ゼータと上総   作:空也真朋

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 ちょっと説明したいことが多くなったので、前日夜から始めることにしました。


55話 その前夜

 2001年8月18日

 ミーティングでエヴァンスク・ハイヴ近辺のBETAの増大が衛星情報で認められたことを告げられた。それら数万のBETA群が警戒区域であるミリコヴォ地区に侵攻中だという。

 試験部隊はBETAの侵攻阻止を任務とするソ連軍部隊に随行して、いよいよ実戦試験が始まる。

 というわけで、今日はそこの前線基地へと移動。

 BETA到達予測は明日早朝らしいので夜間出撃は免れたが、今夜は自分の機体のある格納庫で即応待機である。

 

 

 「さて。アルゴスのみなさんは待機部屋で就寝するだけですが、わたくしと白銀は機体の整備をしなきゃなんないんですよね。フリですが」

 

 オレらのガンダムの整備はそれぞれの衛士がやっている、という設定になっている。

 というわけで寝る前の今だが、機体を実戦状態にするために格納庫だ。

 もっともオレのゼータはハロが自動でやってくれるから時間を潰すだけだが。

 白銀のνガンダムの方もさほど特別な整備はいらないが、いちおうは点検しておく(ハロが)。

 すると頭をかいて白銀もやって来た。

 

 「いや、まいったぜ。考えてみりゃ俺もこの世界では初陣だったんだよな。初陣のユウヤに、アルゴスの皆がBETA戦のコツなんかを教えていたんだがな。その話の流れで、俺のBETA戦の経験とか聞かれちまった。答えられねぇ」

 

 「タイムリーパーあるあるですわね。ベテランなのに初陣とはこれいかに」

 

 じつは白銀のνガンダムに疑問があったので、聞いてみることにした。

 

 「ところで白銀、あれはどういうことです? フィンファンネルは使えないから外すんじゃなかったんですの?」

 

 出撃前のνガンダムはフィンファンネル版をつけた完全体の姿になっていたのだ。

 

 「ああ、あれか。ハロから聞いてないのか?」

 

 「整備モードになると完全なメカみたいになっちゃって、質問とかできないんですわ」

 

 「じゃ、俺から説明するか。ハロの話だと、あれはG元素をより多く集める機能があるらしい。つまりあれをつけてりゃビームライフルのエネルギーがよりたまって、フルオートも長距離モードも使い放題だと」

 

 白銀がビームライフルのモード切り替えのことを話したんで説明しよう。

 νガンダムのビームライフルはゼータのものより一回り大きく、モードを切り替えることにより通常射撃、マシンガンのようなフルオート、ハイパー・メガ・ランチャーのような長距離砲と、3形態に切り替えることができるのだ。

 さすが第二次ジオン抗争時のビームライフル。

 同じビームライフルでも、グリプス戦役時のこっちとは性能が段違いだ。

 ちょっとあれは羨ましい。

 

 「ま、今回俺らはほとんど戦闘をしない予定だがな。ハロがどのくらいG元素を取り込めるかのデータが欲しいってんで、つけて出撃することにしたんだ」

 

 ハイパー・メガ・ランチャーを撃てるG元素を集めるのも苦労するから、これも羨ましいな。

 と、そこへ不知火・弐型の整備を終えたユウヤの専任整備士のヴィンセント・ローウェル軍曹が通りかかった。

 

 「あれ、本当に衛士(パイロット)が整備やってるんスか。でも明日は早くから出撃ですよね。手間取るようなら、手伝いますよ」

 

 「大丈夫ですわ。ガンダムは、さほど調整はいらないよう出来ていますから」

 

 「そうですか、羨ましいことです。不知火・弐型(セカンド)の方は速すぎる実戦調整のせいで大変なんですよ。ユウヤは初陣だってのに、こんなモンに乗せるなんて。お偉いさんのやることは!」

 

 「ヴィンセント、年下の俺らに敬語じゃ話しにくいだろ。タメ口でいい。しかしユウヤが心配か? たしかに明日はアイツに頑張ってもらわなきゃいけないが、それをフォローするのが俺らの任務だ。安心してくれていいぜ」

 

 「そうか。んじゃ、お言葉に甘えて。我ながら過保護だとは思うんだがね。ドゥーマ小隊の話とか聞くと、どうもね」

 

