ゼータと上総   作:空也真朋

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58話 ビームライフルの青春、背中合わせのガンダム

 

 分隊と共に前線基地へと帰投したオレ達。

 基地を一望できる丘陵のそこで見たものは…………

 

 『な、なんだよコレ! 基地が一面、BETAだらけじゃないかよ!』

 

 『き、基地の敷地が埋め尽くされている……チクショウ、糞共め!』

 

 「まぁ。じつに香ばしい光景ですわね」

 

 前線基地敷地の中も外もすでにBETAで蹂躙され、あらゆる設備が刻々と破壊されてゆく。

 分隊の子達にとってこの基地は家同然らしく、通信の声は無念に満ちていた。

 

 『怯むな! 命令通り遅滞戦闘を行う。まずは遮蔽物の多い場所に射撃地点(ポイント)を構築する。後、BETAの足を潰して浸透を遅らせろ。基地の人員が無事に安全地帯へたどり着く時間を死ぬ気で稼げ!』

 

 イヴァノワちゃん勇ましいなぁ。

 さて。オレにとっては先ほどの試験部隊のシッポとは違って、本当に久しぶりのBETA戦。

 現場の基地は素敵にBETAに埋め尽くされて、じつにヤバい。

 これぞ本当のBETA戦だな、うん。

 

 「それでは、みなさん。当機体から大きく離れてください」

 

 『どういうことだ!! まさか逃げる気か!?』

 

 『逃がさん! こうなっては一機でも弾幕を張れる奴は必要だ。ここへ来ると言った以上、責任はとってもらう』

 

 分隊全員が一斉に突撃砲をこちらに向けての交渉(ネゴシエーション)

 斉射体勢は一瞬だし、息もしっかり合っている。さすがの練度だ。

 

 「離れていた方が良いと思いますけどねぇ。ま、説明なんて時間の無駄ですし。はじめますわ」

 

 主機をひきあげ、半分以上眠らせているゼータのメインシステムを全開にする。

 BETAにはより高性能の電子機器に反応し、優先的に襲うという性質がある。

 つまり宇宙世紀製の、今時(こんじ)最新を超えたシステムなどを起ちあげたらどうなるかというと………

 

 『ジ、ジャール2! 西のBETA梯団が一斉にここに!』

 『正面もだ! 最大規模の梯団がこちらへ接近ッ! 当地点はヤバい!!』 

 『うわあああ東までも! 完全に囲まれた! 退避経路なんてどこにもない!』

 『なんだとッどういうことだ!? なぜ戦域すべてのBETAがこちらに向かってくるっ!? 概数はいくらだ!』

 『よ、四千っ………いや五千ッ! わ、わからねぇ! とにかくマーカーが赤一色だ!!』 

 

 ―――と、なるのだ。

 フフフフ、ガキ共よ。我が青春【ガンダム】を口汚(くちきたな)く愚弄した罰だ。

 せいぜい恐怖に溺れるがよい。

 そして見よ! 華麗なるゼータの勇姿を目に焼き付け、己の愚かさを知るがよいわ。

 フハハハハーーッ!

 

 「それでは行って参ります。白銀(アーガマ01)、分隊のみなさんをお願いしますわ」

 

 『光線級吶喊(レーザーヤークト)か? 話には聞いていたが、本当に重金属雲もなしのたった一機で出来るのか?』

 

 「ふふっ、それがニュータイプですわ。機体性能だけでは為し得ない奇跡をご覧あそばせ」

 

 それまでの鬱憤を晴らすように五百キロで疾駆。

 まず目指すは光線級!

 前方を要撃級が阻むようにふさぐが、軽くビームサーベルで(なます)にしていく。

 やがてレーザー警戒区域にまで近づくと、それまでワラワラ寄ってきたBETAは割れるように道を開ける。

 そして前方からレーザー集中砲火の歓迎。

 

 「この真夏の陽光のような眩い道も懐かしく感じられますわね。でもコイツら、レーザーが遅いんじゃありませんこと? もしかして不良品かしら」

 

 「そんなわけないじゃん。上総のニュータイプ能力が上がったんだよ。バイオセンサーが主機を上げまくって、調整が大変だ」

 

 「ふふっ。いっそレーザーを掻い潜ってどのくらい近づけるか、ためしてみます?」

 

 「冷却が間に合わなくなるからやめて。オーバーヒートで振りまわされるのって、メカには酷い拷問なんだよ(泣)」

 

 レーザーを掻い潜りながらハロと会話ができる程に、光線級吶喊《レーザーヤークト》が余裕になってしまった。

 

 「では、愛機のために簡単に終わらせますわ。お休みなさい、目玉のみなさん」

 

 ビームライフルの有効射程にはいった瞬間、ビームライフルを乱射。

 あっという間に光線級の一団は肉塊に変わった。

 

 「またまた光線級吶喊(レーザーヤークト)の記録を更新してしまいましたかしら? ハロ、二位との差は?」

 

 「そんな意味ない記録なんか調べないって。誰も上総とゼータ(ボク)に張り合えないんだから」

 

 光線級を全滅させると、再びBETAが一斉にせまってきた。

 

