ゼータと上総   作:空也真朋

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 誰しも失敗はするのです。
 シロッコも、白銀も、神様でさえも。


71話 神様の失敗、白銀の失敗

 ???Side

 

 

 感知不可能・認識不能の不可思議領域

 

 

 ――――――いかん! これは不味い!!

 実にいかん。今すぐ何か手を打たねば!

 

 

 …………………………………………干渉不可能!? これはすでに確定事項だというのか!!

 おのれ……………だが、そうか。そういうことだったのか!

 

 数多(あまた)の平行世界の中で、何故かこの世界のみが持つ特殊な引力。

 たとえば、この世界がBETAに滅ぼされたならば、程なく他の世界に因果が果てしなく波及し、どの世界でも人類がBETAに滅ぼされる未来が起こることになってしまう。

 何故この世界のみが、このような強力な因果の力を持つのか。

 このワシをもってしても長く不明であったのだが。

 が、今この瞬間、その理由が判明した!

 

 

 まさかその原因が、ワシが最初に送り込んだ、あの小物どものせいだったとは!!!

 

 

 思えば、パイロットを担当する奴のために用意してやった最高の戦士の肉体を、送った直後から速攻オシャカにしてくれた時には軽く絶望したものだが。

 まさかその後、想定以上によく戦い続け、このような事態を引き起こすまでに進化するとは!

 

 ともかく【奈辺の傍観者】たるワシに出来ることは少ない。

 すでにこの世界の行く末はワシの手を離れ、現場で戦う者達に委ねられておる。

 蒔いた種の進化が勝つか、BETAの進化が勝つか。

 ただ祈りながら見守ろう。ただの人のように。

 

 ――――それでも。

 

 ”アレ”を取り込んだBETAは未知の領域じゃぞ。

 

 このワシですら予測できんほどにな――――――

 

 

 

 

 

♠♢♣♡♠♢♣♡

 

 山城上総Side

 

 

 ドッゴォーーン ズッガーーン ズオォォォォン

 

 撤収の最後のシメとして、ハイパー・メガ・ランチャーで数度ジ・Oを撃ち続ける。

 やがて小型原子炉に誘爆し、ひときわ大きな爆発が起こった。

 これで気の進まない後始末は終了だ。

 大きな穴の開いた地面からなびく煙を見て、微かな感傷を感じる。

 

 「もったいないですわね。あれを修復できていれば、かなりの戦力になったでしょうに」

 

 自分のシート隣に設置したサブシートに座るシロッコさんに言った。

 

 「核燃料のヘリウム3は手に入るのかね? あちらの世界でも木星でしか手にはいらないが」

 

 「入りませんわ」

 

 「では惜しむこともなかろう。それにジ・Oはモビルスーツとの宇宙戦闘を想定し、それに特化した機体。地球上でこちらのBETAという怪物の戦いに使えるかは疑問だ。なに、このデータとそれなりの施設さえあれば、また作ることも可能だ」

 

 「モビルスーツを作れるような、それなりの施設なんてこの世界にはありませんわ。こちらの世界の施設は、戦術機という地球産のみの資材で作る機体のものだけです」

 

 「では、その戦術機にわたしの技術を使おう。なに、地球産のみの資材であろうと人型機動兵器。わたしができることはあるさ」

 

 さすがに頼もしい言葉だ。

 実はちょっと期待している。シロッコさんがいれば、この時代にもモビルスーツの開発ができるんじゃないかと。

 そしたら世界初のモビルスーツテストパイロットはオレだ!

 そんな夢を見つつ、帰投するためにゼータはウェイブライダーに変形。

 白銀のνガンダムはジ・Oの巨大ビームライフルを背負い、タイミングを合わせて飛行するウェイブライダーに乗ると、オレは一路前線基地へと進路をとった。

 

 『アーガマ02、貴重な鹵獲物が満載だから気をつけて行けよ』

 

 シロッコさんに、ジ・Oの中央演算コンピューターにビームライフル。

 BETA関連のものは、頭脳級の本体に、G元素に、巨大BETAと反応炉のデータ。

 本当に世界を一変しうるお土産で一杯だ。

 

 「了解ですわアーガマ01。せいぜい安全運転で帰投いたしましょう。”基地に帰るまでが出撃”ですからね」

 

 そういや、この出撃は日米共同開発新型機の実戦テストだったな。

 『この出撃ではオレ達はほとんど戦闘をしない』という昨日の想定は何だったのやら。

 

 『基地に帰ってからもひと波乱ある。シロッコさんとこのビームライフルのこと。ソ連の連中にどう説明するんだ?』

 

