ゼータと上総   作:空也真朋

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07話 復讐のハイパー・メガ・ランチャー

 『人斬りは(やいば)を合わせない』

 

 何故かそんな言葉が浮かんだオレは、向かってくる(ウィップ)を断ち切らず、三本すべてを機動だけで回避。

 

 正面の要塞級(フォート)を間近にとらえると、ロングビームサーベルをかかげる。

 

 「あああああああああ!!!」

 

 寸分違わず要塞級胴体最初の結節部に振り下ろす!

 

 光の大剣が胴体を走り抜けた瞬間。

 この個体の(ウィップ)はポトリ地に落ち、巨体はピタリ動きが止まる。

 

 ………――――バカッ

 

 着地後。そんな気の抜けたような音がしたかと思うと………

 

 ズズゥーーーン

 

 要塞級は前胴体部、後ろ胴体部へ真っ二つにきれいに断ち切られ、オレの目の前で割れて崩れた。

 

 割れた要塞級の先。その眼前には、光線級の集団が一面に広がっていた。

 ギョロギョロ二つの目玉を不気味に動かしたお化け達。ゼータを焦点にとらえると、一斉に眼にレーザーの光を宿して照射体勢に移行する。

 その様はまるで幻想の光の海。迷い舟を誘う積尸気への入り口か。

 

 そんな光線級群を見ながら口元は勝手にほころび笑みとなり、勝手に言葉を紡ぐ。

 

 「輝く瞳はひたむきな少年少女にこそ似合うもの。山百合魂宿したわたくしの瞳の輝きにかなうと思って?」

 

 いやオレそんな魂宿してないから! 邪神に色々いじくられたガンオタ魂だから!

 勝手に口動くのやめて!

 

 薙刀の脇構え、歩み足より移る横振りの溜め。

 

 「………一度くらいはあなたとかけ声をあげてみたかったですわね。死んでやっと素直になれるなど、とんだお笑い道化の幽霊ですこと」

 

 

 ―――どこかの校庭で、少女達が元気にかけ声をかけている光景が見えた。

 

 それを眩しく見ている上総の姿も――

 

 

 「おかっちませぇぇぇぇ!」

 

 そんな幻には構わず、ロングビームサーベルの水平薙! 光線級群をまとめて一閃!

 

 ジュアァァァァァァァァッ

 

 BETA侵攻最大最凶脅威もその一振りで全滅。

 

 死の光も霧散し、幻想的な光の海も小汚いゴミ肉の平原へ早変わり。

 

 やがてその残骸からキラキラした光の粒が舞い上がり、ゼータの機体に吸収されていく。

 

 「ハロ。これがG元素? エネルギーはどう?」

 

 「ああ凄いよ。どんどんエネルギーがたまっていく! これならハイパー・メガ・ランチャーも、いくらでも撃てるよ!」

 

 「……そう。ならわたくしの仲間と故郷を……そして日本の誇り、帝都を穢し踏みにじった地球外起源種にたっぷりお返しをいたしましょう」

 

 いや、ワタクシの仲間って何? その仲間とやらにオレは会ったこともないのに、どうしてこんなセリフが出るの?

 

 光線級の照射を避けて左右にわかれていた二体の要塞級が再びゼータめがけて迫り寄ってくる。

 さらに向こうからは、十数体もの要塞級群もまたこちらに迫ってくる。

 

 オレは脚部スラスターで近くの二体から距離をとる。

 要塞級の攻撃力は光線種に次ぐものではあるが、反比例して足は遅い。要塞級だけなら俊足のゼータにはなんら脅威ではない。

 

 だが、逃げるつもりはない。BETA最大の防御力を誇る要塞級が十数体。ハイパー・メガ・ランチャーの威力を測るには絶好の的だ。

 

 直線上に要塞級が並んだのを確認。

 エネルギーを砲身いっぱいに充填させる。

 ふと、復讐の昂揚が身を包んだ。

 

 「喰らいなさい! これが日本の怒りよ! ハイパー・メガ・ランチャー! いけぇぇぇ!」

 

 

 引き金をひく。

 

 

 砲身から白い光芒が生まれ、放たれ、走り、直進した。

 

 

 一丈の白色彗星の通り過ぎたあと―――

 

 

 そこには三分の一ほどに体積を減らした要塞級――

 

 

 それの黒い焼け残し十数体全てのものが、くすぶりながらそこに残されていた。

 

 

 「………『凄い』の一言ですわね。あの体積を誇る要塞級を全てを葬り去るなんて」

 

 「ボクもおどろいた。光線級のG元素が元だから、実際のものより威力は凌いじゃったのかな?」

 

 「ええ。でも…………」

 

 モニターでハイパー・メガ・ランチャーの砲身を見つめニヤリと笑う。

 

 「復讐者の手にこれほど似合う武器はありませんわ」

 

 愛しい大口径に投げキスを送ると、ゼータをめぐらせBETA侵攻の大動脈へと進路をとった。

 

 

 ……………愛しい?

 

 

 

 

 

 元の愛宕――鳥ヶ岳山間陣地にもどってみると、やはりBETAは奔流となってそこを大行進していた。

 オレはゼータを小高い丘のBETAを見下ろせる、BETAからは注目される場所へと陣取った。

 雲霞の如きBETA大行進は、そこにゼータがいることを確認すると一斉に進路を変えて向かってくる。

 愚かな虫ケラを憐れむハイパー・メガ・ランチャーを向ける。

 

 「座学では厄介とされるBETAの習性も、こうなると便利ですわね。わざわざ消し炭になりに集まって来ていただけるんですもの」

 

 「いや、要塞級のダメージから見ると、消し炭さえ残らないと思うよ。ハイパー・メガ・ランチャーの直線十キロにあるものは全て蒸発するだろうし、消し炭はそこからさらに十キロかな」

 

 「まぁ素敵! 死骸掃除の手間が大幅になくなりますわね。まかない夫のセツコさんに、我が家の掃除機をハイパー・メガ・ランチャーに買い換えさせようかしら」

 

 再びハイパー・メガ・ランチャーのエネルギーを砲身いっぱいに充填させる。

 また再び復讐の昂揚が湧き上がる。

 

 「いくらでもいらっしゃい。山城の邸宅の門は、地球外起源種のみなさんを厚く歓迎いたしますわ」

 

 白い光芒がハイパー・メガ・ランチャーの砲身からほとばしる!

 

 一発一射の直進は、その路上の数十数百数千のBETAを焼き尽くす。

 

 きれいな道筋をつくり、ハイパー・メガ・ランチャーの洗礼を受けたBETAは消滅した。

 

 「”(あつ)く”ではなく、”(あつ)く”でしたわね。我が家の熱烈な歓迎、お気に召したかしら?」

 

 なんか悪の女幹部みたいなセリフだ。

 オレってこんなキャラだったか?

 

 方向を転換。さらに撃つ!

 

 場所を移動。さらにさらに撃つ!

 

 BETAあるところ駆けつけ、さらにさらにさらに撃つ!

 

 撃つ撃つ撃つ撃つ!

 

 轟音轟音轟音爆炎爆炎爆炎!!!

 

 

 

 

 

 

 

 そして夜明け。

 日本の意地と誇りを賭けた帝都防衛は虚しく終わる。

 千年の都はBETAの足に踏みにじられ、その歴史を閉じた。

 だがその帝都崩壊後の朝。

 BETAもまた、崩壊した帝都にて大きくその数を減少。

 滋賀――三重に敷いた新絶対防衛線に集結した関東、中部、北陸の部隊に東進を阻まれ、全滅した。

 

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