ゼータと上総   作:空也真朋

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 25話でフラグを立てていたので、強力な【フラグを読む眼(フラグ・アイ)】がある方はお気づきでしょうが、白銀はニュータイプにする予定でした。
 というか、ニュータイプにならないとνガンダムの【フィンファンネル】も【Iフィールド】も使えなくて、νガンダムの存在意義が無くなってしまうわけで。
 という訳で、白銀をニュータイプにしてみました。
 これを読んで『なんて斬新な覚醒方法! これは感服!』と思った方は高評価を。
 『こんな簡単にニュータイプになれるわけないだろ! メシ喰うだけでハイレアスキル獲得できる主人公のなろう小説レベル!』と思った方は低評価をお願いします。


60話 サイコミュは目覚める

 二機のガンダムは、BETAの渦の中心で周りをなぎ倒しながら移動。基地より大きく引き離すことに成功した。

 

 だがレーダーのBETAを表す赤いマーカーも、先ほどまでの一面真紅から所々空白が目立つようになってきた。つまり底が見えてきたのだ。

 

 原因は、後ろの白銀の駆るνガンダムの殲滅力が桁違いなのだ。

 なにしろ毎分百体以上を撃破。いかにBETAが多かろうと、これでは何時までも数を保ってなどいられない。

 

 フルオートビームライフルの威力もだが、それを扱う白銀の腕が尋常ではないのだ。

 オレもそれなりに戦場を巡って腕の良い衛士と会ってきたし、その戦術機射撃も見てきた。

 

 だが、白銀ほど滑らかにフルオートを扱う奴は見たことがない。

 正に神業、戦場の鬼神!

 

 あんな小僧面(こぞうヅラ)して、どんな歴戦よりスゴ腕なんてどれだけだよ。

 これが幾度も戦場に出ては死に戻りを繰り返したタイムリーパーの実力か! 

 

 「白銀(アーガマ01)、もはやジャール大隊を待つ必要はありませんわ。わたくし達だけで全滅させてしまいましょう」

 

 「残り概数二千。不可能な数字じゃないね。ってか、もうとっくに七割倒しちゃってるし」

 

 一面全て死骸となり果てたBETAを見せて、紅の姉妹(スカーレット・ツイン)にも、ジャールの女指揮官にも、その下のガキ共にも、口を大きくアングリさせてやろう。

 そして唖然呆然した奴らに、オレは婉然と微笑んで言うのだ。

 

 「あら、遅いんじゃございません? いったい何しにいらしたのかしら? 『お呼びでない奴』なんてレベルじゃありませんわね。本当にお疲れ様でした。おーっほほほほぉ♪」

 

 フフフ。奴らまとめて、悪役令嬢にハブられた泣き虫ヒロインの如くションボリさせてやるぜ。

 帰って、丘の上の王子様にでも慰めてもらうんだな! ハハハハハ!!

 

 『お、俺達だけで全滅?…………不味い! アーガマ02、いくら何でもそれは不味いぞ! 祖国防衛に地元ソ連軍が何もできかなったとあらば、激しく面子(メンツ)が潰れる! とりあえずBETAを減らすのを抑えろ!』

 

 「みすぼらしいソ連軍が、みじめったらしく面子(メンツ)を潰したらどうだっていうのかしら? 高貴なワタクシに怖いものなんてなくってよ♪ 文句があるなら、お城の舞踏会で、ワタクシより素敵なドレスを披露してごらんなさい♬」

 

 『ぶ、舞踏会!? 上総、いったい何の悪酔い(バッドトリップ)してやがる!? とにかく、そのビームライフル乱射はやめろ! うわああ!! ハイパー・メガ・ランチャーはもっとやめろ!!!』

 

 せっかく気持ち良くBETAを全滅させようとしていたのに、白銀に止められてしまった。

 今はどちらも得物をビームサーベルへと変え、専守防衛。

 