 オレ達のソ連派遣は第二次。その前の第一次派遣とかあったのだが、そこのアフリカ連合のドゥーマ小隊全員がシェルショックをおこし、パニック状態になったらしい。

 シェルショックにかかる奴は大東亜連合にいたときにも時々いたが、一人でも大変なのに、一つの戦術機小隊まるごとだなんて想像を絶する事態だ。全滅してもおかしくない。

 その事件の結果は、なんとか戦線は守られたものの、それの随伴任務をしていたジャール大隊には死人が出たという。

 その話を聞くと、あのジャール大隊のガキ共がオレら派遣試験部隊に憎しみを抱くのは無理ないと思ってしまう。

 

 「気持ちはわかるがな。テストパイロットとはいえ、衛士ならいつBETAの戦いに出されるかわからん。バックアップが整っているうちに初陣はすませた方が良いぜ。そのドゥーマ小隊だって、それだけの”やらかし”をしながら、生きて帰ったろう?」

 

 「そうですわ。わたくしの初陣なんてBETAが帝都を蹂躙するその日に、教育課程をとばして任官させられて戦場に立たされましたもの。後方警備が任務だったのに、前線がみんなBETAにやられて、いきなり実戦ですわ」

 

 「あ、いやアンタはその戦いで六万のBETAを撃破した、なんて話を聞いたんだが?」

 

 …………………あ、オレTUEEEE超人のイキリになってしまった。

 

 「まぁとにかく、ユウヤは、もうやるしかねぇんだよな。だったら明日はユウヤをたのむ! お二人さん」

 

 「まかせろ!」

 

 「ちゃんとユウヤに華々しい初陣を飾らせ、帰還させてごらんにいれますわ」

 

 と、そこへ篁さんが格納庫(ハンガー)へはいってきた。

 なんだ、見回り監督とかしているのか?

 オレらは敬礼をして迎える。

 

 「お前達。今夜の就寝時間は普段より早めになる。明朝6.00に作戦区域で部隊展開だからな。作業を早めに終わらせ、さっさと待機室へ行くように」

 

 「「「はっ!」」」

 

 即応待機は深夜でも緊急出撃ができるよう就寝も機体の近くになる。

 なので今夜の寝床はこの格納庫内にある待機室でざこ寝だ。

 

 「ちなみに女性陣は中華統一戦線のバオフェン小隊と一緒に寝ることになる。あそこの衛士は女性だけだからな。だから、その…………」

 

 ありゃ? なんか告白前の女の子みたいになった?

 

 「山城少尉。今夜、貴様は私と一緒に寝るように! 早めに待機室へ来い。以上だ!」

 

 そう言ってクルリ踵を返すと、足早に行ってしまった。

 ちょっと顔が赤かったような? 

 

 「ああ。篁中尉も今回は戦術機で出撃だから、ここで寝なきゃなんねぇのか。しっかし、わざわざカズサを呼びに来るってこたぁ、よっぽどそのバオフェンってのは面倒な奴らなのかねぇ」

 

 「そういや、バオフェンの女どもは荒っぽそうな奴らばかりだったな。上総、早く行ってやれよ。ざこ寝なら隣にいてやった方が良いだろ」

 

 ――――――――?!!!

 

 な、なんだってぇー!

 アイドル上官・篁唯依姫のおとなりで就寝!?

 可愛い寝顔とか見放題!?

 可愛い寝息とか聞いて、肌のぬくもりなんかも感じちゃう!?

 山城上総になって良かったぁー!!!

 

 ブンブンブンブン

 

 「ど、どうした上総!? いきなりそんなに首をふって!」

 

 「い、いえ、突然わたくしのものでない邪悪な思念が……」

 

 「そ、そうか。あとは俺が(ハロを見ておくのを)やっておくから、お前はもう寝ろ。篁中尉が待っている」

 

 ブンブンブンブンブンブンブン

 

 「どうしたんだカズサは! ハッ! もうシェルショックを起こしちまったのか!?」

 

 「ど、どうして就寝にはいるだけで、こんなに昂ぶるのでしょう? 久々のBETAのいる戦場を前に、おののき怯んでいるとは思いたくないのですが」

 

 

 

 とまぁ、本当に篁さんにしがみつかれて「ドキドキ♡」な一夜を過ごした翌朝。

 防衛ラインまでZガンダムに乗って出動。

 支援砲撃の爆音と噴き上がる爆炎によって一日は始まった。

 

 

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