ゼータと上総   作:空也真朋

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 その頃の日本です。
 じつは武ちゃん、HSST落下のことは夕呼先生に伝えてません。
 オルタであったイベントが濃すぎて、アンリミのこの事件はスポーンと忘れちゃったんです。


54話 魔の陰謀オルタネイティヴ5

 横浜ハイヴは白銀の報告によって早期に調査を終える事ができ、その跡地に横浜基地建設を着手することができた。

 そして基地建設は突貫工事で進められ、現在は地下部分が完成。

 オルタネイティヴ4の核心である【00ユニット】の製作もすでに始まっていた。

 

 ♠♢♣♡♠♢♣♡

 

 香月夕呼Side

 

 横浜基地 地下19階

 副司令官私室

 

 部屋に据え付けられた大スクリーンには、衛星映像による現在の横浜港近海の東京湾が映されていた。

 そこには日本へ派遣されているアメリカ軍艦隊が次々と集結している様子が映しだされている。

 

 「本当に正直すぎる連中ねぇ。この分じゃ第五計画推進派(ヤツら)、明日にも来るわね」

 

 クーデター発生と同時に、この大艦隊で横浜基地にプレッシャーをかけ、指揮権の譲渡をせまる、と。

 思わず笑ってしまうくらい分かりやすい。

 『これから日本を侵略しにお邪魔いたします』と言っているようなものじゃない。

 でも、報告のためにたまたまここに居る鎧依は、わずかにとまどった声を出した。(あたしじゃなきゃ見逃しちゃうけどね)

 

 「ふむ。たしかに、この招かざる客は明日にも訪問してきそうな勢いですな。ですが内通者の話では、決行日はあさってになるそうです」

 

 「はぁ?」

 

 あたしは思わず、スクリーンの大艦隊をマジマジと見てしまう。

 日本に異変が起こらなければ、コイツらは何もできないはず。

 

 「あさって? なのに、もう艦隊をこんなに集中させているわけ? こいつら明日は何するつもりなのよ?」

 

 「『演習』という名目ですから、本当に洋上演習でもするしかないでしょうな。いやはや他国の庭で迷惑なことです」

 

 「………………変ね。いくら何でも本当に演習なんて、無駄が多すぎるわ。明日の空白の一日。第五計画推進派(ヤツら)、いったい何をするつもりかしら?」

 

 「指揮官の性格によっては慎重が過ぎて一日くらいの誤差はよくあることです。臆病な私の私見ですが」

 

 「部隊ならともかく、艦隊は石油をたらふく喰うわよ。無駄がないよう綿密なスケジュールを組んで運用するはずよ」

 

 どうにも、この艦隊の動きは明日を想定しているようにしか見えない。

 

 「さて。神ならぬ身に、この世の神にもなろうというかの国の思惑などわかりかねますな。まぁ明日動くことも想定はしておいてください」

 

 「………気にはなるけど、今の時点でできることはないわね。予定通り、青年将校達が動くのをを待ちましょうか」

 

 ざっとモニターで各地の仕掛けの様子を見て、見落としがないかを確認していく。

 

 「それと博士。あなたの暗殺計画が進行中だという噂もチラホラ。来るとしたら、この事件中です。念のためここから動かないことを願います」

 

 「大丈夫よ。ここは地下19階シェルター構造の内。ここから地上に指示を出して、あたしはクーデター進行中は外に出ないわ。優秀な部下がちゃんと対処してくれるから安心よ」

 

 「うらやましいことですな。私はこれから身を粉にして駆けずり回らねばなりません。叶うなら終息するまでここでノンビリしていたいものですな」

 

 「それはあたしが御免被るわ。あたしだって遊んでいるわけじゃないのよ。ここで状況をコントロールしなきゃなんないんだから」

 

 「フッ分かっていますよ。では、私もそろそろ行かねばなりません。互いにご武運を」

 

 鎧依が行った後も、あたしはこの艦隊が明日何をするかが気になった。

 それは妙にチリチリする感覚だった。

 

 

 

 

♠♢♣♡♠♢♣♡

 