 「何を気にしているんですの白銀(アーガマ01)。我らは不埒な異星起源種に突きつけた剣の切っ先、人類の護り手【衛士】。BETA全滅をためらう理由がどこにあるのです。政治に関与せず、ただ使命のままBETAを討てばよろしいんじゃありませんこと?」

 

 『トリガーハッピーでラリっていたくせに【正しい衛士】みたいなことを………』

 

 オレはいつだって【正しい衛士】だ。

 白銀は『ゴホンッ』と咳払いして愚痴めいた言葉を言い直す。

 

 『俺もそう単純に生きてみたいがな。人は政治から逃れられない。『大国ソ連が祖国の危機に何もできなかった』なんて結果になってみろ。ソ連の面目は丸つぶれ。被支配民族を多く抱え込んだこの国の支配層にとって、面目を失うことは死活問題だ。となると俺達を逆恨みするかもしれん』

 

 ああ。そういや大東亜連合時代、ブレックスに言われて、よく八割方終わった戦場を正規軍に譲ってやったっけ。

 そういった配慮も生きるのに必要。残りのBETAくらいソ連軍に譲ってやるか。

 

 しかし白銀の奴。こんな政治的配慮ができるとか、『人は政治から逃れられない』なんて深いことを言うとか、いったい中身幾つなんだ?

 もう完全に、見た目通り高校生の年頃に思えねーよ。白銀先生だよ!

 

 『よし、離脱する。バーニアは大丈夫か?』

 

 「いけますとも。ゼータの華麗なる俊足をお見せいたしますわ」

 

 『空からだ! BETAをなぎ倒しながらだと、さらに数を減らさなきゃならんだろうが!』

 

 BETAの命を(おもんばか)って殺さないよう配慮しなければならないとは。

 本当に政治の世界は常識の逆が起こる世界だな。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 BETAの渦からバーニアで空中へ逃れると、丁度そこにジャール大隊が到着した。

 指揮官ラトロワ中佐に連絡をとると、彼女のCPとのやり取り後、程なくしてソ連軍航空爆撃隊が飛来。残存BETA群に爆撃を喰らわせ後始末をしていく。

 

 多数のSuー37M2チェルミナートル、Su-27SMジュラーブリクに囲まれ、ラトロワ中佐の指揮官機チェルミナートルの前にオレ達二機は立つ。

 いつもはうるさく煽ってくるジャールのガキ共が、今は一連の間まったく静かだった。

 

 あと、紅の姉妹(スカーレット・ツイン)のチェルミナートルもいたが、やはり同様に静かだった。紅の姉妹(スカーレット・ツイン)の奴ら、どういった思いでオレ達を見ているのやら。

 白銀はこちらの隊長として、向こうの指揮官ラトロワ中佐に挨拶をする。

 

 『ラトロワ中佐、ご苦労様です。ジャール大隊に戦域を引き継ぎます』

 

 『することは何も残っちゃいないけどね。【ソ連軍は何もできなかった無能】と記録に残さないために、BETAを残してくれて助かったよ。こちらの面目が危なかったね』

 

 『あー、いえ、その………微力を尽くしたままで………ゴニョゴニョ』

 

 少しは政治っぽい受け応えしろよラトロワ中佐!

 正直にぶっちゃけ過ぎだと応えに詰まるだろうが!!

 

 『しかし、そちらじゃ大した戦術機が開発されたもんだね。それならハイヴの攻略も叶うんじゃないかい? ただ、こっちの上の方は面白く思わないかもしれないから気をつけなよ』

 

 この人、本当にソ連軍の佐官かね。あまりに明け透けで応えが返しにくい。

 ソ連なんてお国柄でこの性格じゃ、忠誠が疑われて粛正とかされないだろうか?

