ゼータと上総   作:空也真朋

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06話 流星の少女

 「ええええええ!! なんでぇぇぇぇぇ!? 『無理ですわ』じゃないのぉぉぉ?」

 

 「グリプス戦役随一の紫電撃墜王が、あの程度のレーザーに背を向けるなど恥ですわ。目玉のお化けがハマーンのキュベレイやシロッコのジ・O(オー)ほどの脅威とお思い? かの者達のファンネル、ビームライフルを掻い潜ったことを思えば、光線級吶喊など時雨(しぐれ)を払い(ゆう)の小路を駆け抜けるようなものですわ」

 

 「何? その(みやび)なたとえ。いや、機体はZガンダム(ボク)でも、上総はカミーユじゃないわけで…」

 

 「あなたの最高傑作プラモも、モデルが地に墜ちれば泥にまみれますわね。あのますらおの勇姿が虚しいこと」

 

 「バイオセンサー起動! 上総、君のニュータイプ能力を力に変える。出るよ。今度はレーザー照射の気配は見逃すな!」

 

 「よろしくってよ!」

 

 人機一体。ここに上総(オレ)Zガンダム(ハロ)は一つとなった。

 

 

 

 

 シュカァァァァァァァァ!!!

 

 ガガーン! ガガーン!

 

 光線級の狙撃を右に左に避けながら、ゼータは光線級を目指し走る走る走る。

 

 Zガンダムの推力112600kg。脚部のスラスターと背中のロングテール・バーニアスタピライザーで抜群の加速性能を発揮しながら進んでいる。

 

 されどその超加速で進むゼータに、寸分狂わず二百キロ以上の超長距離から正確にレーザーを照射してくる光線級はまさにバケモノだ。

 

 されどされどオレはニュータイプ。

 その能力でレーザーの先読みをし、レーザーを巧みに避けて進む進む。

 しかし頭ん中がピキーンピキーン鳴り続けてうるさい。

 

 「光の速さのレーザーとはいえ、この距離ならもう余裕だね。けどだんだん厳しくなるし、さすがに手前20キロになると避けきれなくなるよ。どうするの?」

 

 「光線級のいる場所はちょうど山岳地帯のふもと。だから光線級の死角になる山の稜線を大きく迂回しながら近づきます」

 

 「その後は? 稜線がとぎれたら一斉に照射してくるよ」

 

 「わたくしのニュータイプ試験のお時間ですわね。先ほどは辛い点をいただきましたので、せいぜい励みましょうか」

 

 

 レーザーを掻い潜りながら疾走し、ようやく光線級BETAの死角となる山岳のふもとに到達。光線級を挟んだ山岳の反対側を大きく迂回して進む。

 

 「ここまではこれたね。でも山稜線の陰から出ても、光線級まではまだかなり距離がある。ニュータイプ試験って何するの?」

 

 「変形します。ゼータからウェイブライダー形態へ」

 

 ゼータを飛行形態のウェイブライダーへと変形。

 山に隠れながらの飛行なのでとんでもない低空飛行だ。

 パワーまかせにスピードを稼ぎつつ無理矢理に飛ぶ。

 

 「何でコレ!? 戦闘能力のある飛行物体は真っ先に光線級に狙われるって、光線級の注意事項にあったよ!」

 

 「状況は変わらないわ。BETAは高性能な演算装置を搭載している機体を優先的に狙うのです。どの戦術機より高性能なコンピューターを搭載しているゼータは、真っ先に狙われる機体ですわ」

 

 ああ。だんだんこの()が座学で学んだことがオレの知識になってきた。

 

 「ああ、なら納得……ってウェイブライダーになった理由は? 説明になってないよ!」

 

 「スピードですわ。山岳部の稜線を越えるまでレーザーは撃ってこない。この死角にいる間、できるだけスピードを上げるのです。ウェイブライダーのスピードで近づけば、照射できるのは一度ないし二度だけ」

 

 「ま、まさか計算上避けきれないレーザーを避けるつもり!?」

 

 「他に近づく方法などないでしょう? 狙いが正確なのはかえって僥倖ですわ。撃った瞬間に動けば必ず避けられますもの」

 

 「いや、上総が照射を感知して回避機動をとっても、相手は光の速さ。上総のレバーを動かす手より確実に速い。とても回避に間に合わないよ!」

 

 「ならば照射の先を読むまで! 照射ではなく気配を読んで避けます」

 

 「いくら超A級ニュータイプとはいえ、まだそこまでの能力を発揮できるかもわからないのに!?」

 

 「だから”ニュータイプ試験”ですわ。落第は文字通り命に関わるから、必死に挑みましょう」

 

 「和也はそんなこと言って一夜漬けしても、大抵失敗するのにぃぃぃ!」

 

 「お黙りなさいハロ。神様からもらった能力も使いこなして自分のものにしてこそ。ここには最高のニュータイプと、大気圏突破すら可能なウェイブライダー。ニュータイプ能力を機体の力に変えるバイオセンサーがあるのです。レーザーを乗り越えるための全てが揃っているのですよ。何を恐れることがありましょう。それに………」

 

 「それに? あと何かあったっっけ?」

 

 「ワタクシ、なんだか凄く楽しくなってきましたわ! イヒヒヒヒヒ!」

 

 「キャーーー! クライシスジャンキー! リスクテイカーだぁぁぁ!」

 

 ピキーン

 

 瞬間、自分の脳裏に危機を示す電流が走った。

 山向こうの光線級がウェイブライダーの存在を感じ、照射体勢に入ったことを感じる。

 

 「上総、間もなく稜線を越える。レーザーの照射がくる! あと6………5………」

 

 「いりませんわ。それくらいわかります!」

 

 

 ――――――カッ! シャァァァァァァァ!!!

