ゼータと上総   作:空也真朋

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 第二章で上総を死の寸前まで追い詰め、その仲間の命をも数多く奪った第5計画推進派。
 その巨魁との因縁の決着がいま着く!
 北東ソ連にいる上総は、いかにしてこれを討つのか!?


62話 オルタネイティヴ5・ジ・エンド

 アヴァチャ山を越えて見たもの。

 最初、オレはそれを小山の上にでっかい灯台が建っているように思えた。

 だが、それは全てが巨大BETAであったのだ!!!

 

 「なっ、なんて巨大でおぞましい! 本当に何てものを作りあげるんですのBETAは!!」

 

  全長は2000メートル程、体長は90メートルほどではあるが、ただ一点。主砲にあたる、キリンの首のように伸びたレーザー照射口は地面から1500メートルもあり、地上のあらゆる場所に極大レーザーを撃ち下ろせるようになっている。

 さらに副砲にあたる照射口が二門、天空に向かって伸びており、それも間断なくこちらにレーザーを撃ち続けている。

 胴体は腫瘍で水膨れしたような複合装甲、ちょうど照射口の真下にある胸部中心は、ハイヴの反応炉のように青白く輝いている。

 足は要塞級のモノをさらに巨大にした装甲脚。それがムカデの足のように連なり、この巨大な建造物のような体を時速40キロほどで進ませている。

 

 「くううっ! ウェイブライダーはマッハ10で飛行しているのですよ。なのに何でこんなに正確に合わせてこられるのですか!?」

 

 驚いたのはそのレーザー照射照準の正確性。

 νガンダムを乗せているとはいえ、ウェイブライダーの高速飛行に寸分外さず当ててくるのだ。

 中央の広範囲極大レーザーすら苦労しているのに、副砲二門にまで狙われてはたまらない。

 νガンダムのIフィールドも使ってどうにか無事なものの、ジリ貧なのは変わらない。

 

 「こんなことなら、地上を行った方が良かったですかしら? 集中するのはキリンの首だけですし」

 

 『どっちにしろ近づけないだろう。上総でも距離が近くなれば躱すのは不可能になる』

 

 「近づいたとしても、あの巨体を支える複合装甲。ビームライフルはもちろん、おそらくハイパー・メガ・ランチャーでさえ、かすり傷しか負わせられないと思うよ」

 

 分析を担当しているハロはさらに驚くべきことを言った。

 

 「胸の青白く光っている部分を見てくれ。あの光は資料にあったハイヴ深奥の反応炉のものだ。つまりあの巨大BETAは、ひとつのハイヴそのものを使って構成されているのかもしれない」

 

 『な、なんだと!?』「なんですってぇ!?」

 

 つまり、本来何百万というBETAを生み出すエネルギーを、あのおぞましい体に変えて、ハイヴそのものが攻めて来たということか?

 となると、あの規格外の大きさの体も、レーザーの威力も納得できてしまう。

 ますます、どうやって倒せば良いかわからない。

 

 『糞っ、俺達が引いたらアイツは北東ソ連をみんな焼き払っちまう。そしたら誰も彼も全滅だ! 倒せなくとも無力化して時間を稼ぎたいが、どうすれば良いのか』

 

 こうやって飛び回って注意をこちらに向けているのがせめてもの時間稼ぎ。

 攻めるなど、たった二人の歩兵が歩兵銃を使って要塞攻略に挑むようなものだ。

 

 「それと上総。ここは位置が悪い。躱したレーザーが日本上空の航空機や航宙艦を落としているみたいなんだ。さすがに威力は減衰して爆発はしないみたいだけど、落下した機体が街とかに落ちてパニックになっている」

 

 「な、なんですってぇ!! これって日本まで届いてしまうのですか!? こうなったら宇宙ですわ! 宇宙に登って活路を見つけます!」

 

 オレはウェイブライダーの機首をさらに上げ、宇宙を目指して飛んでいった。

 

 

 

♠♢♣♡♠♢♣♡

 

 第五計画推進派Side

 

 東京湾横浜港近海 米軍第七艦隊旗艦ロバート・F・ケネディ司令官席 

 

 その頃、米軍第七艦隊司令官ジャミトフ・ハイマン中将は艦隊演習の指揮を行いつつ、ニコルソン上院議員と共に横浜基地へのHSST落下の瞬間を待っていた。

 時間にしてあと10分ほど。

 しかし奇妙なことに、あちこちから航空機落下のニュースが流れてきたのだ。

 

 「どうしたというのだ? いくら何でも航空機や航宙艦の事故が多すぎるぞ」

 

 「まさかあのテロリストと同じことを計画する者が何人もいるはずもないだろうしね。何かしら異常気象でもおこっているのかね?」

 

 近くに控えていたバスク大佐は各所に連絡をとり、その原因を聞き出した。

 

 「閣下。どうやら原因はソ連北東部に現れた新型の光線級BETAの放つレーザーのようです。流れてきたそれに機器を破壊され、墜落しているそうです」

 

 「北東ソ連からだと!? バカな! ここから千キロ以上離れているのだぞ!」

 

 「事実です。それは全長二千メートルにも及ぶ巨大なBETAで、超大型のレーザーを放つ怪物だそうです。威力は重光線級すらも遙かに凌ぎ、そこから流れてくるものでさえ、この日本上空にある飛翔物を落とす威力だそうです」

 

 この報告を聞き、二人は唖然とした。

 

 「ううむ恐るべきことだ。これは一刻もはやくオルタネイティブ5を国連の主導にしなければ。いや、それでも遅いかもしれん。いっそアメリカの独力だけで為すよう大統領に働きかけるか」

