そっちの方は『なろう小説』で発散させていますが、マブラヴの話は書けなくなっちゃったんですよね。
最近ちょっと冷めてきたので、またこっちを書きました。
ソ連カムチャッカ州 アベチャ湾
強襲戦術機揚陸艦ミトロファン・モスカレンコ甲板
接岸間近のアナウンスが流れ、オレは白銀、ハロと甲板へ上がった。
季節はもう真夏の八月。天候も晴れだというのに、ここには蒼天はない。
青みがかったライトグレーに鉛色のまじった、息苦しい空だ。
さらにソ連第一級の軍港であるはずのこの場所だが、そのさびれた景観が気分を滅入らせる。
あちこちの港湾設備はどれも古くサビとタールまみれ。
さらに桟橋に係留されたままの軍用艦は朽ちるままに放っておかれている。
「いわゆる『しみったれた場所』ですわね。ユーコン基地の最新鋭で整備の行き届いた設備と比べると、その格差が凄いですわ」
「おそらく整備の人員も設備も前線にまわさざるを得ないんだろうね。もっとも、前世にあったソ連時代でも場末の施設はこんなものだったらしいけど。戦争もしていないのに」
現在、アルゴス小隊のメンバーは上陸前のブリーフィング中。
せまい船の中、部外者のオレ達は身の置き所がない。
なのでオレと白銀とハロは自然と甲板へ上がって来たのだ。
「伝説の社会主義大国・ソビエト連邦に来訪と思うと、感慨深いものがありますわね。わざわざ来て見たい景観ではありませんが」
オレ達の前世のソビエト連邦は、オレ達が生まれた頃に滅んでいる。
こっちのソ連は領土がほとんどBETAにとられたとういうのに、いまだ存在している。
社会主義の統制経済というのは戦乱に強いシステムらしい。
「それにしても演習のための客員であるはずのわたくし達が、いったい
「俺に聞くな! 本当にいったい何なんだ、今回の夕呼先生は! どの世界でも何をしでかすか分からない人だったが、ここまで訳の分からんことは、かつて無かったぞー!」
「自分の正体を大声で海に叫ぶのはおやめなさい、タイムリーパー。わたくし達は未知の戦術機ガンダムの操縦者としてそれなりに注目されているのですよ」
演習のあとオレとハロは、白銀が何度もこの世界のこの時代をやり直しているタイムリーパーだという話を聞いた。
しかもこの世界の戦術機で戦闘をくりかえし、死亡すら何度も経験しているとのことだ。
どうりでこの世界への馴染み方が普通じゃないと思ったよ。
それにしてもソ連への出向が決まってから白銀はずっと不機嫌だ。
なんでも日本の方で対BETA戦線の趨勢を決める重要な計画があるらしいのだが、いつまでもそれに参加できないのでイライラしているらしい。
「くそっ! 俺はいま日本にいなきゃなんないのに、どうしてこうも外国巡りをやらされる? 冥夜達も総戦技演習試験で苦労しているだろうし、そろそろアレがはじまるってのに……!」
「まぁまぁ白銀。ここペドロパブロフスク・カムチャッキー基地は北東ソビエトの最南端。日本の北海道はオホーツク海をはさんですぐそこだ。アラスカよりずっと日本の近くに来たじゃない」
「だから何だ、ハロ! それが慰めになるとでも思っているのか!? 海外でまったく関係のない戦術機開発の任務をやらされて貴重な時間を潰しているのは変わらんだろう!」
そうなのだ。
アラスカ・ユーコン基地でのガンダム演習の後に香月博士から命じられた次の任務は、篁さんが主任となっている『XFJ計画』の手伝いだ。
それもソ連まで出向いて、【不知火弐型】という改修戦術機の実戦演習のサポートをせよとのことだ。
あまりに意味不明。
何故、オルタナティブ4計画という大規模な対BETA計画に携わっているはずのオレ達が、まったく関係のない戦術機開発の手伝いなどをさせられるののだろうか?
二機のガンダムという、この世界ではオーバースペックな戦力を計画から遠ざけている意味は何なのだろう?
野球でいえばペナントレースの真っ最中に主力選手を二軍キャンプ送りにしているようなもの。
前世で野球やサッカーを見てると、たまに迷采配とでもいうべき謎の選手交代劇とかあったが、まさにあれを見ている気分だ。
選手に無駄な労力を強いる香月監督を怒鳴ってくれるオーナーでもどこかにいないものか。
「いっそ日本に帰ります?
「…………………任務を放棄して帰ってどうなる。ただ脱走兵として処罰されるだけだ。とくに上総。お前は二度目ともなれば許されない。バカな真似はやめておけ」
まぁ、そうだな。
『また大東亜連合にでも行こうか』とかチラリ考えたが、これ以上の脱走は本当に日本を敵にまわしてしまう。
おとなしく国連軍日本支部の衛士を続けて任務に従事しよう。
「やっぱり上総と白銀の日本への受け入れが難航しているらしいよ。根回ししている間は二人が日本にいられるとまずいから、こういった任務で時間を潰させているんじゃないかな」
「まぁ。軍の脱走というのは思った以上に重大事でしたのね。ならば香月博士も努力なさっているのですから、文句は言わないのが大人というものですわね。白銀、そういうことですから……」
「……………………違うな。おそらくそれは嘘だ」
「はい?」
「今回のアラスカ任務のことを思い返してみろ。二機のガンダムの演習によって戦術機技術を売り、各国の戦術機技術の向上、及び各国の支持をとりつけることだ。そしてそれは大きく成功した」
「え? ええ、そうでしたわね。その結果まではよく知りませんが…………ハロ?」
「あーうん。ちょっと各国の評判を調べたことはあったけど、すごかったよ。戦術機技術の革命だとか何だとか。まだまだ
「そうだ。夕呼先生はいま国際政治的にずいぶん有利な位置にいるはずなんだ。俺の見たところ、すでにオルタネイティブ5すら圧倒している。これだけの追い風で、この件のみが難航するなんてありえない」
すごい!
オレより年下の高校生ぐらいの年齢なのに、すごい推理力!
まるで噂の高校生探偵みたいだ!!
あっさり香月博士の言葉を信じちゃったオレ達っていったい……………
「はっハロ! あなたは前に『ゼータの情報収集システムなら世界の裏側を見放題。宇宙世紀のハッキング技術の前にはこの世界のファイアウォールなんて赤子同然』なんて言ってましたよね! なのに、まんまと騙されるって…………!」
「………ピピーピポピポ……………」
ハロは恥ずかしそうに「コロン」と転がった。
宇宙世紀の人工知能になったとはいえ中身はオタクの晴郎だからな。
自分の興味のあることしか調べてこなかったんだろう。
「でしたら何故? この関係のない【XFJ計画】の手伝いに、いったい何の意味があるのでしょう?」
「おそらく俺達に日本に帰ってほしくない何かがある。となると、それは……………」
白銀は何かを言おうとしたが、オレ達を見るとハッとしたように我に返った。
「上総とハロに聞かせるようなことじゃなかったな。どうかしていた。忘れてくれ。とにかく任務にはげむとしよう。今はそれしかないからな。そろそろブリーフィングも終わったろう。俺達も戻って上陸の準備をしよう」
そう言って白銀は甲板から降りていった。
オレは鈍色の空を仰いで問題の香月博士に思いを
「香月博士というのは、かなりクセ者の方らしいですわね。このソ連でも何をさせられるやら」
「うん。ボクもこれからは世界情勢とか真剣に調べるようにするよ」
さびれた港の景観から背を向け、オレ達も下へと降りていった。