたが」
そう言って待ち合わせ場所にあらわれた篁さん。
それを一目見た瞬間のオレの感想は
――――――絶・可愛い!!!
だ。
タートルネックのブラウスにふわりとしたカーディガンをはおり、下は、これまたふわりとしたロングスカート。足は裸足に踵の高いパンプス。
平均的なお嬢さま風ファッションだが、篁さんが着ると破壊力ヤベェ!!
前のビキニ以上に衝撃的なのは本当にヤベェな。
「いいんじゃないかしら。それじゃ、みんなの所に行きましょうか」
内心の本音を上手に隠しクールに会話をする。
この山城上総の元々の性格なのか、内心の動揺がまったく表面に出ないでクールキャラ演じられるのは本当にありがたいね。
二人で
オレ達が四人の前に姿をあらわすと、歓声があがった。
「す、すまないな、私も参加してしまって。貴様たちの楽しみを邪魔するような真似はしないので、気にせず楽しんでほしい」
「いやいや。そんなことは気にせず、いつでも参加してください」
「毎回ファッションで楽しませていただけたら、なお良い! いやじつに素晴らしい!」
白銀、VGは篁さんの方へ行った。
篁さんは基地の整備兵とかの間ですごい人気だと聞いたことはあるが、たしかに男を引きつける引力が凄えな。
タリサとステラさんは、オレの方にきた。
タリサは意味ありげに笑う。
「お姫さま復活だな。東南アジアじゃ、そんな恰好で演説とかしてたな」
ぜんぜん違うだろが!
ステラさんも同じように笑ってささやく。
「中尉ととってもお似合いよ。あなた達が女同士カップルって、ちょっともったいないわね」
……………あ。そういや、オレと篁さんは女同士カップルだという怪奇な噂があったな。
まずいな。このことは篁さんに知られないようにしないと。
と、篁さんがオレの背に隠れるように抱きついてきた。
「な、なぁ山城さん。みんなの見る目がおかしいんだが。やっぱり変じゃないか? この恰好」
「軍服を着ていなければ、女性が見られる目はこんなものでしょう。それより、わたくしに
あんまりくっついていると、本当にカップルに見えちゃうだろうが!
ちょっと気持ちいいけど。
「そ、そうだな。山城さん、すまなかった。私は栄えある斯衛衛士だ!」
斯衛衛士は関係ないと思う。ま、それが篁さんの気合いの入れ方だからいいか。
「ところでブリッジス少尉は? いっしょに来てはいないのか?」
そうなのだ。何故かこの場に、一番肝心のユウヤが来ていない。
「ユウヤはヴィンセントと少し遅れて来るそうです。出がけにデータの記載ミスがあったとかで」
待っているか先に店に行こうかで迷っていると、向こうの方からBDUを着た金髪の兄ちゃんが走ってきた。
それはユウヤの専属整備士ヴィンセント・ローウェル軍曹だった。
「よかった。みんな、まだいてくれたんですね」
息を切らせているヴィンセントに篁さんは聞いた。
「ローウェル軍曹、何かあったのか。ユウヤは……ブリッジス少尉はどうした?」
「うおっタカムラ中尉!? 私服? 衝撃的!!」
「…………いいから、早く言ってくれ」
「ええ。データの方は手間取らずに修正できたんで、俺達は急いでこっちへ向かったんですよ。そしたら途中に、
「なに、たしか……シェスチナ少尉が?」
【
「で、ユウヤは…………あー、れっきとしたソ連衛士にこんな表現をして良いのかわかりかねますが、あやすようなことをしましてね」
いや、相手があのロリッ娘イーニァなら納得できる。
正規の衛士なら年も相応だろうに、どうしてああ見かけも精神も幼いのか。
「で、相手もなついて………あーいえ、友好的な様子になっていたのですが、そこに片割れの大きい方がきましてね。で、なぜか彼女と激しい言い争いになってしまったんですよ」
たしかクリスカ・ビャーチェノワ少尉といったか。
つまり、そのソ連衛士との言い争いでユウヤが足止めされているということか。
とにかく、みんなでその現場へと急行した。
そこでは、いまだにユウヤとクリスカは言い争っていた。
だがオレの意識は、その脇にいる小さな人影のイーニァにいった。まだ姿が見える前から彼女の存在が明確に感じられたのだ。
彼女もまた、ここへ到着する前から、ずっとオレの方を見ていた。
みんなは言い争っている二人を止めにはいったが、オレは二人のことは無視してイーニァの前に立った。オレと彼女はまっすぐ見つめ合う。
「あなた、なんなの? クリスカいがいが…………わたしのなかに、はいってくるかんじ」
こうして近くにいると、この子からニュータイプの共振をはっきり感じる。
おそらく、この子はニュータイプ。その入り口にいる子だろう。どうして地球環境下で生まれたのかはわからないけど。
「おい貴様! イーニァから離れろ!」
おっと、
まぁ彼女がニュータイプだからどうする、といえば何もないしな。おとなしく離れよう。
「おい待てテメー! 無視すんな! はなせコラぁ! おまえら止めンな!」
「タリサ、おまえは引っ込んでろ。いいかげんソ連相手に意趣返しとかやめろって」
「そうよ。とくにその二人は【特殊実験開発部隊】の人間。機密は最高レベルの所よ。関わらない方がいいわ」
ステラさんとVGに両脇を固められながらバタバタともがくタリサ。
ソ連士官相手に乱闘しようとしてたのかよ。恐ぇな。
場をおさめるべく、篁さんが代表で彼女の前に出た。
「ビャーチェノワ少尉。部下が失礼をした。この場は私があずかろう」
クリスカは篁さんの可愛い恰好をジロジロ見た。
「タカムラ中尉…………か? ずいぶん浮かれた恰好だな。西側ではプロジェクトの主任ですら”それ”なのか?」
「ううっ!」
いや、これは今夜だけだ! 好きになった男に『可愛い』とおもわれたくて………
口を出さない方が良さそうだ。
「貴様達がいくら享楽に浸ろうとも一向にかまわない。だが、それでいいのか? あたえられた任務の責務は東であろうが西であろうが変わらぬはずだぞ。それを、そのように浮かれた……」
「いや待て。俺達は今夜、
あっ、ユウヤにかばってもらえた! 篁さん、ちょっと嬉しそう。
「そうだな。それに戦場で死んだ仲間はもう飲んだり楽しんだりはできない。彼らに代わって、オフの時間には思いっきり楽しむのも衛士の流儀だと思う」
いいこと言うなぁ白銀。
でも、おまえ、この世界にきて半年だろう。死んだ仲間とかいないんじゃ?
「…………なるほど、道理だ」
はい? なんて言ったの? まさか同意したの?
「では私も共に行き、学ばせてもらおう。タカムラ中尉、すこし話したいことがある。おつきあい願おう」
は、はぁぁぁぁ!!!? 篁さん、
なかなかソ連へ行けないのは、