 第五計画推進派Side

 

 東京湾 横浜港近海

 米軍第7艦隊 旗艦空母 ロバート・F・ケネディ 司令官私室

 

 その部屋の主であるジャミトフ・ハイマン中将は、高級酒を手酌で飲んでいた。

 そこに司令官付参謀のバスク・オム大佐は報告のために入室してきた。

 

 「閣下。飲んでいらっしゃるのですか?」

 

 「うむ。いわば”前祝い”というやつだ。まずは明日の女狐の件がつつがなく完遂できるようにな。バスクよ。おまえも一杯だけどうだ」

 

 「いえ、遠慮いたします。私の古巣の部隊では、作戦前の”前祝い”は不吉とされています。作戦前こそ気を引き締め備えよ、と学んでおります」

 

 ジャミトフはバツの悪い顔をしてグラスを机に置いた。

 

 「これはしたり。ではワシは愚将か」

 

 「ご安心ください。作戦に監視の目を緩めぬことこそ、参謀たる私の役目です。閣下が安心して酔えるように」

 

 「いや、ワシももう飲むのはやめにしよう。明日からはじまる一連の作戦の完遂までは気を緩めるべきではないな。まずは明日のHSST(再突入型航宙駆逐艦)の方はどうだ」

 

 「順調です。民間の貨物船に偽装したHSSTは大気圏外を移動。目標地点へ到達後、横浜基地に向かい自由落下をはじめます」

 

 「その時点で女狐は対抗措置をとろうとするだろうな。だが、抜かりはないのだろう?」

 

 「もちろんです。通常の航宙駆逐艦は電離層を抜ければ減速するようプログラムされています。が、これは逆にフルブーストがかかります。地表到達まで140秒ですので、どのような対抗措置も間に合いません」

 

 「それでは地表到達時には音速の数倍もの加速になるぞ。大気摩擦の耐熱は大丈夫なのか?」

 

 「名目は民間に払い下げた駆逐艦ですが、無人ですので通常より厳重な耐弾耐熱処理を施せております。地表に到達したHSSTは正に巨大な徹甲弾。落下の衝撃だけでも地中を20メートルは抉りますが、とどめに…………」

 

 ジャミトフは妙にもったいぶるバスクに嫌な予感を覚えた。

 そしてその予感は当たった。

 

 「その瞬間、内部に搭載されている爆薬が炸裂。半径10キロが消滅いたします」

 

 ――――――――!!!?

 

 「10キロだと!? バカな、あまりに過剰すぎるぞ!! なぜ止めなかった!?」 

 

 ジャミトフは思わず立ち上がった。

 

 「横浜基地はいまだ建設中ではありますが、地下部分はすでに完成しているようなのです。地下は20階もの深さでシェルター構造。その防壁の奥にいる女狐を確実に仕留めるには、これぐらいしなければおぼつきません。かの指導者(マスター)の説明です」

 

 「ドスン」と力なく椅子に座りなおす。

 

 「……………先日のG弾投下といい、我々は横浜にとって正に災厄だな。だが、このような作戦を実行するキリスト恭順派(ヤツラ)はやはり危険だ。バスクよ、奴らの首領【指導者(マスター)】の始末は、事が終わり次第すぐかかれ」

 

 だが、バスクはジャミトフの命令に歯切れ悪く答えた。

 

 「それが……私の子飼いの専門家によると、指導者(マスター)の暗殺はあまりに困難だというのです」

 

 「なんだと!? 貴様の特殊部隊がか!? たかがテロリストの首領を!?」

 

 「はい。どうやら奴は特殊部隊の手口に深く精通しているらしく、潜り込むことが困難だそうです。加えて居場所の情報を極力出さないようにし、影武者をいくつも使い居場所の特定ができません。仕留めたとしても、それが本物である確定は難しいでしょう。どうやらすでに我々の意図を察知しているようです」

 

 ジャミトフは頭を強く掴み苦悩する。

 

