ゼータと上総   作:空也真朋

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 TEを見返して思ったんだけど、サンダーク中尉って唯依姫とラトロワ中佐を暗殺をしようとして、唯依姫に重傷まで負わせましたよね?
 なのに最後まで生き残ったうえ、特に不幸にならないまま終わったのはモヤッとします。
 指導者(マスター)を倒せないことといい、TEはボスキャラにトドメを刺せない不完全燃焼なエピソードが多いですね。


59話 45分の人生

 フィカーツィア・ラトロワ中佐Side

 

 西部海岸 西地区臨時退避地点

 

 試験部隊を無事に退避地点へ誘導した後、整備班への指揮と各所の連絡を終えると、後は補給の推進剤注入の完了待ち。

 移動補給車両の跳躍(ジャンプ)ユニットへの推進剤注入装置は、あまりスペックは高くない。なので完了まで時間がかかってしまうが、全機満タンにすることを怠るわけにはいかない。

 光線級吶喊(レーザーヤークト)ともなれば、光線級を始末した後に空中へ逃れるのに絶対必要だからだ。 

 残量表示カウンターをぼんやり眺めながら、ここへ来る前のHQ(ヘッドクォーター)との不可解な連絡を思い返していた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 『私は中央戦略開発軍団のロゴフスキー中佐だ。危急存亡の時ゆえ、私が直接基地の決定を貴官に知らせよう』

 

 (中央戦略開発軍団だと? 何故こいつらが防衛戦の指示にしゃしゃり出てくる?)

 

 【中央戦略開発軍団】それはソ連軍特殊実験開発部隊を擁するエリート部隊で、主にいけすかないロシア人特権階級で固められた高等秘密組織ってやつだ。

 今回の遠征に参加している曰く付きの組織連中の親玉だが、こんな状況に出しゃばるような奴ではないはずだ。

 そんな自分の疑問に反し、あたえられた命令は至極まっとうなものだった。

 ただ一つを除いて。

 

 

 『………………以上だ。この任務には基地内にいる同胞すべての命がかかっている。貴官の忠誠に期待する』

 

 「質問がある。我が国試験部隊のイーダルに協力させるというのは、まぁ良いさね。負担を考えればやらせるべきじゃないとは思うが、そっちの手駒のことだしね。だが他国の【アーガマ小隊】にまで協力を要請するってのはどういうことだい?」

 

 『アーガマ小隊は試験において射撃、戦闘機動共にしていない。推進剤も弾薬も十分なはずだ。貴隊が基地に到着するまでの間、被害をおさえるには適任だと思うが?』

 

 「どうしてその小隊の試験の状況を………いやしかし、この難しい戦域に、実力未知数の他国の者を使うのはどうかと思うね。先に派遣されたドゥーマ小隊のようなことになったら、取り返しのつかないことになるよ」

 

 『ハハハその心配が杞憂なのは貴官もその目で見ただろう。今回派遣された試験部隊は、試験において皆高い撃破数を誇っている。未戦闘のアーガマ小隊もきっと活躍を期待できるだろう』

 

 そいつらがピンポイントでポンコツだったらどうすんだ!

 実力未知数の者を修羅場に置くなんざゴメンだ!

 …………と言いたかったが、さすがに他国の衛士の罵倒は控えた。

 

 「全世界社会主義国の盟主の面子(メンツ)はどうしたんだい。他国に祖国の危機を救ってもらうなんざ、大国の沽券に関わるんじゃございませんかね」

 

 『基地の直近に光線級が出たのだ。国家の体面を気にしている場合ではないよ。今は他国に借りを作ってもこの危機を凌ぐことが重要。基地司令部はそう判断した』

 

 今更らしくないことを。

 今までその大事な大事な体面のために、どれだけ現場の人命をすり減らしてきたと思っている。

 