 

 「ニコルソン上院議員、落ち着いてください」

 

 「アラスカの隣にとんでもないバケモノが現れたのだぞ! そいつが北東ソ連を焦土に変えたなら、次は海を渡り北米大陸に来る! 合衆国に、もはや時間はないのかもしれん!」

 

 「ですが、こちらの作戦はすでにはじまっております。こちらを進めつつ、事態の推移を見守るしかありません。また実際にあれに対処する時がきても、日本を掌握していれば、どんな作戦もより容易く通すことができます」

 

 「………………分かった、中将の手腕に期待しよう。だが私もこうしてはいられないな。祖国に帰り、できるだけの手を打とう」

 

 「残念ですな。上院議員の手腕を日本でふるっていただきたかったものです」

 

 ジャミトフに手を振ると、ニコルソン上院議員は何かしらの準備のためか、艦橋から出て行った。

 しばらくすると、艦内に警報がうるさいくらいに鳴り響いた。

 ジャミトフの手元の通信機からもコールが鳴った。

 

 「どうした。敵襲でもあったのか?」

 

 『いえ、先ほどのレーザーに被弾したHSSTが墜落し、この近海に落ちてきそうなのです。通信を試みておりますが応答いたしません。どうやら艦内の人間は全滅したようです』

 

 「例の北東ソ連の新種からのレーザーか。おそるべき威力だな」

 

 『はい。観測によると機体に目立った損傷は無いのですが、艦内の人間は誰も無事ではいられなかったようで、もうどうにもできません。落下予測地点を見て対処をお願いします』

 

 ジャミトフはオペレーターに落下予測地点を示させ、艦長に意見を聞く。

 

 「つまり、それは艦隊の上には来ないのだな?」

 

 「それはご安心下さい。ですが、ひどく近くに来るため衝撃及び高波がきます。落水時に動いている船は衝突の危険があるため、艦隊は現地点で留まり対衝撃陣形をとって迎えるのが最善でしょう。指揮をお願いいたします」

 

 「あいわかった。そのようにいたそう」

 

 マイクをとり艦隊に指示を出そうとした時だ。

 

 「閣下!!!」

 

 突然に近くに控えていたバスクが大声をあげた。

 

 「どうしたバスク。指揮通信中だぞ」

 

 「そ、それどころではありません! この時間に日本上空宙域にいるHSSTとはまさかアレでは…………」

 

 それで察したジャミトフは、青ざめてオペレーターに叫んだ。

 

 「おい! そのHSSTの所属は!? どこから来たものだ!?」

 

 「発進はわが国のエドワーズ空港からですね。軍が使っている民間貨物業者で、那覇基地に物資を届ける途中だったようです」

 

 それは正にアレの偽装!!!! 

 

 「う、撃ち落とせ! アレをここに落下させてはならん!!」

 

 「は、はぁ? 無理です。落下する機体を撃ち落とす艦砲射撃はありません。よしんば出来たとしても、破片が艦隊に降ってきてより危険です」

 

 「で、では離脱だ! 全艦、落下予想地点より急速離脱せよ!」

 

 これに先ほどの艦長が声をあげた。

 

 「閣下、いけません! 下手に動くと衝撃と高波の被害をモロに受けて転覆のおそれがあります。どうか落ち着いて下さい。HSSTは落下速度そのままに落ちてくるわけではありません。無人であろうと、どのHSSTも電離層を抜けたなら自動で減速するようプログラムされているのです。ですから………」

 

 その時だ。

 通信を担当しているオペレーターの一人が叫びをあげた。

 

 「大変です!! 電離層を抜けたHSSTは、減速するどころか何故か急加速したそうです! このままでは落水した瞬間は音速の数倍となり、被害予測はとんでもないものとなります!!」

 

 「ヒッ! な、なんだと!? 中将閣下! 対衝撃陣形の指揮を! 早くお願いします!!」

 

 まったく予想通りの反応をしてくれるものだ。

 誤算だったのは、この反応をしているのが女狐ではなく我が艦の艦長だということだが。

 それでも艦長の想定する最悪の被害は、駆逐艦数隻の転覆程度だろうが、さにあらん。

 内臓されている爆薬によって半径10キロが消滅する。

 つまりここに集結している船も人間も全てお終いだ! 冗談ではない!!

 

 「………………無念です、閣下。我々の始まりの日が、まさか終わりの日に変わるとは」

 

 バスク大佐は無念そうに制帽をとり、それを握りしめた。

 

 「バカな! ここには我々だけではない、第7艦隊のほとんどが集っているのだぞ! 第五計画の中枢を担うニコルソン上院議員までも! それが一斉に失われれば、もはやオルタネイティブ5は………!」 

 

 「HSSTの落水まで約140秒。やれることはありません。人類の命運は女狐に委ねるしかないようです」

 

 「バカな………そんなバカな! 敵に倒されるでもない、BETAに敗れるでもない。ただの事故で我々が全滅とは…………!」

 

 いや、自滅か。

 横浜で多くの罪のない人間をG弾投下で葬った我々。

 また同じことを繰りさんとしたことへの神の裁きなのか。

 せめて祈りを捧げようとしたジャミトフは極大の衝撃を感じた。

 

 

 ドッッゴオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!

 

 

 

 ――――――米軍第七艦隊消失。

 この日アメリカは、はじめてBETA大戦における最大の被害を受けた。

 それはオルタネイティブ第五計画の頓挫と同義でもあった。

 

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