ゼータと上総   作:空也真朋

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70話 宇宙世紀の天才、最大の失敗

 「これが【サイコフレーム】? たいそうな名前だが、本当にコレがサイコミュになるのかね?」

 

 シロッコさんはオレの見せた粉のような物質を興味深そうに見ながら言った。

 

 「正確には、これを鋼材に埋め込んだものをそう呼ぶのですわ。これはサイコミュの基礎機能を備えたチップ。その鋼材でモビルスーツをつくれば、ジ・Oやサイコガンダムのような大型にならずとも、サイコミュ搭載機となるのです。こちらがそのデータとなります」

 

 モニターにデータを映した。

 ハロがまとめたものだが、惑星公用語で書かれているのでオレにはわからない。

 いや普通に日本語で書かれてても分からないか、こんなデータの羅列なんて。

 しかしシロッコさんは食い入るようにそのデータを読んでいる。

 

 「ふうむ、たしかにサイコミュだ。たしかに取引としては申し分ない。しかし何故だ? なぜ君が、こちらの世界の軍の極秘技術サイコミュを知っている? こちらの世界より発展までさせて。それに地球の物質ではこのチップを作ることは不可能なはずだ」

 

 「最初の質問には答えられませんわ。もう一つの方に関してはお答えしましょう。人類が宇宙に行かずとも、宇宙から物質をもってきてくれる奴らがいるでしょう」

 

 「BETAだったか? そいつらから奪ったもので作ったのか?」

 

 「ええ、【G元素】と呼ばれております。この物質は大国が取り合いになるほどの貴重物質ですが、わたくしはBETAとの戦闘を多くし、このゼータにはG元素を吸収する機能があるので、それなりに手に入れることができますの」

 

 「ふむ。それでコレを作った機関はどこだ? よほどサイコミュ技術に精通しなければできないはずだが。それにニュータイプのことも」

 

 またまた答えにくい質問を。

 作ったのはこのゼータ自身ことハロだが、説明するのはしばらく待とう。

 こちらのことは信用できるまでしばらく言わないでおく。

 

 「秘密です」

 

 「まぁ当然か。しかしコレをわたしに渡すのは良いのかね? 機密情報ではないのか?」

 

 「ええ。これはわたくしの所属する国連軍とは関係ありません。こちらが独自に作り運用しているものですから。それより、これ以上の話は後のこととして、早急に撤収作業にはいりたいのですが」

 

 「…………そうだな。我が愛機ジ・Oに別れを告げに行くとしよう」

 

 

 さて、そんなわけでジ・Oの機体の中へ来た。

 しかしデータを抜き取るとはいっても、「何にデータを入れるか?」という問題があった。

 ディスクに写すにしても、こちらの世界のPCで再生できるとは限らないし(言語の違いでエラーが出る可能性が高い)。

 ハロを通してゼータのシステムに入れるのが簡単だが、それはシロッコさんが嫌がった。

 結局、コクピットを解体してハードを取り出す物理的な方法となった。

 そこでまたまたハロが大活躍し、端末内部に備え付けてある工作キットでコクピットを軽く解体し、たちまちハードを取りだした。

 

 「サイコミュも持って行きたいが、さすがに大きすぎるか。まあ良い。サイコフレームというのが本当にサイコミュの力を発揮できるのなら、あれはもう時代遅れということになる」

 

 「まだ始まってもいない時代ですけどね。その技術を使えるのはここにいる三人だけ」

 

 サイコミュの力を発揮できるニュータイプなんて、ここにいる人間しかいないからね。

 いや、ソ連にも一人いたかな?

 

 「たしか、あちらのガンダムタイプに使われている技術だったな」

 

 シロッコさんはジ・Oの側にいるνガンダムを興味深そうに見た。

 

 「わたしの知らないガンダムタイプだ。だが良い機体だ。変形機構もないし、内臓火器も頭部のバルカンのみ。つまり整備性はおそろしく高い。拡張性も高そうだし量産のモデルとなりうる機体だ」

 

 さすがパプティマス・シロッコ。一目でνガンダムの潜在力を見抜いた。

 あれは同時代の英雄アムロ・レイが設計したものだが、後の時代のモビルスーツの基本モデルとなったのだ。

 実際、香月博士の元にいた戦術機技術スタッフも、ゼータよりνガンダムの機構の方をよりよく調べていたし。

 

