50話 閑話・第五計画推進派
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第5計画推進派Side
東京湾洋上
米軍極東方面第7艦隊 旗艦空母ロバート・Fケネディ司令官私室
国連派遣部隊総司令官ジャミトフ・ハイマン中将は、寝返った各国の要人のリストを見て、あらためて渋い顔をした。
「憂慮すべき事態だな、バスクよ」
ジャミトフ付き参謀長バスク・オム大佐は相変わらず直立不動のままジャミトフの言葉を受けた。
「はっ。引き込んだはずの各国の政治派閥が、次々に向こうへ流れていっているそうです。これでは女狐を弾劾するための連携など不可能です。もはやこの計画は捨てるべきでしょう」
「
「『戦術機の新たな可能性』、ですか。愚かな。戦術機がいかに進歩しようと、BETAの物量に抗しきれるものではないというのに」
「うむ。だがその愚か者どもが女狐を支持しているのが問題だ。このままでは本当に第五計画が潰されてしまう」
「中将閣下。もはや時期を待っては状況は悪くなるばかりです。日本の”鼠”を動かすべきです。現状でも十分日本を荒らしてくれるでしょう。”猫”たる我らが出動せざるを得ないほどに」
「……………よかろう。やれ。日本帝国を掌握せよ!」
彼らの計画は日本の若手将校達に日本政府へクーデターを起こさせることだ。
日本を無政府状態にした後に米軍艦隊がそれを鎮圧し、日本を掌握することまでが彼らのシナリオ。
そして日本で進められているオルタナティブ4計画を潰す。
「はっ。日本帝国に眠る全スリーパーを起こします。計画にのっとり、帝都の主要な施設は24時間以内にすべて反体制派が制圧するでしょう。日本の機能は完全に停止し、我々の介入はじつに容易く行えることになります」
「うむ……………であれば良いのだがな」
長く練り込んだ大規模計画の発動だというのに、ジャミトフは妙に不安げだ。
自分の手際に疑いを持たれているのかと、バスクも不安になる。
「計画の手はずは完璧です。安心して吉報をお待ちください」
「いや、貴様の手腕に不安をもってはおらんよバスク。だがな…………やはり女狐にはどうしても不安要素があるのだ。奴が我らのシナリオ通りに計画を明け渡すとも思えぬ。やはり無力化する何らかの手が欲しい」
「フッやはりあの女狐は苦手ですか。中将閣下」
「我ながら臆病なことだとは思うがな。ここ最近の女狐の動きは神がかっている。これほど大規模な計画に気づかれていないことが不思議なくらいにな」
長い時間をかけて切り崩してきた各国の要人を短い期間に逆に寝返らせ、彼女に仕掛けた政治攻勢のほとんどが潰されてしまった。
さらに彼女の勢いは止まらず、今や逆に第5計画はひん死の状態へと追いやられてしまった。
「計画を早めたことでクーデター側の戦力も十分とは言えん。女狐の今の手腕なら、早期に沈静化させられる可能性はどうしてもある。バスクよ、お前はどう思う」
このジャミトフ中将の問いに、バスク大佐はニヤリと嗤って答えた。
「そこは抜かりありません。お忘れですか。例の”マスター”が女狐の抹殺を請け負ったことを」
「…………む? 仕掛けるのか。いつだ?」
「予定日の前日にやらせることにします。爆薬満載のHSST(宇宙再突入型駆逐艦)を、奴のいる横浜近郊に落として確実に仕留めます。さらにその混乱は、戦力不十分なクーデター勢力を大いに助けてくれるでしょう」
「ほう。それは貴様のアドリブか? さすが参謀だな。連中の戦力の不安に、
バスクはそれには答えず、だが自信ありげに微笑んだ。
「フッフッフ。まさかたった一人の暗殺に、横浜地域一帯を消滅させるとは。人類の敵らしい狂った手段をとる」
「たしかに。では、やめさせますか」
バスク大佐は今度は悪戯っ子のようにわらった。
ジャミトフ中将もまた笑い返す。
「フハハ”まさか”だ。あの狂犬すら使いこなせねば、人類の未来など望めんよ。我らはその日をもって主流となる。バスクよ、万事抜かりなく計画を進めよ!」
「了解です! 人類に栄光あれ!」
ここに香月夕呼抹殺計画。
それに続く日本掌握計画は発動した。