 「あー、どうしましょ。”現地の身元不明者”じゃ、ソ連が身柄を引き取ってしまうかもしれませんわね。いっそ基地には帰投しないで、オホーツクを越えて日本に行きません?」

 

 『……………ともかく前線基地には向かってくれ。基地職員は避難して誰も残っていないだろうが、そこから通信でこちらの状況を知らせる。その時にシロッコさんのことを上手く説明するさ』

 

 『上手く説明する』って、どう説明するんだ。

 ともかく小隊長の指示だ。

 「アーガマ02了解」とかえし、そのまま前線基地に向けウェイブライダーを飛ばした。

 

 

 

 ――――だが、上総らはこのとき最大の不覚をとった。

 ジ・Oのサイコミュが搭載されていた区画は特別に頑丈な装甲が施されていたのだ。

 それはハイパー・メガ・ランチャーの爆撃、小型原子炉の誘爆にも一部は耐えて残り、後にBETAによって鹵獲されてしまった。

 サイコミュによって進化したBETAが、この世界のみならず、あらゆる平行世界の脅威となるのは、また後の話である――――

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ 

 

 アバチャ山を越え小一時間。

 どうにか日が落ちる前に前線基地が見える場所まで飛んできた。

 

 「さて、基地に到着しましたわ。アーガマ01、いちおう通信を送ってください。誰か残っているかもしれませんわ」

 

 『…………………………』

 

 あれ? 白銀のやつ、どうしたんだ。返信が来ないぞ。

 と、隣のシロッコさんが言った。

 

 「気をつけたまえ。あの基地からは争いの気配がある。迂闊に接近するのは考えものだな」

 

 ええっ、まさかBETA!? またしても襲撃してきたのか!?

 ………………は、ないな。

 アラートも鳴らないし、オレ自身BETAの気配を感じられない。

 どうもオレのニュータイプ能力はBETA以外のことには鈍い気がするが、そう言われてみれば、たしかに基地の方から争っているような気配がする。

 と、しばらく沈黙していた白銀から通信が来た。

 

 『アーガマ02、前線基地で戦闘が発生している。いったんここで止まれ』 

 

 「BETAは見えませんが、いったい何と何が戦っているのです?」

 

 『観測したところ、どうやら戦術機どうしが戦っている。つまり人間同士の戦いだ』

 

 人間同士? ついさっきまでBETAの最大脅威がせまっていたはずだぞ。

 なのに何故、そんな時に人間同士で争いなんかしているんだ?

 

 「ハッもしかしてクーデター? 巨大BETAでパニックになって、日頃の圧政の鬱憤で誰かがやってしまったとか?」

 

 『…………それ、ソ連の人の前では絶対言うなよ。ともかく介入して戦闘をやめさせよう』

 

 「ええ、急ぎますわ。………あっ!」

 

 と、思い出した。ここには重傷のシロッコさんがいる。

 それに反応炉からの鹵獲物は、ほとんどこちらに積んでいるのだ。

 これらに負荷をあたえず、戦闘機動なんてとれやしない!

 

 『アーガマ02は戦闘地域には入らずここで待っていてくれ。こういった場合、俺のみで対処するよう、そちらに荷物のほとんどを積んでおいたんだ』

 

 白銀のνガンダムはウェイブライダーから飛び降り、背負っていた巨大ビームライフルを地面に置くと、自前のビームライフルを構えて一直線に前線基地へと飛んでいった。

 その光景を見ていたシロッコさんはオレに聞いてきた。

 

 「あのビームライフルは本物か?」

 

 「ええ。シロッコさんの知っている通りの宇宙世紀製そのものですわ」

 

 「なぜ君達だけ宇宙世紀の武装を持っているのかは、今のところ問わない。どうせ機密だろう。しかしこの時代の兵器を相手に、撃破を目的にしない場合に使うのはどうかと思うがね」

 

 「なぜです?」

 

 「威力が過剰なのだよ。直撃はもちろん擦りでもすれば、戦術機という脆い機体では、熱で誘爆を起こす危険性がある」

 

 ……………そういや、初代ガンダムのビームライフルでも、コロニーの天井に穴を開けるほどの威力があったっけ。

 ヤバイ! 白銀の奴、アレを突撃砲のつもりで牽制にでも使ったなら、相手は一発でオシャカだ!

 いや、白銀は何度もタイムリープして最強の腕を持つにいたった歴戦の衛士。

 そんなミスなどするわけがない…………よね?

 ま、いちおう注意ぐらいはしておくか。と通信を送ろうとした時だ。

 

 

 ――――ズゥゥゥン…………

 

 

 基地の方角から何かが爆発した音が聞こえた。

 …………………白銀、やっちゃた?

 

 

 

 

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