 「なるほど、賢明なご判断ですこと。ですがその苦渋の決断が、たった二機の戦術機の戦力を借りるだけってのはいかがなもんだ。いくら何でも、国家の面子(メンツ)の天秤に釣り合わないんじゃございません?」

 

 「ラトロワ中佐。この協力要請は中央の承認を得た正式なものだ。疑念は挟まず、国連軍日本支部アーガマ小隊白銀少尉へ要請したまえ」

 

 「……………了解。だけど、この戦いに機体が無事でいられる確率はないよ。相手にしてみれば貴重な実験機を他国の防衛戦でオシャカにしてしまうんだ。受けるとは思えないけどね」

 

 『無論これは要請だ。相手の承認がないならば無理強いは出来ないよ。白銀少尉が断るなら、この話はここまでだ』

 

 ………………?

 

 「光線級出現の話はしてもいいんだね? まさか『それは秘匿したまま要請しろ』なんて言うんじゃないだろううね」

 

 『当然だ。そのような信義に(もと)る行いを中央が承認すると思うかね?』

 

 思う。

 というか信義など踏みにじって、何もかもブン獲って、後で屁理屈で押し通して済ますってのが昔からの上のやり方だったろう。

 何故、この件に関してだけは誠実国家みたいなことを言う。気持ち悪い。

 しかし言質はとった。

 BETAとすすんで戦いたがる変態はたまにいるが、光線級のいる戦場に出たがる奴はまずいない。

 ましてや年齢的にみて新兵も同然のたった二人の小隊。

 多分、戦場を体感させるためだけに送ってきた、という所か。

 だったら光線級の話でもすれば体よく断るか。

 

 「わかった。言うだけ言うよ。じゃ、重金属雲はケチらずにまきな。悪巧みばかり巡らせて、後方支援の役割を怠るんじゃないよ」

 

 『アーガマ小隊へつける分隊は貴官のもっとも信任のおける有能な者をつけたまえ。そしてそこの小隊のヤマシロ機の戦闘機動を映像にあますことなく記録するように』

 

 なるほど。目的はあの実験機のデータか。

 たしかに従来の戦術機の構造とはまるで違った作りをしていた。

 だったら、尚更そんな機密の塊のような戦術機を実戦に使う要請なんて断るだろう―――

 

 『受けます』

 

 予想に反してたった一言で了承した。

 アーガマ小隊の二人とも若さに似合わず、その顔に怯えも恐怖もなかった。

 あれはもしや、歴戦か?

 と、そこまで考えたとき、HQ(ヘッドクォーター)と連絡を取り合っていた部下が急を告げた。

 

 「ラトロワ中佐、現場の状況が急変! それに伴い命令内容の変更があるそうです。通信お願いします!」

 

 ちっ、やはり外国のお客さんは厄介を運んでくれる。

 ターシャ、お前は私の副官だ。

 こんなつまらないことで死ぬんじゃないよ。

 部下から奪うようにマイクを取り、スピーカーの向こうのCP将校(コマンドポストオフィサー)にがなりたてる。

 

 「ラトロワだ! 何がどう変わった。先行している分隊は無事か!?』

 

 『ツェー04補給基地戦域において、先遣のアーガマ小隊により光線級群はすでに撃破。BETA群、ツェー04補給基地より前面二千メートル地点へ移動。同小隊により急速に数を減らしている」

 

 「は、はああああああ?!!!」

 

 『ツェー04基地司令部発。ジャール大隊は直ちに補給作業を中断し戦域に向かえ。アーガマ小隊がBETA群を全滅させる前に引き上げさせるように。以上です』

 

 糞っ! いったい何がどうなっている!?

 本当に外国からお客さんが来る時は禄なことがない!