 

 『き、恐縮ですラトロワ中佐。それより、これから………うぐっ!?』

 

 

 ――――プッツン

 

 

 

 『…………白銀少尉?』

 

 突然、白銀の通信画像が消え、通信が途絶した。

 

 『……………おい、どうした。マシントラブルか? 応答しろ白銀少尉』

 

 ラトロワ中佐が呼びかけるも、νガンダムから返答が返ることはなかった。

 後ろに位置しているオレのZガンダムからも、異変らしき物は見うけられなかったのに。

 

 それに機体が目の前にあるこの状況なら、通信機能が完全にオシャカになっても、ヘッドセットのみで通信できるはず。なのに完全無反応とは?

 だが、それは本当の異変の始まりであった。

 

 

 ――――…―――キィィィィィン………

 

 

 νガンダムの診断をしているモニターから、今現在、起動しているシステムが表示される。

 

 「ええっ、このシステムは!? あり得ませんわ!」

 

 「間違いないよ上総。これは起動しないはずの、あのシステムだ。眠りから覚めている!」

 

 さらに異変は続く。

 νガンダムの周囲が発光する物質に包まれていく!

 まさか、あれは…………あれは!? そんなバカな!!

 

 「アーガマ01! 白銀、応答してください! いったいνガンダムに何が起こってますの!?」

 

 必死に呼びかけるも、やはり白銀のνガンダムからは応答がない。

 

 「ハロ、νガンダムのコクピット内を映して!」

 

 「ダメだ! 強力なサイコフィールドが発生して、アプローチがみんな拒否される!」

 

 「サイコフィールドですって!!? では、やはりあれは………ッ!」

 

 サイコフレーム特有の発光。

 それを見てもなお信じられなかったが、もう決まりだ。

 

 「そうだよ! νガンダムのサイコミュが起動している!」

 

 「で、でも白銀はニュータイプではありませんわ! νガンダムに搭載されているサイコミュを、一度たりとも起動できたことなんてありません!」

 

 「…………………そうだね。でも今、目の前で起動している。つまり今この瞬間、いきなり白銀はニュータイプになったとしか思えない。いったいあのコクピット内で何が起こっているんだ?」

 

 「白銀は無事ですの!? 白銀、応答してください!!」

 

 ラトロワ中佐は、必死に呼びかけるオレを見て、ただならぬ事態を察した。

 

 『おい、いったい白銀少尉の機体はどうしたんだ? 何かヤバイのか?』

 

 「え、ええラトロワ中佐。とにかく念のため、そちらの部隊はみんな下がらせてください」

 

 『わかった、そちらに任せよう。全機、アーガマ小隊から距離をとれ!』

 

 ジャール大隊は全機下がるも、紅の姉妹(スカーレット・ツイン)のチェルミナートルだけは動かない。

 

 『おいイーダル、そちらもだ! 命令系統をとやかく言うなら、今現在はお前らの指揮権は私にある。さっさと………イーダル? おい、どうした!?』

 

 はじめてクリスカの通信画像が出た。

 その顔は、どうしていいか分からない、といったように酷く焦燥に駆られている。

 

 『申し訳ありませんラトロワ中佐。イーニァが………イーニァがおかしいのです! 何かに怯えているようで、錯乱が止まりません!』

 

 イーニァが? まさかそれはニュータイプの予感………

 

 

 ――――――ゾクリッ

 

 

 遅ればせながらオレにもイーニァの感じている悪寒を、その恐怖を感じた。

 これはニュータイプの共振ではなく、未来予知から来る恐怖。

 つまり、もうすぐこの場所に何かが起こる!?

 

 「ハロ、周囲を索敵してください。何かしらの異変、ミサイルやG弾の飛来、新たなBETAの襲来などはありませんか?」

 

 「……………何もないよ。周囲直上の空域、宇宙も含めて、20キロ圏に脅威となるようなものは見えない。地下は?」

 

 「…………………BETAの反応はありません。再びの出現はないでしょう。となると原因は」

 

 あの不気味に佇むνガンダムしかない、か。

 いったい何が起こる?

 オレ達二人のニュータイプに、これほどの悪寒を、戦慄を起こさせる何が!?

 超然と白く輝くνガンダムは、ただ静かにサイコミュを起動し続けるだけだった―――

 

 

 

 

 

 

 

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