 「……………なんということだ。ワシは怪物を大きくしすぎたかもしれん。だが、だからこそ指導者(マスター)の抹殺は必ず為さねばならん! 女狐、プロミネンスの始末がすんだなら、キリスト恭順派(ヤツラ)は我々の最大の脅威となる。バスクよ、方法を考えよ。どれほど困難であろうとも!」

 

 「もちろんです。私はすでに、霧の奥にいる指導者(マスター)の居場所を特定できる瞬間と、それを撃ち抜く方法を見いだしております」

 

 「おお、さすがだバスク! それは何時だ?」 

 

 「狙いは奴らの次の作戦にあります。奴らはHSSTを落下させた後、すぐにユーコン基地を制圧するそうです。時期は明確に告げておりませんが、一月以内だと」

 

 「なんだと!? 一月以内では我々が日本に関わっている時期。手が出せないではないか!」

 

 「それが狙いでしょう。先ほど述べた通りキリスト恭順派(ヤツラ)も我々を警戒しております。ですが、奴らのユーコン基地制圧作戦中こそが指導者(マスター)抹殺の最大のチャンスでもあります」

 

 「ふむ? どういうことだ」

 

 「我が国の対BETA最前線基地ユーコンの攻略ともなれば、どれだけ完璧に作戦を練ろうとも、指揮を他人任せでは足りません。指導者(マスター)自ら行うはずです。つまりこの作戦中には、確実に指導者(マスター)はユーコン基地にいるのです」

 

 「なるほど。ではユーコン基地奪還に際し、そこに我々の意図を伝えた特殊部隊を送り込み、指導者(マスター)を始末する、というわけだな?」

 

 バスクは軽く首をふった。

 

 「残念ながらそれで指導者(マスター)は討てないでしょう。先ほども述べたように指導者(マスター)は特殊部隊に深く精通しております。作戦中に気づかれ、逃げられる可能性が多分にあります。加えて我々が現場にいないのでは、とても仕留めきれません」

 

 「ではどうする。貴様の言う”チャンス”をどう生かすというのだ?」

 

 「ユーコン基地にもっとも近いフェアバンクス基地にB-2爆撃機を待機させます。かの基地の被害が最高潮に達した頃、それを発進させます」

 

 「なんだと! まさかそれでユーコン基地を…………!」

 

 「そして使用するブツは中性子爆弾」

 

 ―――――「バカなァ!!!!」

 

 バスクのあまりに常識はずれの策に、ジャミトフは先ほどよりさらに激しく飛び上がった。

 

 「自国の基地に中性子だと!? あそこの司令官のジョージ・プレストン准将は我々の同志だぞ! それに南アメリカ条約機構軍、カナダ軍、オーストラリア軍など支持国の代表もおる!」

 

 「先ほど中将閣下がおっしゃったでしょう。『指導者(マスター)の抹殺は必ず為さねばならん』と。やむを得ない犠牲ですが、これが確実であり最善です」

 

 「ウ……ウウム………」

 

 「それに新たな戦術機技術の革新によって、欧州連合をはじめとする反オルタネイティブ5の抵抗は抗しきれないほどになりました。ですが、その戦術機開発の中心であるユーコン基地が消滅したなら、一気に我々は盛り返すことが可能です!」

 

 「………………よかろう。だがプレストン准将は………」

 

 「彼には『ハルトウィック大佐は准将を亡き者にして、基地の掌握を企んでいる可能性がある』と伝えておきましょう。疑心暗鬼にかられ、基地の防衛体制はガタガタになります。ククク……」

 

 こ奴、指導者(マスター)と同類だったわ!

 有能であろうと、こんなやりすぎる男を参謀長にして良いのだろうか?

 ジャミトフは大きな不安に駆られた。

 

 

 

 ――――――翌2001年8月19日。

 日本とソ連は、奇しくも同じ日ほぼ同時に、巨大な衝撃を迎えた。

 それは両国のみにとどまらず

 世界すべてを震撼させる最大にして最悪、また最高の衝撃であった。




 おかしいな。
 グラサンゴリラがボスだったっけ?
 それと最後にハードル上げまくったんで、話を考えるのが大変です。
 なので、しばらくお休みです。

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