 「しかし、なぜ君はわたしにここまで良くしてくれるのかね? 弱いわたしの立場なら、取引などせずとも好きな要求を押しつけられるだろうに」

 

 「あなたはここの世界でも出世しそうですからね。今のうちに恩を売っておいた方が良いと思ったのですわ」

 

 この男が優秀なのは間違いないからな。この時代に慣れたらガンガン頭角をあらわしていくだろう。

 

 「では、わたしが出世したらわたしの部下にならないかね。君にはよくしてもらったし、君はなかなか優秀のようだ。わたしの右腕として大いに活躍してもらいたいが」

 

 奴はオレの目を見据えて言った。

 「ティキーーン」と強力なニュータイプの波動を感じる。

 やっぱり来ちゃったよ。

 この男。なぜかサラとかレコアとか女を側近にしたがる傾向があるんで来ると思ったよ、ヘッドハンティング。

 

 「あ、それは断わりますわ」

 

 しかしそこに一線は引いておく。

 この男。比類ない天才ではあるが、それだけに危うさもある。

 側近だったサラにはフォン・ブラウンの爆破をやらせていたし、レコアにはバスクの処分といった汚れ役をやらせている。

 そんな風に使われるのはごめんだ。

 出世したい奴には夢を見させてくれる男だが、オレとしては奴に乗れない。

 あのデータとかサイコフレームとか作ったのはハロで、優秀なのはオレじゃないし。

 

 「…………即答か。わたしは君の上司としては足りないかね?」

 

 「グリプス戦役でのティターンズ壊滅。あれの原因を考えますとね」

 

 「なにっ!? なぜそれを!!」

 

 グリプス戦役はエゥーゴ、アクシズ、そしてこのシロッコの属するティターンズの三勢力が争った戦いだ。

 それはただ戦うだけでなく、どちらかの勢力と手を組んで共にもう一つの勢力を攻めようという謀略なども行われていた。

 だがエゥーゴのトップであるシャアは、先の会談の席でアクシズ実質トップのハマーンにケンカを売ってエゥーゴ、アクシズ両者は険悪な状況になってしまっていた。

 いったい何やってんだろうね、シャアは。ジオン総帥になったあとも前線に立ちたがって討ち取られたし。やっぱり部隊隊長がお似合いだね。

 さて。三勢力の戦力は拮抗しているとはいえ、エゥーゴとアクシズは完全反目。

 シロッコの属しているティターンズは、アクシズと手を組んでエゥーゴを圧迫しながら、エゥーゴにアクシズをけしかけたりして。いわばキャスティングボートを握った一番有利な立場。

 そんな中、休戦のために三勢力の代表が集って会談が行われた。

 ティターンズ代表のジャミトフの側にはシロッコもおり、順当にいけばこの天才の手腕で二勢力から有利な条件を引き出し、ティターンズはやがて時代の覇者となっただろう。

 

 だがグリプス戦役は、ティターンズの壊滅によって終了した。

 他ならぬこの天才、ただ一人のせいで。

 あろうことか、この天才さま、自分のトップであるジャミトフをドサクサに紛れて暗殺してしまったのだ。

 元々ティターンズを掌握しようと色々暗躍していたが、好機であったとはいえ、ここで自分の陣営トップの暗殺はあまりに悪手であった。

 結果、ナンバー2であるバスク大佐と内乱をおこしてしまい、それには勝ったものの、コロニーレーザーであるグリプス2を奪われ、それを撃たれティターンズ艦隊は全滅。

 有利な状況から一転、ティターンズひとり負けの壊滅。

 パプティマス・シロッコ最大の失敗だ。

 

 

 「……………君はどこまで知っている?」

 

 「さて、どこまででしょうね。ともかく話は後にして、早く撤収しましょう。あ、あのビームライフルも持っていきましょう。スパロボでは理不尽な破壊力でユニット次々沈められた苦い記憶がありますわ」

 

 「スパロボ? なんだそれは」

 

 オレはそれには答えずさっさとゼータに戻った。

 さて、最後にジ・Oの破壊処分をしたら帰投だ。

 ちょっと悲しいけど。

 

 




 シロッコが最後に出てきたスパロボは無印のZでしたね。
 あれはラスボスがショボいんで、シロッコが実質ラスボスのような風格がありましたね。
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