 

 

 

 

♠♢♣♡♠♢♣♡

 

 第5計画推進派Side

 

 日本帝国 東京湾横浜港近海。

 ここに米軍国連派遣第七艦隊は集い、大規模な演習を行っていた。

 戦術機空母二隻から戦術機は発進、着陸を行い、それを守る駆逐艦は艦隊隊列を整え、戦艦は巨大な砲塔から轟音を響かせる。

 これは日本帝国及び国連日本支部への示威行為であり威嚇。

 裏を知らず見た者は皆そう思うだろう。

 だが、裏の謀略は確実に進行していく。

 

 

 旗艦空母ロバート・F・ケネディ客室

 

 この日、ジャミトフ・ハイマン中将は一人の大物政治家を迎えていた。

 ジョージ・ニコルソン上院議員。

 初老でありながら精力みなぎる彼は、米国の進めるオルタネイティブ5の政界での中心人物。

 本来なら本国で政治工作を担っていなければならず、この時期にこんな場所にいて良い人物ではなかった。

 

 「困りますなニコルソン上院議員。予定にない演習視察など。無骨な空母では何も用意できず、この狭い客室を飾り付けるのが精一杯というところです」

 

 「なに、私も従軍経験はあるよハイマン中将。ここの狭苦しい扱いくらいは耐えてみせるさ。無論、私は遊びにきたわけではない。知っての通り合衆国が進めている対BETA計画は、麗しの女狐殿にだいぶ押されていてね。それに乗った亡命国家出身議員も元気よくはしゃいで、我々の陣営はだいぶ不利だ」

 

 「そこまで…………ですがご安心ください。間もなくその状況は一変いたします。この日本での工作が我々の勝利につながります」

 

 「うむ。だが私も大きな実績を得て発言する声を大きくしなければならないのだよ。この件はその絶好の機会というわけだ」

 

 「ふむ、日本帝国の立て直しに辣腕を振るい、合衆国の盟友へと政局を変えるのに一役買おうというわけですか。しかし『上院議員がたまたまここにいた』という偶然は出来すぎではありませんかな」

 

 「その程度の”たまたま”はよくあることだとも。それに我らが美しき宿敵を見届けるのも私の役目かと思ってね」

 

 ジャミトフは痛い所を突かれたように顔をしかめた。

 世界的テロリストであるキリスト教恭順派との繋がりは、この同志である上院議員にも秘密のはず。だが彼はいつの間にか知っていたのだ。

 

 「まったくかないませんなぁ。クリーンな上院議員ともあろうお方が、いったいどこでそれを嗅ぎつけたのやら」

 

 「君の辣腕が真っ当だけでなし得たことではないことは、昔から承知だとも。我らは同志。この件は決して表に出ないことは安心してくれ。だが、今度が最後だ。後片付けは責任をもってやりたまえ」

 

 なるほど。キリスト教恭順派と手を組んでいることに釘を刺しにきたか。

 たしかに私が連中と繋がっていることは政界としてもマイナス。

 潮時だと警告しにきたわけか。

 

 「ご安心を。世界を騒がせている悪辣なテロリストの命運は一月以内に終わるでしょう」

 

 「遅いねぇ。明日できないのかね?」

 

 「残念ですが、奴らはこちらにも隙をみせません。それだけの準備が必要です」

 

 「ふむ…………まぁ専門家たる君にまかせよう。これからこの日本で忙しくなることだしね」

 

 その時、伝令が参謀長であるバスク大佐の来室を告げた。

 ジャミトフは促して入室を許可する。

 

 「失礼いたします、ニコルソン上院議員、ハイマン中将閣下。たったいま例のHSSTが離陸前点検を抜け、エドワード空港を無事発進したと報告がありました」

 

 「おおっ」と二人は同時に感嘆の声をもらす。

 

 「通常予定の那覇空港到着は一時間後。すなわち………」

 

 「女狐の人生はあと45分、といったところか」

 

 「休憩は終わりだハイマン中将。艦橋へ行くとしよう。せめて彼女のために祈ろうじゃないか」

 

 

 

 




 45分後の世界。
 そこに夕呼せんせーはいるのか?
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