ゼータと上総   作:空也真朋

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66話 終わりの文字のガンダム

 ――――ティキーーン

 

 

 巨大BETAに接近すると、またしてもニュータイプの危機予測が反応した。 

 一旦静止して様子を見る。

 すると下から無数の衝角付き(ウィップ)が襲ってきた。

 

 「ちぃっ、レーザーだけじゃありませんのね!」

 

 どうやら巨大BETAの下腹部に収納されたいる近接用の武装らしい。

 腰部スカートアーマーのホルダーからビームサーベルを取り、避けきれない衝角だけを切り落として上空へ退避する。

 

 「これは要塞(フォート)級の武装でしたわね。アレは一体につき一本だけですのに、こんな無数にもっているとは贅沢ですこと。でも相手にするつもりはありませんわ!」

 

 空中で(ウィップ)の届かない場所へ逃れると、奴はそこに副砲を向けてきた。

 されどこっちはすでにビームライフルを構えている。

 

 「遅い、遅すぎですわ! そんな大型砲が間に合うわけないでしょう!!」

 

 ビームライフル乱射で照射膜を徹底的に破壊。

 照射口は体液を吹き散らせグルグル不規則に動く。さらに届かない(ウィップ)を、必死に幾つもこちらに投げてくる。うん良い悪あがきだ。

 

 「では、そろそろアレをやりましょうか。ハロ、ゼータ内にある全サイコフレームを作戦開始から30秒限定解除。最高にハイパーでロングなビームサーベルでトドメといきましょう」

 

 ゼータの中にはバイオセンサーやコクピットまわりなどに無数のサイコフレームが埋め込んである。前に横浜ハイヴ戦の時にハロが自作したのだ。

 

 「………全開か。うーん」

 

 「どうしました? 全開にすると機体が耐えきれないとか?」

 

 「いや、機体は大丈夫だけどね。実際に扱ってみてわかったんだけど、【サイコフレーム】ってけっこう怖いシロモノなんだよ。本来それはモビルスーツにサイコミュ機能を備えさせ、機動性を上げたりサイコミュ兵装を扱えるようにしたりするもの。そうだね?」

 

 「ですわね。ガノタなわたくしに解説させれば、一晩でも語ってさしあげますが」

 

 「今が戦闘中ってことを忘れないで。もはや死に体とはいってもボスクラスの強敵なんだから。で、そのサイコフレームの機能なんだけどね。それが人間の脳の未知の能力まで引き出して、不可思議な現象を起こしちゃうみたいなんだよ。何で宇宙世紀の人達は、こんなヤバイものを強力にして武器にしちゃったんだろうね」

 

 ああ、その話は聞いたことがある。

 そもそも本来、思考で機体制御するためのサイコミュ簡易版のバイオセンサーですら。

 それが何でビームサーベルを出力ハイパーなロングビームサーベルに出来るのか?

 【サイコフィールド】というバリアーを発生させるのか?

 宇宙世紀の科学者でも、この原理すら分かっていないのだ。

 サイコフレームが巨大質量アクシズの落下を押し上げた現象。これが起こった理由も当然不明。

 

 「ですが白銀のタイムリミットが迫っています。原理なんてどうでもいいですから、戦争に早く勝つことこそ重要でしょう!」

 

 「宇宙世紀の指導者達もそんな考えだったんだろうなぁ……」

 

 

 長いキリンの首のような主砲を伝いながら飛行して頂上へ。

 その真上に来て、無数の目玉みたいな照射膜で出来た照射口を見下ろす。

 するとそれは再びレーザーを充填しはじめた。

 こちらもサイコフレーム全起動。かつてないほど出力を跳ね上げる。

 静かに迸るロングビームサーベルの切っ先を天へ掲げ上段へ【火の構え】。

 

 「フッ。それでもレーザーを放ちますか。ここまで接近を許した以上、敗けは確定だというのに。この機体の名を教えてさしあげますわ。これなるは(つい)の文字を持つガンダム――」

 