 

 

 稜線を越えた瞬間に来る灼熱の光条! 

 

 その一秒前に引くフラットレバー!

 

 ウェイブライダーは見事レーザーの集中砲火を躱し上空へ。

 

 「やった! 凄いよ上総!」

 

 「いいえ、まだ! ビームの射程前に第二射がくる!」

 

 第一射は、まだ心の準備もタイミングをはかる時間もあった。

 

 だが次の第二射は、完全に姿をさらした裸で挑まなければならない。

 

 つまりより厳しいということだ。泣けるね。

 

 

 ピキーン

 

 

 レーザーが再び来る! 躱しきれないであろうこの距離に。その気配を感じる!

 

 

 カッ! シャァァァァァァァ

 

 

 「はあぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 されどレーザー気配。その撃ち気。

 それを読んですでにレバーを引いていたオレは、機体制御の限界に挑むようにて機体を反らせ、ギリギリでレーザー回避!

 

 結果、ウェイブライダーはバレル・ロール。

 機体制御が間に合わず、ぐるんぐるん回転しながら光線級群へ向かう。

 

 鍛えてあるとはいえ、高Gのかかるコクピットは女子の肉体にはつらい空間。

 回転する空間に体がバラバラになりそう!

 バンクとりすぎだ!

 

 「ダッ………ダメですわあああっっ!」

 

 「上総! しっかり意識を持って! 失神(ブラック・アウト)だけはするな!」

 

 「笑いがとまりませんわあああっっ!」

 

 「………………………え?」

 

 「あははっ。まるで誰かと競い合っていたあの日のよう。山百合のあの頃にいるみたい!」

 

 「上総ぁぁぁぁ! 気をしっかりぃぃぃっっ!」

 

 おっと、ヤバイオレの状態にハロが心配している。

 無理もない。オレ自身正気かどうかわからん。

 さっきからワケわからん記憶なんかが浮かんでくるし。

 

 「慌てないでハロ。やることはわかっていますわ………ってええええ!?」

 

 やっとたどり着いた光線級群。

 機体の回転もおさまり、目標へビームガンを発射しようとしたが。

 

 光線級群の前面に巨大な多足のムカデのようなBETAが鎮座していた。

 全高はこのゼータの三倍以上の70メートル。

 全長はなんと180メートル!

 

 それが三匹も蠢きながらそこにいて、突入するゼータを迎撃せんと狙っている!

 さらにその向こうにも十匹以上の同型BETAがいて、こっちに向かっている!

 

 「要塞級(フォート)だよ上総。まずいね。あれはゼータの攻撃でも倒すのに時間がかかる。その間、光線級に姿をさらしたままだ」

 

 まずい! とりあえずその要塞級の巨体を盾に光線級の照射は封じたが、近づけない。

 もう少し近づけば要塞級の脅威の武器、衝角付き(ウィップ)が来る!

 それを三本もかわし、さらにレーザーをかい潜るなど…………

 

 

 ――――――………………?

 

 ふと、幻をみた。

 

 

 要塞級と光線級が蠢くその光景の中。

 

 

 そこに模造刀をふりかぶり、凛々しくオレに挑んでくる少女の幻を見たのだ。

 

 

 それは妙にくすぐったく、それでいて懐かしい――――――

 

 

 

 

 

 口元がほころんだ。

 

 「バイオセンサーも粋なものを見せていただけるわね」

 

 いや何が? ああ、また口が勝手に……

 しかしこの少女の幻を見ていると、なぜか元気な清々しい気持ちになる。

 

 「上総?」

 

 「要塞級(フォート)に隠れながらゼータに変形。ビームサーベルで切り込みます」

 

 手早く巡航形態WRからゼータに変形。ビームライフルをビームサーベルへと仕様変更。

 

 落下しながらバイオセンサーに全力でニュータイプの思念を送る。

 

 「はああぁぁぁぁぁ!」

 

 ほとばしるほどの出力! ビームサーベルは巨大なロングビームサーベルへ。

 

 バーニアをふかし、果敢にいちばん手前の要塞級へと切り込む!

 

 要塞級(フォート)三体は衝角付き(ウィップ)を鋭く発射!

 

 されど構わず、その少女の幻へ吸い込まれるようにオレは、ゼータは突入した。

 

 

 「篁さん、わたくしの全てを受け止めてごらんなさい! 山城の薙ぎを!」

 

 

 ――――――――いや、篁さんってだれ? 

 

 

 

 

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