 「遊びが過ぎましたかしら? 退避が遅れましたわ」

 

 ハロと無駄話をしたせいで、さっきまでの道が完全にBETAに埋め尽くされた。

 まあいい。だったらBETAの死山血河を築いて強引に押し通るまでだ。

 ――――――と、思った瞬間だ。いきなりニュータイプの直感が閃いた。

 

 「ヤバッ! 上!?」

 

 反射的に機体を強引に進ませる。

 瞬間、巨大な衝角付き(ウィップ)数本が頭上から降り落ちてきて、躱した元の位置に突き刺さる。

 迂闊にも周囲の要撃級、戦車級ばかりに気をとられ、かなり先にいる要塞級の一団には注意が薄かった。

 

 「少し油断が過ぎましたわね。上にも注意となると、ここは位置が悪いですわ」

 

 「スペックを過信して戦場の基本を忘れたね。慢心慢心」

 

 移動しようにも、見回すと雲霞のごとく一面にBETAの群れ。

 さらにレーダーにはBETAのマーカーが真っ赤になるほど集ってきている。

 

 「まったく。この気持ち悪い光景はいつまでも慣れませんわね。鬱陶しいし、キリがない」

 

 ビームライフルを乱射しまくるが、接近をわずかに止めるだけでいつまでも減らない。

 さらに(ウィップ)も散発的に襲ってくるので、体勢を立て直す暇すらない。

 

 「光線級を倒したからハイパー・メガ・ランチャーを使えるよ。使う?」

 

 「使いたいですが、ちょっとコイツらを引き離さないと。構える(いとま)さえもいただけませんわ。あら?」

 

 ビシュビシュビシュビシュ

 

 ビームライフルの音………白銀? でも間隔がやけに狭い?

 ハッあれがフルオート機能の音!

 と突然、先ほどから鬱陶しく(ウィップ)を投げてきている要塞級の巨体が「ズズウーーン」と地響きをたてて倒れた。

 さらにビームライフルの音は続き、一体また一体と落ちていき、やがて全滅した。

 

 「ええっ早すぎる! タフな要塞級はビームライフルでも連続でなんて倒せないよ!」

 

 「これがビームライフルフルオートの威力ですわ! 着弾を集中させれば、要塞級の巨体すら撃ち抜くことが可能ですわ!」

 

 程なくしてその方角から無数のビームライフルの光条が流れてきて、目の前のBETAの群れ十数体が肉塊となった。

 すごいビームライフルの密度だ。

 やがてBETAの死骸でできた汚い絨毯を渡って、ビームライフルを乱射しながらνガンダムが来た。

 

 『アーガマ02、雑に戦いすぎだ。目標を達成したら速やかにこちらと合流しろ』

 

 「ごめんなさい、反省いたします。あ、そういえば分隊のみなさんはどうしました?」

 

 『BETAの圧力が弱まった頃に別れた。優先的に狙われるのはこっちだし、別れた方が向こうは安全だからな』

 

 イヴァノワ大尉達は無事か。

 ホッとした自分に少し驚く。案外、あの生意気で凶暴な子達を気にかけていたんだな。

 

 「とにかく来ていただいて助かりましたわ。これで必殺のハイパー・メガ・ランチャーでこいつらを………」

 

 『よし、連携してここを抜けるぞ。まずは背中を守り合う。目の前の敵だけを倒せ』

 

 νガンダムはゼータの背面に背中を合わせてつく。

 そして猛烈な勢いでビームライフルをフルオート乱射する。

 次々に前面のBETAを肉塊に変えていく。

 

 「あ、いえ、ハイパー・メガ・ランチャーは余剰熱を背面に排出するんで、これでは撃てない…………ああ、もういいですわ!」

 

 オレはハイパー・メガ・ランチャーを背中に戻し、再びビームライフルを撃ちまくる。

 ハイパー・メガ・ランチャーよ。お前はつくづく出番に恵まれない武装だな。

 アニメでもいつ使ったか分からないし、もしかして設定だけ?

 

 「喰らいなさいハイパー・メガ・ランチャーの哀しみを! 哀武装!!」

 

 ハイパー・メガ・ランチャーの想いをビームライフルにのせ、撃ちまくる。

 背中からは絶え間ないフルオートの音。

 前面後背ものすごい勢いでBETAの死骸は量産されていく。

 

 『よし、このまま微速で移動だ。基地から引き離して爆撃可能な位置まで誘引するぞ』

 

 

 ――――まるで青春映画だ。

 不器用(シャイ)な二人は互いの顔を見れない。

 背中を合わせたままでしか寄り添えない。言葉もかわせない。

 だから彼氏彼女は言葉の代わりにビームライフルを撃ちまくる。

 そんな三文シナリオのヒロインになった気分。

 

 「ふ………ふふふ。あははははは!」

 

 『上総?』

 

 眩いビームライフルのスポットライトに包まれた、背中合わせ二機のガンダム。

 観客のいない華やかなステージの自分がおかしくて、笑いが止まらなくなった。

 

 

 

 




 青春ビームライフルグラフィティー。
 書いているときに聞いている曲に影響されて、作品が妙な方向へ行ってしまうのはよくあることです。
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