 照射膜が高熱を湛えた白色へ輝く。

 充填率が極大へ達し、照射される一瞬前に動く。

 

 「【機動戦士Zガンダム】!! お前に終わりを告げるガンダム! ですわ!!」

 

 烈火一閃。ロングビームサーベルを照射膜へ叩きつけ、全ての照射膜を粉々に粉砕。

 それをそのまま直下へ向ける。

 

 「温まってください」

 

 サイコフレーム全開にロングビームサーベルに念を込める。

 ロングビームサーベルは、BETAのキリンの首の中身を突き破りながらで果てしなく伸びてゆく。

 中からは巨大な「ボシュウウッ」と、煮えたぎった油に水を注いだような音が響く。

 中でレーザーの超高熱エネルギーが乱反射しても表面の複合装甲は健在。

 されど中身の方はやはり柔らかかった。

 複合装甲の隙間から蒸気が激しく漏れて噴き出す。

 この蒸気は中身が蒸発したもの。

 

 「………おっと、限界ですか」

 

 それを予感したオレは、素早くゼータを上空へ退避させる。

 

 ――――ボキンッ

 

 急速に中身の無くなった長い首は途中からへし折れ「ズズーーン…」と地響きを立てて地面に崩れ落ちた。

 続いてその巨体の足も力無くへし折れ、地響きをたてて崩れ落ちる。

 

 グシャアァァァ………

 

 巨大BETAは中身を大きく減らし、ほぼ外殻のみの骸となっていた。

 さすがは日本まで届く極大レーザー。こんなデカブツの体まで瞬間に蒸発させてしまった。

 オレは白銀に戦勝報告の通信を入れる。

 

 「白銀、終わりましたわ。でっかい虫ケラの死骸を見にいらっしゃい」

 

 『倒せたのか上総、ハロ。さすがに少しは不安だったが、見事やってくれたな』

 

 通信を切ると、勝利の実感がわいてくる。

 【超光線種巨大BETA陥落】

 

 「………終わりましたわね」

 

 「サイコフレーム。ちょっと不安だったけど、何もなかったか…………ああっ!? 上総、下を見て!」

 

 ハロのあわてた声に下を見るが、とくに何もない。

 雑魚BETAがやけに集ってきているが、光線種はいないのでこちらに攻撃はできないはずだ。

 

 「何なのです? ただ雑魚BETAが集まっているだけではないですか」

 

 「デカブツの胸の部分を見てよ! まだ青白く光っている。反応炉の部分はまだ生きているんだ! 奴らそれを運びだそうとしているんだよ!」

 

 「それって不味いんですの?」

 

 「エネルギー源であるアレをハイヴに運ばれたら、デカブツをもう一度再生させることが可能なんだよ! ゼロからコイツをもう一度生み出せるかは不明だ。だけどアレを運ばれたら、確実に短期間で復活してくる! 何としてもトドメを!!」

 

 「冗談じゃありません! 二度とゴメンですわ。けど………」

 

 すでにBETAの集団は無数に反応炉にとりつき、移動を開始している。

 これは一瞬でまわりのBETAも殲滅しないと間に合わない。

 

 「となると、今こそ不遇なコレの出番ですわね」

 

 オレは背中からハイパー・メガ・ランチャーを出して構える。

 

 「ハロ、もう一度サイコフレームを全開! リスクを考えて出し惜しみしてる場合じゃありませんわよ!」

 

 「わ、わかった! 一発で決めちゃって!」

 

 サイコフレーム全開のバイオセンサーは、狂ったように主機を強化していく。

 ハイパー・メガ・ランチャーの充填率も果てしなく上がっていく。

 サイコフレームの白い輝きがゼータの全身を覆う。

 砲口から迸るエネルギーの光もやけに禍々しい。

 

 「コレを撃ったら本当にどうなるか分かりませんわね………ハロの不安がフラグにならなければ良いのですが」

 

 青白く輝く反応炉目がけてトリガースイッチを押した。

 天をも灼くであろう白色の熱線は真っ直ぐ反応炉に突き刺さった。

 

 

 

 

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