どこにも行けないので小説を書くしかないです。
ピキーーン
それは、とある午後の休憩時間のことだ。
いきなりニュータイプの共振を感じた。
「これを出すのはイーニァしかありませんわね。でもこの悲鳴のような、切羽詰まった叫びのような共振は?」
こんな危機のようなものを感じてしまっては、放っておくわけにもいかない。
オレは一直線にその場へ向かった。
◇ ◇ ◇
「やはりイーニァでしたか。しかし、これはいったいどういう状況ですの、ユウヤ?」
「カズサ、か。まぁ見ての通り、こいつらに襲撃されている真っ最中だ」
野外
そこには前世で見た不良マンガみたいな
十代の少年少女七人が鉄パイプやナイフを手にして、ユウヤとその後ろに庇うクリスカ、イーニァを取り囲んでいるのだ。
「オーイオイオイ、まーた、どっかのお節介が来たのかよォ。ゲラゲラゲラ」
「外国のキレイなお姉ちゃんよ。アタシら、このエリートロシア女共にアタマきてっからよ。どーしてもボコらなきゃすまねーんだわ。コイツみてーに邪魔しねーで、おとなしく『回れ後ろ』してくんない? そうすりゃ無事でいられっからよォ。アヒャヒャヒャ」
「それとも一緒に剥かれる? 裸にすりゃ、けっこうな見世物になるぜェ。ヒヒヒヒッ」
「
鉄パイプで周りをガンガン叩いたり、ナイフをペロペロしたりして言うこのセリフ!
なんでソ連の軍事基地内にこんなロックなヤツラがいるの!?
ハッ! まさかオレはいつの間にか死んじゃって、ロックな【梅澤春人ワールド】へと転生しちゃったとでもいうのか!?
落ち着けオレ。コイツらは軍のフライトジャケットを着ているし、階級章もつけている。
軍に属している人間には間違いない。
「ユウヤ、いったい何がどうして、こんなことになっていますの?」
「俺にもよく分からん。呼び出しを受けたんで行く途中、イーニァの悲鳴が聞こえてきてな。来て見るとクリスカとイーニァがコイツらに襲われていたんだ」
コイツら、十代特有のあどけなさの顔で、見ればみるほど
「本当に、なんで軍の基地内にこんなヤンキーみたいな連中がいるんですの!?」
つい前世日本の不良をあらわすスラングの”ヤンキー”なんて言葉を使った。
だが瞬間、空気が変わった。
連中はギラリと凶悪にオレを睨みつけ、殺気をみなぎらせた。
「………………お前、いま何つった?」
「はい?」
「俺達が
「ふざけんじゃないよ! こんな地獄の底で毎日BETA退治をやらされているあたし達のどこが、後方で偉そうに最新設備でふんぞり返ってる
しまった。
”ヤンキー”という言葉は意外と歴史があって、アメリカの南北戦争時、北軍兵士をあらわす言葉がはじまりだとか。
そんな言葉がどうして、オレの前世日本では不良をあらわす言葉になったのか不思議だが。
有名な格言に『ヤンキー、ゴーホーム!』とかある。
「許せねぇ…………! もう外からの客人だか知らねェがかまわねェ! やっちまおうぜ!」
「そうね! こいつらが来るたび、こっちは余計な苦労をさせられて死人が出るんだもの。ここで思いしらせてやるわ!」
それはもう冷笑まじりの遊びのような目じゃない。
本当の本気に殺気をはらんだ人殺しの目だった。
なんてこった。外国の軍人相手に本当にやる気か。
後でタダじゃすまないだろうに。
沸点がドライアイス並に低い連中だ。
「ヤマシロ、貴様は状況を悪化させに来たのか? 彼らはあれでも祖国ソビエトの前線を守り続けてきた同胞。それをよりにもよって、一般兵士すらBETAとの戦闘を経験していない天国連中の
なんだよクリスカ。なんで助けにきたオレが君に責められなきゃならない?
「俺は正真正銘その
ユウヤまで!?
