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それは宇宙世紀のカミーユが最大限にニュータイプ能力を高めた瞬間のゼータと共振。
世界線の異なる二つのゼータは互いの世界を繋いだ。
さらに反応炉の膨大なエネルギーは、一瞬だけ二つの世界の通廊をつくった。
互いのZガンダム同士が門となり、衝突したジ・
「こんなところかな。それらしい仮説は」
「なるほど。つまりトラックに轢かれて異世界転生してしまうのと同じですわね。ウェイブライダーに轢かれても同じことがおきるとは驚きでした」
「ぜんぜん違う。まぁ異世界小説みたいなものだと思ってくれても良いか。原因よりどうするかの方が重要だし」
というわけで、ハロとZガンダムを降りてジ・Oの元へと行ってみる。
ジ・Oを近くで見ると、やはりその材質や機構は戦術機とはぜんぜん違う。何より戦術機にはこんな大量のスラスターなどない。
腕部をよじ登り、大穴の開いたジ・Oのコクピットの中をのぞき込む。
果たして本当にそこには彼はいるのか否か。
やはりそこには、力なく倒れ伏している男がいた。
肩まで伸ばした青い髪をヘアバンドでまとめた、端正な顔立ちの青年。
しかし本当にノーマルスーツを着ないで宇宙戦闘をやっていたのか。
「……………パプティマス・シロッコですわね。どうです? 生きていますか」
いちおうハロに彼の容態を看させる。
ウェイブライダーに激突され、生身で宇宙にさらされたのだ。
とても生きているはずもないが…………
「うん、助かりそうだ。内臓の損傷もほぼないし、息もちゃんとある。肋骨の骨折は厄介だけど、それだけだ。どうやら最後にジ・Oの強力なサイコミュがシロッコを守っていたみたいだね」
やはりか。
ウェイブライダーに追突された状態でも話せたし、カミーユに精神波攻撃をしかけられたし。
最期の【ムンクの叫び】みたいな顔は異世界に引っ張られた状態のものだったのか。
「で、どうする? カミーユに『お前はこの世界に存在しちゃいけない存在なんだ!』とか言われていた人だけど。それでも助ける?」
それを言ったカミーユ自身、自分の名前を『女みたいな名前だな』と呟いた軍人に、一般の学生だったのに殴りかかったクール野郎だぞ。
さらにそれで取り押さえられて殴られた腹いせに、軍の兵器であるモビルスーツを強奪して、その軍人連中を踏みつぶそうと追いかけ回して『ハハハハハ怖いだろう』と笑ったサイコパスだぞ。
こんな奴の評価がアテになるわけもない。助けよう。
「確かにヤバい気もしますが。『宇宙世紀の有名人を助けたい!』とガノタの魂が叫ぶんですの。それに助けられる人を見捨てるのも気がひけますわ。ハロ、お願いします」
「…………だね。ボクも同じ気持ちだ。じゃ、彼をゼータに移して」
ジ・Oのコクピットからシロッコを引っ張り上げ、ゼータの中へ。
そしてその中で、ハロが医療システムで治療を行う。
本当にドラえもん並に便利な万能メカだ。
オレはそれを外で待ちながら、ぼんやり宇宙世紀のグリプスへ行ったときのことを考えている。
そう言えば最後の突撃でカミーユが言ったセリフは『死ねェェ!』とかじゃなくて『この世界からいなくなれぇ!』だったな。
その思念をバイオセンサーが読みとり、こちらのゼータの力を利用してシロッコをこの世界へ送ることで、文字通りシロッコを宇宙世紀の世界から消したのかもしれん。
その時、宇宙にいる白銀から通信がはいった。
『上総。スペック的にはνガンダムも大気圏降下できるとはいえ、やはり人型の機体では降下は大変だ。スラスターの調整もひどくシビアだし。手が空いているなら迎えに来てくれないか?』
「いまハロの手が離せないんですの。重傷患者の治療でゼータは動かせませんわ」
『はぁ? そんな所に誰がいるっていうんだ?』
「宇宙世紀からの来訪者ですわ。詳しいことは白銀がここへ来たときに話しますわ。降下はご自分で苦労して何とかなさい」
『わかったよ。くっ、これが大気圏の風か!』
その後、ぼんやり空を見ていると、やがてνガンダムが降下体制で降りて来るのが見えた。
ヤバイな。感動してしまう。
大気圏に散ったアムロも、『あんな風に地球に戻ってきてくれたら』と思ってしまう。
◇ ◇ ◇
大地に降りた白銀に生身での再会を果たすと、これまでの経緯を話した。
「【パプティマス・シロッコ】ねぇ………信じられないが、アレがある以上信じるしかないな」
白銀は焦土に横たわるジ・Oを見ながら感慨深げに見ながら言った。
「で、そのジ・Oの状態なのですがコクピットはグチャグチャ。動力も損傷が激しく、動かすことはとてもできそうにありません。でも何とか持っていくことはできないでしょうか?」
「無茶言うな。こっちのモビルスーツよりでかい機体をどう持っていくって言うんだ。後で取りに来ようにも、先にBETAが持っていくだろうしな。残念だがアレは破棄処分しかないな…………と、BETAと言えば。危うくジ・Oのせいで忘れる所だったぜ」
白銀は反応炉の残骸に目を向けると、衛士装備の防御ヘルメットを被った。
「BETAの中枢が目の前に来てくれることなんて早々無いからな。衛士の本分として調査はしておかないとな」
白銀が反応炉の調査に向かったので、オレも同じように防御ヘルメットを被り反応炉の内部調査に協力する。
白銀は反応炉の内面を見て感心したように言った。
「ハイパー・メガ・ランチャーの直撃を受けながら中身がほぼ焼けてないとか、反応炉の堅牢さはどんだけだよ。ま、今回はそのお陰で夕呼先生へのみやげは期待できそうだな」
「おみやげならジ・Oの方が…………」
「それはない。いいかげん諦めろ。宇宙世紀方面はシロッコさんで十分だろ。と、これは?」
それは反応炉のより厳重な部分に大切に秘されるようにあった。
人の背丈の半分ほどの大きさ。灰色で花のおしべのような形をしており、構成されている物質は金属とタンパクの中間のような、何とも不思議な物質だった。だが何となく直感でそれが生物だと感じた。
「これが【頭脳級】だろうな。オリジナルハイヴからの指令を受け、下級BETAに指示を出すBETA中枢のひとつ。マッハ10で飛行するウェイブライダーを正確無比に照準できたのも、コイツの演算能力のたまものだろう」
「【頭脳級】ですか。座学では『指令を出す存在で直接戦闘することはない』と教わりましたが、戦闘形態になって出陣してきたらとんでもない強敵でしたわね」
膨大なエネルギーによる強力すぎるレーザーに加え、高度な演算能力によって高速物体へも正確に当ててくる照準。
これまでのBETAへの評価を覆すほどにチートな奴だった。
「よし、コイツを持っていこう。これを夕呼先生に調べてもらえば、BETA大戦に大きな進展があるはずだ」
【頭脳級】を採取用トランクにつめたり、反応炉まわりの映像を撮ったり調べたりしていると、ハロから連絡が来た。
『上総、シロッコさんが目を覚ましたよ。この世界の説明をお願い』