だがしかし、たしかに連中はナイフや鉄パイプを水平にこちらに向けてきた。
陣形までも前衛後衛を組んで、容易にこちらから攻められないようにしている。
マズイ! あれは避けられない!
絶体絶命!!!
――――――「貴様たち、何をやっている!」
(……………え?)
突然に通用路に、凜とした女性の声が響いた。
すると殺気をはらんで戦闘態勢をとっていた少年少女は、弾かれたように直立不動の姿勢をとった。
――――――カツカツカツ
規則正しい軍靴の音を響かせ、背の高いサングラスをかけた女性士官が現れた。
その後ろには篁さんと白銀が続く。
「貴様ら、それぞれの機体の整備補給の時間であろう! この命令違反は高くつく。今すぐそれぞれの持ち場に戻れ。駆け足ッ!」
「「「了解!」」」
さっきまで狼の群れのようだった奴らが、訓練された犬のように整然と駆けていってしまった。
最前線の兵士は『狼のように獰猛で犬のように従順でなければ生き残れない』というわけか。
「山城少尉、ブリッジス少尉、無事か!?」
篁さんが青い顔をしてオレ達の元へ駆けてきた。
「ええ。危ない所でしたが、おかげで助かりましたわ。あの士官に感謝しますわ」
篁さんは、そこらに散らばった鉄パイプやナイフを見て眉を寄せた。
そして立ち去ろうとする女性士官を引き留めた。
「お待ちくださいラトロワ中佐。あなたの部下が、私の部下に度を超した危害を加えようとしたようです」
中佐? そんな大物の部下のわりには、ガキばかりだったな。
いや、それ以前に不良集団みたいな奴らだったぞ。
「そのようですな。どうも申し訳ない、タカムラ中尉」
「中佐。彼らには処罰をしていただけるのでしょうね、そちらの方から。二度とこのようなことがないように」
もしかして篁さん、怒っている?
「約束しよう。今回だけは許していただけるとありがたい」
「………ええ、今回だけ。ですが次回があった場合には、問題とさせてもらいます」
「感謝する。では、私はこれで」
女性士官は踵を返し、そのまま立ち去った。
なんとも、貫禄のある人だ。
篁さんはかなり怒っているらしく、彼女らの去った方向をいつまでも睨んでいた。
「上総、ユウヤ。災難だったな。何があったんだ?」
白銀が話しかけてきた。
ユウヤはイーニァとそれを慰めているクリスカを顎で「クイッ」と指して言った。
「ああ。どうにもソ連内のいざこざで、この二人が襲われててな。見過ごせなくてそれに参加しちまったというわけだ。カズサも何故か来てくれたんだが、事態を悪化させてヤバかったぜ」
なんだよ、ちょっと『ヤンキー』って言っただけじゃんかよ。
このヤンキーめ!
「白銀、ところでさっきの女性士官は誰です? あの悪童どもの上官のようですが」
「向こうのジャール戦術機大隊指揮官のフィカーツィア・ラトロワ中佐だ。呼び出したユウヤがなかなか来ないってんで探しに出たんだがな。そこで途中で出会って同行してくれた。『もしかすると自分の部下が悪さをしているかもしれない』ってんでな」
「ということはあの悪童たち、やはり衛士だったのですね。ウイングマークをつけていましたが、ちょっと信じられませんでした」
「そして奴らジャール大隊が、外国から来訪の試験小隊の随伴を担当しているらしい。つまり実戦テストの間、俺達を安全に守っていただけるというわけだ」
「はぁ!? 守っていただくどころか、襲われたんですけど!!」
「……………こりゃ、頼もしい部隊に随伴していただけるもんだぜ」
不安だらけのこのソ連遠征に、さらに不安要素が加わった。
そして数日後。
いよいよBETAの大群が基地に襲来した。
TE編にはいって気がついたんだけど、やはりこの話はBETAとの戦闘が極端に少ないですね。
舞台がテストパイロットのいる後方基地だから当たり前ですが、せっかくのガンダムなのに活躍させる場が中々ないです。
でもソ連編は数少ない本格的なBETAとの戦闘がある話なので、はりきって活躍させます。